いつもごめんなさい。
キングコング西野です。

そろそろお気づきかもしれませんが、僕、文章を書くのが異常に早いんですね。
ビジネス書とかなら、だいたい2~3日で書いちゃう。

オンラインサロンメンバーは知っていますが、毎日、サロンには「マジか、コイツ!」っていう文量をブチ込んでいます。
もちろん、『質』は言うまでもなく。


で、先日、11月に発売する新刊『新世界』の「はじめに」をピャーっと書いちゃって、このブログに投稿してみたのですが、あれって、ザックリとした“ラフ原稿”なんですね。
本にする時は、もう少しキチンと整理するつもりなのですが、そんなことより何より、僕、あの「はじめに」に『あの件』を入れていないんです。


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「長くなるから、まぁ、いいかなぁ」と思って、あえて『あの件』の話を外していたのですが、いやいや、僕の人生はそんなにスマートじゃないので、そこも全部晒した方が良さそうです。

というわけで、『新世界』の「はじめに」を加筆修正しました。
ご確認くださーい。

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『はじめに』(最新刊『新世界』より)



ベランダの目の前には通天閣があって、下を見ればヤクザとホームレスと、身体を売っている年齢性別不詳の何者かが立っている。

『新世界』という街だ。

「1年で売れなかったら芸人を辞める」と言って、高校卒業と同時に兵庫県の田舎町を飛び出し、この街で独り暮らしを始めた。

503号室の玄関には油性ペンで『エドウィン』と落書きがされている。
家賃は4万円。 

 
実家はサラリーマン家庭で、兄ちゃんと姉ちゃんとボクと弟の4人兄弟。
上の子二人を大学に放り込んだ西野家には、まさか仕送りをする余力なんて残っちゃいない。

アルバイトには時間を使いたくなかったので、高校時代に貯めていた僅かな貯金が生命線。

地元の仲間が「つらくなったら、いつでも帰って来いよ」と盛大に送り出してくれたけど、盛大に送り出してくれた手前、結果を出すまでは帰れない。

だけど、テレビから流れてくる『東京』は、ずっと遠くて、今いる場所から続いているとは思えなかった。

 

19歳のボクは、吉本興業の養成所で出会った梶原君と『キングコング』という漫才コンビを結成し、すべての時間を「お笑い」に費やした。



先輩の誘いも断って、血が出るほど漫才のネタを書き続けた。

「質」はさておき、誰よりも「量」を書いた。

ネタが書き終われば、朝の4時だろうが5時だろうが梶原君を呼び出して、そこから20時間ブッ通しでネタ合わせすることも珍しくない。

 眠そうにしている梶原君にブチギレたことが何度もある。
人として未熟だったし、必死だった。



劇場の出番が終わると、真っ直ぐ家に帰った。

付き合いの悪いボクに対して、先輩方が快く思っていないことには気づいていた。

目の前にいる先輩方は、学生時代から毎週テレビで観ていたボクのヒーローで、その人達から「西野ってイタイなぁ」と言われた時は、それなりにショックを受けた。

 
それでも、やっぱり真っ直ぐ家に帰ってネタを書いた。
早く売れたかったんだよね。

 

仲間に夢を語って田舎を飛び出したものの、実際のところは、何者にもなれないまま終わってしまいそうな不安に毎日襲われていて、あと少しでもこの場所にいると、まもなく未来が翳り始めるような気がして。

とにかく、ここから抜け出したかった。

 
ラッキーなことに、努力の成果は少年漫画みたいに出た。

養成所の在学中にNHKの漫才コンクールの大賞をいただいて、1年目で関西の漫才コンクールを総ナメして、20歳の頃に東京で『はねるのトびら』という深夜番組がスタートした。


そこから、さらにガムシャラに働いた。

毎日、早朝からド深夜まで番組やイベントに出演。
分刻みのスケジュール。
睡眠時間は一日1〜2時間。
ベッドで寝られる日なんて稀で、大体は新幹線かロケバスの椅子の上。
移動時間を利用して、寝ていたのか、気絶していたのか。

 そんな中、漫才の新ネタは週に4〜5本おろして、ショートコントは毎月20本おろした。

毎日のようにネタ番組や新ネタを披露する舞台があるのに、すぐに売れたボクらには、先輩方のようにネタのストックが無かったんだ。
スピード出世も考えもんだ。

 もちろん新ネタを書く時間なんて用意されちゃいない。
番組でVTRを観ている間や、漫才の出番中に、頭の中で次のネタを書いていた。
お粗末だよね。

芸歴10年近い先輩方が劇場で何年も叩いて仕上げた鉄板ネタと、昨日まで高校生だったヤツが突貫工事で作ったネタが同じ商品棚に並べられるんだ。
そんなの、勝てっこないじゃない。

 
テレビ出演にしてもそう。

右も左もわからず、共演者との関係性も、MCのノウハウも、エピソードトークのストックもない。
話を振っては無視されて、話を振られてもタジタジ。

何の経験もない20歳が、無駄に「エリート」と紹介され、期待値ばかりを上げられて、空振りの連続。
「エリートのワリに面白くないね」
「司会が下手くそ」
散々、言われたな。
ちょっと待ってくれよ、昨日まで高校生だぜ。
だけど世間は容赦ない。
毎日毎日、負け続けた。

その頃、梶原君は頭に10円ハゲをたくさん作っていた。
精神的に追い込まれ、トイレから出てこない日もあったし、突然発狂することもあった。
次第には、まともに会話が出来なくなっちゃっていて、ついに全ての仕事を投げ捨てて、失踪した。

行方不明になってから3日目。
関西のカラオケボックスで見つかった梶原君は、ひどく怯えていて、もう、完全に壊れていた。
とても仕事なんてできる状態じゃない。
会話ができないどころか、声が届いてないんだ。
一緒にバカをして、一緒に未来を見た相棒が、ブッ壊れちゃったんだよ。
なんで、こんなことになっちゃったのかな。
生きていてくれたことが唯一の救い。
その日にキングコングの無期限活動休止が決定。
1日で全ての仕事を失った。

ボクが一人で活動をして、もしそれが軌道に乗ってしまったら、いよいよ梶原君は帰ってこれなくなってしまう。
マネージャーと話し合って、一人での活動はやらないことにした。

「自宅待機」というヤツだ。

この「自宅待機」は、いつまで続くんだろう?
梶原君は戻ってくるのかな?
重い闇がまとわりついて、まるで先が見えない。
だけど、もし梶原君が戻ってくるようなことがあったら、今度はもう負けたくないな。


自宅にこもって、ネタを書き続けた。
メモ帳を片手に、朝から晩までテレビにかじりついて、先輩方の芸を盗み続けた。
なるほど、テレビって、こうやって戦うんだ。
それにしても眩しいな。
もう一度、あそこに帰りたいな。

 
活動休止から3ヶ月。
梶原君から連絡があった。
全ての情報をシャットアウトしていた梶原君に、梶原君の母ちゃんが言ったそうだ。

「西野君、まだ、あんたのこと待ってるで」

 
梶原君は、「西野は、もうとっくに一人で活動している」と思っていたみたいで、まさか自分のことを待っているなんて思ってなかったらしい。
置いていくわけないじゃないか。
ボク、漫才がしたいんだから。

 
3ヶ月ぶりに梶原君と会った。
「ごめん! 俺、とり返しのつかないことをしてもうた。ごめんなさい! ごめんなさい!」
 梶原君は何度も何度も頭を下げたけど、全然問題ない。
もう大丈夫。ホントに大丈夫だから。
もう一回、やり直そう。
大丈夫、いけるよ。

 
次の日、キングコングの活動が再開した。
まずは御迷惑をおかけした各仕事先への謝罪行脚。
そして、いただいた仕事と一つずつ一つずつ丁寧に向き合って、着実に仕事を増やしていった。

 
ボクは25歳になった。
『はねるのトびら』はゴールデンタイムに進出。
まもなく、日本一視聴率をとる番組に成長した。
各局で冠番組もいただいた。
「売れっ子芸人」というヤツだ。

 
裏側を知らない人から見ると、絵に描いたようなサクセスストーリーだった
チヤホヤされたし、生活も良くなった。
25歳ではできないような経験をたくさんさせてもらった。
まわりが羨むような状況だったと思う。

 

だけど、そこは、新世界のボロマンションから見ていた未来じゃなかった。

 

その山を登れば景色が広がるものだと信じて、誰よりも努力をして登ってみた。
だけど、そこから見えた景色は、タモリさんや、たけしサンや、さんまサン、ダウンタウンさん、ナインティナインさん…といった先輩方の背中だった。

彼らのことをまるで追い抜いていなかったし、一番の問題は、追い抜く気配がなかった。

 
梶原君とボロボロになって、ようやく辿り着いた先がココ?
やれることは全部やったハズだ。
なんで突き抜けてないんだろう。
どこで道を間違ったんだろう。

 
世間の皆様は「身の程を知れ」って言うかもしれないけど、芸を生業にする人間として、彼らは当然ライバルだ。

ボクがこの位置に落ち着いてしまうと、ボクのことを信じて応援してくているファンやスタッフに申し訳が立たない。
自分のことを応援してくれている人には、せっかくなら誰よりも大きな夢を見させてやりたい。
そう思うのは間違ってるかな?

 
それに、身の程に合わせて活動してしまったら、いつまでたっても未来が始まらないじゃないか。

ボクは、「どうして今の自分に、芸能界のトップを走る先輩方を追い抜く気配が備わっていないのか?」を考えてみることにした。

 まさかここで、『才能が無かった』という生ぬるい結論を出すつもりはない。
『才能』なんて努力でいくらでも作り出せる。
『才能の作り方』に関しては、本編で詳しく説明するね。


ボクが彼らを追い抜いていない(追い抜く気配が無い)原因は、『才能』と別のところにあった。

 
その当時のボクが走っていたレールというのは、タモリさんや、たけしサンや、さんまサンといった先輩方が、もともと何も無かった世界に敷いてくださったレールだ。

 当然、そのレールを走ると、最終的には、最初にレールを敷いた人間の背中を押す作業に入る。
「『踊る!さんま御殿』で結果を出せば出すほど、さんまサンの寿命が伸びる」という構造だ。


ファミコンで喩えると、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といったソフトを作れば作るほど、ファミコン本体(ハード)を作っている任天堂にポイントが入るって感じかな。

真剣に先輩方を抜く気なら、ファミコンのソフトを作っていてはダメで、彼らとは別のゲーム(たとえばプレステ)のハードとソフトの両方を作り、世間の目をそのゲームに向ける必要があると結論した。

 
そこで。
まだタモリさんや、たけしサンや、さんまサンといった先輩方が足を踏み入れていない世界に出てみることにした。

 芸能界の外だ。

 
「誰も踏み入れていない土地を歩こう」
25歳という若さが後押ししてくれた。
だけど、そう簡単にはいかない。
ボクの人生は、何度落ちても気が済まないらしい。

 
何の後ろ盾も無く外に飛び出すと、先輩方や同期の芸人や世間の皆様から執拗なバッシングを浴びた。
もしかするとキミも一度は耳にしたことがあるかもしれないね。
一時期は、バラエティー番組をつければ、「芸人なのに雛壇に出ないキンコン西野」をネタにした欠席裁判が繰り返されていた。
もしかすると、それは芸人の「愛情表現」だったのかもしれない。

ただ、それはイジッている側の理屈で、それが欠席裁判だと、ボクには歪んで伝わってくる。
そして、なにより、その番組を観た視聴者からの同調圧力が止まらない止まらない。
「調子に乗るな」
「ざまあみろ」
「死ね」
こんな言葉が毎日数百件届いた。
そして、アンチの人達は「ひな壇に出ろよ」の大合唱。
へ? ボクをテレビで観たいの? どっち?
もうワケが分からない。

 
被害妄想なんかじゃなくて、事実、この国で、キングコング西野を叩くことが流行った時期はあった。
病的とも思えるほどに。
世間からボッコボコに殴られている息子を、黙って見ることしかできなかった父ちゃんと母ちゃんはツラかっただろうな。

この単語はあまり使いたくないけど、『イジメ』に遭っていた。
日本国民からだ。

もちろん僕の人間性にも原因があるけど、何の苦労もせず(したよ、誰よりも)、若くして売れてチョーシに乗っていた芸人の人生転落物語は、嘲笑うには格好の的だったのだと思う。

 
攻撃を受ける対象がボクだけならまだしも、その手は、それでもボクのことを応援してくれているファンやスタッフにまで及んだ。

「お前、キングコング西野のことなんか応援してんの?」


ボクのファンやスタッフは、毎日、そんな言葉を浴びていた。
彼らには、謝っても謝りきれないほど、ずいぶん肩身の狭い思いをさせてしまった。

原因は分かっている。

 

ボクが弱かったからだ。

 

 

キミは今、どこにいる?

 一歩踏み出したいけど、踏み出せない場所にいるのかな?
変わりたいけど、変われない場所にいるのかな? 

 そりゃそうだよね。
メチャクチャわかるよ。
一歩踏み出した人間が、こうしてボッコボコに殴られてるんだもんね。
怖いよね。

どうしてなんだろう?
どうして、自分の人生を、自分の思うように生きることが許してもらえないんだろう?
どうして、挑戦すれば、めいっぱいバカにされて、めいっぱい殴られるんだろう?
どうして、挑戦を止められてしまうんだろう?

悔しいな。
おかしいよね。
誰にも迷惑かけてないじゃないか。

 
だけどね、

 
この国では、外に出ようとすると必ず村八分に遭う。
この国では、多くの人が自分の自由に自主規制を働かせて生きているから、自由に生きようとすると、必ずバッシングの対象になる。
その根底にあるのは、「俺も我慢しているんだから、お前も我慢しろ」だ。

 
夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。
挑戦する以上、この道は避けて通れない。


 
でも、大丈夫。
キミは、キミの最初の一歩を決して諦める必要はない。

ボクが証拠だよ。
あれだけボッコボコに殴られて、死んでないだろ?
今、ボクは、本を出せば、どれもベストセラー。
有料のオンラインサロン(ファンクラブみたいなもん)は国内最大。
つまんない仕事は全部断って、自分が本気で面白いと思ったことしかやっていない。
皆は転落したと思っていたけど、ボクは転落なんてしちゃいなかった。

ずっと探していたんだよ。
戦い方を。
生き延び方を。

そして、ようやく見つけた。
今は、世界を獲りに行っている最中だ。
獲るよ、本気で。

 

いいかい?
キミがいるその場所から一歩踏み出すのに必要なのは、「強い気持ち」なんかじゃない。

キミに必要なのは、踏み出しても殺されない『情報』という武器だ。

今、世の中で何が起こっているのかを知るんだ。

時代が大きく動いている。

ここ1~2年は、とんでもない規模のゲームチェンジが起こっている。
とくに『お金』は大きく姿を変えた。
当然、扱い方も変わってくる。

ほとんどの人がこの変化に気がついていなくて、変化に乗り遅れた順に脱落していっている。
キミに守りたいものがあるのなら、この変化を正確に捉えるんだ。

少しだけボクの話に耳を傾けてください。
そこから一歩踏み出す方法を教えるよ。
一緒に勉強しよう。

大丈夫、いけるよ。

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