伊那谷に少し遅い春の訪れ
心地よい風と花の香りに心を委ねて
いつものあの場所へと向かう


遠く南アルプスの稜線
緩やかに時を刻む
至福の午後


伊那谷のサクラに魅了され
はや六年

谷の自然は
今も変わらない姿で
旅人を迎えてくれる


「伊那谷」とは
南アルプスと中央アルプスに囲まれた
長野県の南信地方をさす言葉で
北の諏訪湖とアルプス周辺の山々から
流れ出る水を合流させて流れる
天竜川とその源である天竜峡を含む
広域な地域の総称です

谷の歴史は深く
過酷な自然環境の中でありながらも
日本の西と東を繋ぐ貴重な宿場として
そして文化交流の場として
繁栄してきました


日本画の技法に
外国のノウハウをいち早く取り込み
日本画の世界に革命をもたらした
「菱田春草」が誕生したきっかけも
この辺りにあるのかもしれません


推定樹齢400年の大木
大地に根付き
永きにわたり人々の生活を
見守ってきたのだろう


春の訪れ
それは儚くもあり
切なくもある

春の到来と
サクラの美しさは

この先も
姿を変えることなく

旅人を優しく迎え
包んでくれるだろう