ペンで描く、タブレットで描く。

横で描く、縦で描く。

モノクロで描く、フルカラーで描く。

紙の雑誌に出す、ウェブ雑誌に出す。

 

描く道具や様式のみならず、自分の作品の発表の場も広がっています。

ちょっと見せるくらいなら、SNSでも十分。

 

かつて、紙の雑誌全盛で、ネット環境が整っていなかった頃は、

新人にとって、自分の作品を世に出すのは大変でした。

雑誌に投稿しても、編集者の目に留まらないとリアクションもない。

それなりの賞を取って、ようやく増刊号に受賞作が載るとか。

デビューそのもののハードルも高かった。

担当編集者が門番のように立ちはだかっているイメージでしょうか。

 

今はちょっといい感じの絵がアップされていると、すぐに編集者から連絡が来たりする。

出張編集部で見てもらうと、すぐに名刺をもらえたり。

青田刈りとも言えますが。

 

かつては簡単に名刺を渡すことはなかった。

名刺を渡すには、それなりの責任が伴うわけで。

いまは、有望そうな新人に名刺を渡さないと先を越される。

その結果、新人の手元にはトランプみたいに何枚も名刺が集まったりする。

 

多くの出版社から連絡をもらうのは、いい気持に違いない。

でも、浮かれてはいけない。

早く唾を付けておこうと思っているだけのケースもある。

編集者は集めるのが仕事ですから。

 

メールをもらったり、名刺をもらったからって、未来が約束される訳ではない。

そのあとの、地味な努力が大事なわけで。

 

地に足を付けて考えよう。

デビューすることより続けて行くことの難しさ。

 

こんなことをくどくど書くのは、老婆心とも言える。

余計なことかも知れない。

 

できれば、しっかり根が張ってから見つかって欲しい。

浅い根では、大きな実はならない。

 

新人をじっくりと育てていくことは、すぐにお金を儲けなければならない世界では、

効率的ではないだろう。

しかし、人ひとり育てるというのは、相当にしんどい仕事だと思う。

どんな仕事でもそうだ。

 

春にタネを蒔いて、秋には収穫、冬には枯れるのが草としての植物。

タネを蒔いて双葉が出ても、なかなか大きくならないのが木。

地上部が伸びないときは、地下で根が伸びている。

地下がある程度充実してから、地上部分が伸び出す。

そして、何年も何十年も成長し続ける。

 

人間は草ではなく、木なんです。

人材って言うでしょ。

 

甘い言葉で浮かれないように。

少し鈍いくらいが良い。