「蓮、キョーコちゃん知らない?」
社が慌てたように聞いてきた。
「帝○ホテルじゃないですか?パーティに
出席するんでしたよね。」
蓮の言葉に社は頷いた。
「そうだよ。映画配給先の大事なパー
ティ。キョーコちゃんはヒロインだか
ら欠席はダメ。俺が送っていく予定に
なってるから会場にはまだ行ってないはず
なんだよなあ。ラブミー部かな。トイレか
な///」
社は慌ただしく立ち去った。
(…最上さん、分刻みのスケジュールか。)
人気女優の『京子』は大学卒業後、
才色兼備としてテレビに引っ張りだこだ。
この間は総理大臣にインタビューして
いたし、アメリカの著名な監督の通訳まで
していた。
タレントなので、なんでもありだ。
(…早く結婚しないと彼女に逢うのが難し
くなりそうだ。 )
蓮は苦笑した。
その時、松島主任が駆け寄ってきた。
「蓮!探したぞ。いったいどうなってるん
だ。この記事!ま、いいや、社長室に行く
ぞ!」
ゲラ刷り用紙を握りしめた松島と蓮は
社長室に向かった。
「社長!何故この記事の公開を雑誌社に
OKしたんですか?!」
松島はゲラ刷り用紙をテーブルに置いて
猛烈に抗議した。
『スクープ!ハリウッドスター敦賀蓮
不倫か!相手はジュリエナ・ヒズリ!』
蓮は目が点になる。
モデルの仕事で一緒になった母親と
のツーショット写真。
「ハリウッドスターって照れるな////」
「問題は其処じゃない!不倫って何
だ!不倫は駄目だ!」
「不倫なんてとんでもない!俺の…」
言い争う二人にローリィ宝田は葉巻の
煙を吹き掛けた。
「いいじゃねえか。抱かれたい俳優の面
目躍如だな。蓮。」
ニタニタ笑うローリィに蓮はムッと
する。
「クー・ヒズリに抗議されますよ。」
蓮に松島も同調する。
「相手が悪いですよ。蓮もハリウッドで
活躍し始めたのにクーの奥さんって不味
い。干されますよ。」
「奴はそんな器の小さい男じゃねえ
ぜ。ん?どうした。社、顔色が悪い。」
ローリィの言葉に蓮と松島は振り返っ
た。ドアの近くに社が立っていた。
「キョーコちゃんが…キョーコちゃんが
いなくなりました!」