【青く、老いたい】第227回「荒井里奈さんのスピーチ」 | スクラップブック(2011年夏~現在)

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2011年8月以降、私(編集委員・安藤明夫)が中日新聞で書いた医療記事や、中日メディカルサイト(2018年3月末で休止)に載せたネットコラム「青く、老いたい」の保存版などを、載せていきます。

3月18日、名古屋市の愛知県がんセンター中央病院で開かれたシンポ「いつまでも食べる楽しみを支えたい」(愛知県歯科衛生士会主催)。シンポジストとしてマイクを握った荒井里奈さん(43)=岐阜県高山市=は、無言のままパワーポイントの最初のページをスクリーンに映しました。
 

続いて、もう1枚。

張りつめた空気がふっと和むのを見計らって、荒井さんは「こんにちは、荒井と言います。今日はよろしくお願いします」と話し始めました。

3年前に舌下腺に「腺様嚢胞がん」(ACC)という珍しいがんが見つかり、愛知県がんセンター中央病院で、舌の大半とあごの一部を切除。7ヵ月入院。
一時は、水を飲むことも難しい状態で、食事が苦痛になり、絶望感に襲われたが、同病院内の嚥下障害をかかえる患者たちの集まり「つばめの会」に参加し、先輩患者たちが再び食べられるようになった姿を見て、励まされたこと。胃ろうを造設し、職場復帰して、たくさん話したり、笑ったりしたことがいいリハビリとなり、食べる機能、話す機能が回復していったこと。
「これからも、食べることをあきらめずに、工夫を重ねていきたい」と締めくくりました。

 この日の荒井さんは、ジーンズに「チームACC」の白いTシャツ。上着にもACCのバッジ。そして、右目の眼帯には、数個の星模様のシールが付いていました。
 肺から脳神経に転移したがんが視神経に影響して、右目の状態が悪く、2月ごろから眼帯の生活が続いているのですが、いつもかわいい飾りを眼帯に付けるのが、荒井さんのポリシー。眼帯だけだと痛々しくて、友達にも「どうしたの?」と心配をかけてしまうけれど、飾りがあると「かわいい!」から話が始まるので、ありがたいそうです。

 私が荒井さんと初めて会ったのは昨年11月の「つばめの会」でのこと。以後、食事風景などを取材させていただき、ことし1月に紙面で、同会の活動と併せて、荒井さんのリハビリを紹介しました。
 以来、私の周りでも「里奈さんファン」が増加の一途です。
 4月3日からは、中日新聞の朝刊医療面で、荒井さんの闘病記「舌はないけど」がスタートします。隔週火曜日の連載で、これまでの闘病、現在の体験、これからの夢や活動などを自由に書いていただこうと思っています。
 お楽しみに。