鳩山元総理のクリミア訪問が波紋を広げています。この問題は弊誌でもフォローしていきたいと考えていますが、日本の報道振りが一面的であることは間違いないでしょう。

ここでは、鳩山元総理に同行した一水会代表の木村三浩氏のインタビューを紹介したいと思います。このインタビューは２０１４年９月に行ったものですが、内容は今でも古びていません。なお、全文はキンドル版でもご覧いただけます。ご一読ください。（ＹＮ）

『月刊日本』２０１４年10月号

「プーチン来日こそ対米自立の第一歩だ」より

メディアが報じないクリミアの真実
──　ロシアのクリミア編入以降、日本も含め国際的にロシア批判が行われています。しかし、報道からはクリミアの現状がいまいち見えてきません。木村さんは先頃クリミアを訪問されたそうですが、現地はどのような様子でしたか。
木村　クリミアが実際にどのような状況にあるかは、現地を訪れて自分の目で見てみないとわかりません。私は在日ロシア大使館に対して、報道ベースで出てくるものが本当にクリミアの現実を反映したものなのか、クリミアの真実の状況を知りたい、我々にはいつでもクリミアを訪れる用意がある、と働きかけてきました。
　そうしたところ、クリミア議会から正式な招待が届き、８月３日から10日にかけてクリミア各地を訪問する機会を得ることができました。
　現地では、プーチン大統領の側近であるオレグ・ベラヴェンツェフ・クリミア連邦管区大統領全権代表やクリミア政府の高官らと面会し、意見交換をしました。
　私はベラヴェンツェフ氏に対して、プーチン大統領のクリミア編入の決断を支持すると伝えました。クリミアはソ連時代にフルシチョフが酒に酔った勢いでウクライナに編入したようなもので、歴史的に見ればロシアの領土です。また、今年の２月に入ってからウクライナ情勢は悪化しましたが、あのまま手を拱いていれば、クリミアでも流血騒ぎが起こっていたでしょう。ロシアが住民保護のために乗り出したのも仕方のないことです。
　クリミアでは、政府関係者だけでなく、市井の人々からも話を聞きました。彼らの一人は、「クリミアのロシア編入はロシアの占領によるものではなく、我々市民の意志によって決定されたものだ。我々にとっては『クリミアの春』と呼ぶべきものかもしれない。クリミアがウクライナの支配下にあった23年間、我々はロシア語の歴史教育を制限され、ウクライナ語の使用を強制された。また、学校ではウクライナの歴史教育が行われた。年金、医療、教育なども重視されることはなかった。この23年間、良いことは一つもなかった」と言っていました。
　クリミアはソ連崩壊直後より、自治権を守りたい、ロシアに編入したいという意志を示してきました。それ故に、ウクライナ政府はクリミアを虐げ、しっかりと面倒を見てこなかったのです。
　私はこれまでアブハジア共和国や南オセチア共和国などを訪れ、独立の意気に燃える現地の人々と接してきましたが、そうした経験則からしても、クリミア住民たちの「ロシアに帰りたい」という思いは嘘偽りないものだと思います。その意味で、マスコミのロシア批判は事実に基づくものとは言えません。

誰がウクライナ混乱を引き起こしたのか
──　日本や欧米のマスコミは、ウクライナ混乱の責任は親ロ派、さらにそれを背後で支えているロシア政府にあるとして、プーチン大統領の責任を厳しく追及しています。
木村　そのような批判は的外れです。プーチン大統領は以前から停戦を呼びかけており、８月26日にもウクライナのポロシェンコ大統領と当事者間で８時間にわたって直接会談し、停戦への協議をしました。
　停戦に応じようとしていないのはむしろウクライナの方です。ポロシェンコ大統領は停戦の条件として、ウクライナ東部のドネツクなど「ノヴォロシア」の人々が武装解除することを求めています。しかし、武装解除すればウクライナ軍に殺されてしまうのは目に見えています。停戦した後に武装解除するのであればまだしも、停戦の前提条件として武装解除するなどというのは不可能です。
　責任は欧米諸国にもあります。今年の２月にアメリカのヌーランド国務長官補の通話記録が暴露されましたが、それを聞けば、アメリカがウクライナのデモに介入していたことは明らかです。デモを裏で扇動していた彼らに、ロシアを批判する資格はあるのでしょうか。（続く）

『月刊日本』２０１４年１０月号