「古賀くん、いったいどうしたんだ?」
監督の森住が問い質す。
「俺は知っての通り、リアルを追求する
タイプで殺陣も演技もリアルじゃないと
ダメなんです。」
「なるほど。その通りだな。」
「ラブシーンもです。」
「ん?」
「あんな状態で、俺はリアルを追求す
ることはできません!!」
彼が指差した先にいるのは、見つめ合い
微笑みあう蓮と京子。超甘々で、見て
ると口から砂糖がこぼれ落ちそうだ。
京子が蓮を好きなのは撮影前から
判っていたが、まさかの両想いとは…。
「俺は常に共演女優に惚れられ、それ
なりの関係を築いてきました。」
「ほう。」
「しかし、今回は朝比奈さんは彼氏
あり。京子さんはあの通り。役に入り
込むことができません。降板させて
ください。」
「気持ちは分かるが、志津摩は誰がやる
んだ? 」
森住の問いに古賀はにっこりと笑った。
「日本一忙しいはずの敦賀くんが毎日
ここに顔を出してます。
彼なら台詞も殺陣もラブシーンも完璧に
覚えていると思いますよ。」
End
2017.7.23加筆修正