暦では「霜降」を迎え、秋が深まりゆくこの時期は、例年のように風邪を引く人が増えます。蒲谷漢方研究所併設の調剤薬局にも風邪の患者さんが一気に増えました。もちろん一般の風邪には有効な抗ウイルス薬がなく、「解熱鎮痛剤」や「抗生物質」、「咳きとめ」「化痰薬」などが処方されるケースが多いです。これらの4,5種類の風邪薬をもらって「ああ医者にかかってよかった」「漢方薬や市販薬より強い風邪薬をもらった」と「安心」する気分になりませんか?

 しかし、一般の風邪は2,3日でだんだん鎮静化するし、また「発熱」や「鼻水」、「のどの痛み」「咳」などの症状は、体の防衛反応であることも忘れてはいけません。それを「強力に抑え込む」とみずから治る力がだんだん弱まってしまいます。無意味な抗生物質はのどや大腸の常在菌を殺してわたしたちを守る力を弱め、抗生剤耐薬性を増やします。

 化学薬で抑え込まず、風邪のサイクルを体でおぼえて風邪に勝っていくことは、筋トレを続けると筋肉が丈夫になってくるのと同じく、体の免疫系統も丈夫になってきます免疫系統が丈夫になってくると風邪やインフルエンザ、ほかの感染症にもかかりにくいし、罹っても軽く済みます。しかし、いつも「化学薬で抑え込む」と、「筋トレしない体」と同じく、すぐ風邪を繰り返し、しかも重症化するケースも少なくありません。

 漢方医学では、急に寒くなってくるこの時期の風邪のほとんどは「寒邪からくる」と考え、冷たい空気が気道から入り、呼吸器を弱めて、風邪を引き起こすと考えています。マスク、ネックウォーマやベストで鼻・首・背中を温め、温かいうどんやおでん、鍋を食べ、安静することが望ましいです。ウイルスが強いときは、鍋に食用酢を50cc入れ、水はその1-2倍入れて、10分ほど加熱して、水蒸気で室内消毒をすることも好ましいです。さらに葛根湯、小青竜湯、平喘顆粒など速効性がある漢方風邪薬も常備しておくと、より楽に風邪に勝てるでしょう。