朝と夜でも効果が違うのでしょうか。今は、夕食後1時間くらいしてから走っていますが、朝に戻したほうが良いのでしょうか。


今は夏なので、朝でも暑いのですが、できることなら、朝に戻したほうが良いと思います。一般に、食事が胃を通過する時間は次のようです。


半熟卵 1時間30分
牛乳 2時間
さしみ 2時間
ご飯 2時間15分
うどん 2時間45分
すき焼き 2時間45分
ビフテキ 3時間15分
バター 12時間


ミズノ・マラソンクリニックでは次のように教えます。
マラソン大会当時の朝食は、スタート時刻の3時間前に済ませてください。
もしも、3時間前に食べられない場合は、消化の良いパンなどを2時間前までに食べてください。
これは、マラソンのスタート時には、胃を空っぽにして走りなさいという意味です。


市民ランナーたちは、4~5時間かかってフルマラソンを走りますが、空腹のまま4~5時間も走っても筋肉が分解されることはありません。


空腹を長く我慢すると、体内でホルモンが分泌したり、糖新生が行われたりしますが、それは脳のエネルギーを維持するためであって、ランニングしなくても起こることです。
空腹で運動すると、糖新生のせいで筋肉が消耗するという人がいますが、その人は脳のエネルギーの話と混同しているのです。

健康な人が空腹時に運動しても、特に健康を害することはありません。


> 具体的には、どれくらい時間をはさめば運動して良いのでしょうか?


食後2時間以上空けると良いと思います。
大学などで行われる食前と食後の運動の比較実験では、食後2時間経過してから運動を開始します。つまり、消化が終わった頃から実験を開始するのが普通です。
ミズノ・マラソンクリニックと同じように、胃が空っぽになったころから運動を始めるのが良いのです。


> 脂肪が溶け出さないということは食後の運動はダイエットでは無駄な努力?


無駄というわけでもありませんが、損なやり方です。

食後はすい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは、筋肉や肝臓が糖質を取り込むときに不可欠なホルモンです。
インスリンにはもう1つ大事が役割があって、皮下脂肪から脂肪が溶け出すのを抑制する作用があります。


食後2時間からランニングをすると、筋肉と肝臓が、インスリンに助けられて糖質を盛んに取り込んでいるときです。

一方、ランニングを開始すると、副腎からアドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、筋肉を俊敏にする作用があるホルモンです。
これらのホルモンには、脂肪を溶かし出す作用があり、血液を通じて皮下脂肪に到達すると、脂肪が溶けだしてきます。

ただし、アドレナリンよりも、インスリンの抑制作用の方が強力なので、食後だけは脂肪がとけ出してきません。


下図は、川崎医療福祉大学の女子大生20人が朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後に自転車エルゴメータを漕いだときの、血中脂肪濃度を測定したデータです。


このグラフのデータで、食前の運動(点線のグラフ)では、運動時間が長くなるほど血液中の脂肪濃度が上昇しています。

朝食後の運動では、運動時間の経過とともに、血液中の脂肪濃度が次第に下がってます。


ダイエット7

ご質問の、食後の運動は無駄な努力かどうかということについてですが、まったく無駄になるというわけではありませんが、食前の運動に比べると、だいぶ損だということはわかると思います。


> 空腹だと筋肉が減るというのはよくみかけたのですが、逆に食後は脂肪が減らないなら筋肉が減る?


そうなのですね。空腹で運動すると、糖新生が起こり筋肉が減るという考えの人が多いのですが、これが誤解を生んでいるのです。


空腹と言うのは、脳のエネルギーのことです。

脳のエネルギーは糖質です。脳には糖質を貯蔵する場所がなく、肝臓に貯蔵されています。
私たちが食事をすると血糖値が上がります。
血糖が上がると、脳がそれを検知して満腹信号を出し食事をストップさせます。
何時間かして、血糖値が下がると、脳が空腹信号を出して、次の食事を催促します。
脳はこのようにして、脳自身のエネルギーを確保しているのですが、これが私たちの食欲です。


脳の空腹信号を無視して、空腹を我慢するとどうなるでしょうか?

空腹信号が出ているということは血糖値が100mg以下に下がっているのですが、それでも食べないで我慢していると、副腎からアドレナリで出ます。

アドレナリが肝臓に到達すると、肝臓のグリコーゲン分解酵素に直接はたらきかけてグリコーゲンを分解して、血中に放出して血糖値を上げます。
だから、空腹を我慢していると、突然空腹感がなくなります。


その代わり、イライラします。
これはアドレナリンが闘争ホルモンなので、他人に大しても自分に大しても攻撃的になるためにイライラするのです。
ちょうど、同じころに糖新生が起こります。


糖新生とは、肝臓が主に血液中のアミノ酸からブドウ糖を作って、血糖を維持することです。
肝臓はアミノ酸2gから1gのブドウ糖が作って血糖を維持します。


筋肉は、一日にだいたい210gくらいが常にアミノ酸に分解され、また、血液中のアミノ酸から筋肉の再生が行われています。これが、いわゆる新陳代謝です。新陳代謝は、運動には関係なく常に行われていまです。このために、


ですから、かなり長い間、空腹を我慢しても、血液中のアミノ酸からの糖新生で脳のエネルギーを確保できるので筋肉が減るなどということは起こらないのです。

ミズノ・マラソンクリニックがマラソン前に空腹にして走れと教えるように、空腹で走っても筋肉が減ることはないのです。
空腹だと筋肉が減るという人は、この糖新生のことを言っているわけですが、詳しく知った上で言っているのではないようです。

アミノ酸は血液中にいつもたくさん貯留されています。