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2009年、トヨタがスバルを傘下に置き、それをきっかけにスポーツクーペのプロジェクトがスタートした。

今までなら、トヨタがクーペ一台のためにFRのプラットフォームを興すなどかんがえられなかったが、スポーツを謳うスバルには美味しい素材であり、そこから4ドア(アルテッツァ後継)などの派生車も考えられる為、両者の利害が一致したのだろう。

トヨタとしても現在増えつつあるミニバン等から小型車に流れる顧客に対し、ラインナップの充実を図るのに小型FRのプラットフォームは利用価値が高い。事実、すでにISより一回り小さい小型セダンのうわさもある。


200万前後で買えるスポーツクーペで、TE-86の後継と言う名目だが、パッケージングはかつてのシルビアを連想させる。トヨタで言うとセリカ後継と言うのが1番正確な表現な気もするが、確かに響きはよろしくない(笑)
エンジンはスバル製2リッターボクサー4気筒。重心の低さがポイントのエンジンでピークパワー、低速トルクなどは申し分ない。しかし、フィーリングや音に拘った形跡は見られず、退屈な優等生タイプのエンジンでもある。既存のパーツで簡単にターボ化や排気量アップが出来るし、トヨタにとっては使い回しの効くいい素材と言える。

レガシーやインプで使用され成熟のユニットだが、FT-86に搭載されるおいてパワーアップなどはアナウンスされていない。かといって、このユニットをそのまま使用して開発コストを抑えようというのではなく、パワーを落とさず燃費を引き上げ、それを売りにしようとしているのではないだろうと筆者は読んでいる。

“燃費”と言うキーワードはダウンサイジングの最も有効な言い訳であり、ワンボックスでの通勤を強いられているスポーツカー好きお父さんの見方になるだろう。


このエンジンは結構古い設計で恐らくトヨタが現在リファインをおこなえば二割ほど燃費が伸びると思われる。これにアイドリングストップを組み合わせたなら公表20キロ/リッターに近い数字も可能になるだろう。

200万をわずかに超える価格、低燃費、ボディサイズとなかなかパッケージはいいセンをついてはいるが、問題はデザインである。

mini、チンクエチェントを始め、メガーヌ、Z4、SLK等、海外の小型スポーツは小ささを活かした粋なデザインが目を引き、中流家庭のセカンドカーとしても人気だが、果たしてメインでEクラスや5シリーズに乗るお父さんはFT-86に魅力を感じるだろうか?また、メインでこのクルマを買った独身男性がこのクルマでお迎えに行くと彼女は喜ぶだろうか?



ただ無難にまとまったFT-86はデザイン的にも韓国や中国産のクーペに比べて特に優れている点が見当たらない。更に兄弟車であるスバルバージョンもかなりの共用パーツを使う模様で、トヨタの消極的な姿勢が伺える。旧型のデザイン評価が高かったスバルレガシーはレガシークーペが出れば絶対売れると思ったが、ようやく発売のクーペがこれとは残念である。



おそらくハンドリングはかなり煮詰めて来るだろうし、後にターボモデルなども追加され速さにおいても申し分ないだろう。

そこそこ早くて楽しいクルマであることは間違い無い。ちゃんとまっとうなスポーツカーであるのだがなんか泥臭い。もっと言うとオタク臭い。


やっぱりクーペはカッコ良くないと…。