京から旅へ /天空の城「竹田城跡」 | 創業280年★京都の石屋イシモの伝言

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◆京都の石屋 石茂 芳村石材店◆部録/石のセレナーデ
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 本来は山頂に築かれた城の形が、虎が臥しているように見える
ことから、虎臥城(とらふせじょう)とも呼ばれていたようだが‥

今は“天空の城”“日本のマチュピチュ”という、キャッチ
フレーズで、赤丸急上昇中の「竹田城跡」へ、行って来た。

実は、往復12時間かけた、久遠寺バス日帰りツアーの翌日だが、
ここのところ、バタバタしていて、だいぶ書き込みが遅れた。

行き先は但馬の国。京都からさほど遠くはないが、混む所だと
聞くし、一人で運転するのも億劫なので、バスツアーを選んだ。

多少、疲れも残ってはいるが、連日、旅ができることに感謝し、
5時半に起き、昨日と同じ、四条大宮 7時発のバスに乗り込んだ。

普段は友人達と行くので知らなかったが、一人予約は相席でない。
おひとりサマ同志のトラブルを防ぐためか、隣の席が空いてる。

お陰でゆったり座り、午前中は、コーヒーと本が楽しめる。
ほろ酔い程度の洋酒もスキットルに入れて来た。帰りも万全だ。

                 

バスは京都市内から京都縦貫道を抜け、八木西ICまで一気に走る。
その後、地道で丹波篠山に入り、曹洞宗の寺の見事な紅葉を見学。

高速で移動し、もう一カ寺。紅葉と多くの石仏を目に焼き付ける。

竹田城跡では、食事をする場所と時間がない、という理由で、
お弁当が配られ、車内で早い昼を済ませる。ほど良い頃に到着。

場所は、竹田城跡が頂上にある山の中腹。ここでマイクロバスに
乗り換え、さらに上へ、山城の登り口まで運んでくれる。

登り口からは坂道と、190段程の石階段を歩き、約20分で到着する。

頂上の城跡はまさに“天空の城”に値する、雄大で爽快な景色だ。
標高354mの山頂から見降ろす、山河のパノラマも素晴らしい。

南北400m、東西100mの縄張りだが、石垣だけの為か広く見える。


  
 

有名な雲海に浮かぶ、神秘的な城跡の姿は、晩秋から冬の時期、
日の出の頃に、川向こうの山の上から見える。と、聞くが、
夜と朝の寒暖差が大きく、無風であることなど、条件も厳しい。

ところで今は昼時、私は城跡内に居て、見上げる空はブルースカイ。
全然、条件が違う。でも、此処の美しさは“トレビアン”である。



その感動を与えてくれるのが、山頂に連なる石垣の美しさ。
廃城から約400年たつのに、ほぼ、昔のまま残っているとのこと。

石垣積みには、安土城や姫路城と同じく「穴太積み(あのうづみ)」
の技術が、全体的に多く見られる。無論、そればかりではないが。

穴太積みは、滋賀県坂本を拠点として、安土桃山時代から城壁造り
に長けて、活躍した石工集団“穴太衆”が積んだ、野面積みを指す。

穴太積みは、彦根城、姫路城、丹波篠山城などにも遺構が見られる。

   
  

広い敷地内の石垣をぐるりと見て周る。高い所も一々、登りながら
一つひとつの石の形状や面構え、組み合わせをひととき、楽しむ。

視界の開けた石垣の石の上に座り、ゆっくり周りを見晴らすと、
まるで天下人になったような、そんな危うい錯覚を覚える。

この城跡に建造物がなく、自然の風景の中に溶け込んでいる為か、
柔らかな風に吹かれ、目を閉じるとイメージが大きく膨らむ。

石垣を積む職人の喧騒や、合戦の雄たけびや‥

そう言えば、こんな感覚は、唐津の名護屋城跡でも感じたなぁ、
などと、思いながら、ふっと我にかえり、

「まぁ、そんな時代に生きとっても、できの悪い足軽か、
 石工の見習いで、石積みにヒィーヒィー言うとったな」

と、自嘲しつつ、影を伸ばした石垣を後に、山を下りて行く。

後は、スキットルでぬくもって、ひとり眠るだけである。


※↑この画像は購入した絵ハガキから使用させていただきました