「どのような音がお好みですか?」

そこそこのオーディオを扱ってるお店に行けば、大抵店員はこんな質問をして来る。

しかし、自分の好きな音をはっきりと言えるならばオーディオにおいて上級者といえるだろう。

因みに筆者がそう聞かれても即答はできない。たぶん、言っても伝わらないだろうし、向こうは「変わった客が来た」くらいにしか思わないだろう。


今年30を迎える筆者のよく聴くジャンルはポップスとジャズがメインである。

オーディオを始めたころは、宝の持ち腐れになるまいとクラシックを買いあさったものだが、この頃の我が家のポン置きシステムはとにかく解析的な音で、録音の良く無いソフトやJポップなど酷い音だった。

良質な録音のオケなどだったら、極論を言えば初心者でもB&Wのでかいスピーカーを教科書通りに設置すればとりあえず良い音で鳴ってしまう。

しかし、録音の古いジャズならその精巧さが仇となり、録音のあらなどが気になり音楽そのものの良さがスポイルされてしまう。

筆者は機械オタクなのであまり“音楽生”なんて言う言葉は使いたくないのだが、やはりオーディオをやっている以上映画のサントラからポップスまで“良い音”で聞きたいと思う。

そこで筆者が求める音は、ノリが良く、リアルであることの二点。

ノリがいいと言うのは主観的なもので、自分がノリがいいと思ってる音が他人にも良いのかは分からないが、リアリティ、つまり実在感は誰でも分かるだろう。

中には音像定位の正確に展開する音場を実在感と呼ぶ人もいるが、筆者の言う実在感は楽器の位置関係など二の次で、音そのもののリアリティのことである。特に打楽器、そしてボーカル。

うっとりするような美しい音色より、キモチ悪いほどリアルな音がいい。

ドラム缶や一斗缶で演奏するドルビーのロゴタイトルがあるのだが、個々では騒音に過ぎない音が、リズムを得ることで立派な音楽になる。音楽とは単なる音の連なりで、音そのものを“お化粧”してやる必要は無いと言うのが筆者の考えだ。


ただ、筆者が変わっているのは、リアルに聞こえるなら、音源に忠実である必要はないと言うことだろう。

要するにただひたすら正確な音より、本物っぽい音が好きなのだ。

そして、その個々の音が並んで出来たものがちゃんと“音楽”となるかと言うところを筆者は“ノリ”と呼んでいる。


個人の趣味を長々語ってしまったが、かと言って"良い音"で鳴らす方法は人それぞれで、正解なんてものは存在しない。とにかく知ったかぶりせずにいろいろ聞いてみることだ。どんな音があるのか知らないのに好きな音を決めつけてしまっては視野を狭める事になりかねない。


因みに筆者がオーディオに初めて手を出した時は予算内でとにかくいろいろなスピーカーを聴かせてもらった。最近では20代の筆者に話かけてくる店員さえ少ないが、基本店員も話好きが多いので、聞けばいろいろと教えてくれる。ただ、メーカーからの派遣の人などはもちろん自分のメーカーを勧めてくるので、気になるメーカーがあるなら他のメーカーも聞かせて下さいと言えば渋々繋いでくれる。

先入観にとらわれず、いいと思ったものを選べばいい。


次にアンプやプレーヤーであるが、小生が初オーディオをえらんでいる時はアンプの違いなど分からなかった。


ボク「ちなみにアンプでもそんなに音って変わるもんなんですか?」

店員「いや~、やっぱり全然違いますよ」

ボク「いっこ高いアンプに変えてもたってもいいですか?」

店員「カチッ。…ねえ、全然違うでしょう」

ボク「………全然分かりません。」


確かに若干の違いは感じたが、決して数万円の違いには思えなかった。
結局頑張って高い方のアンプを買ったが、理由は音ではなく、下位機種のつまみなどのパーツがあまりにしょぼかったためだ。

予算内で国産大手メーカーから選べば、エントリーモデルでも長らく使えるクオリティを備えているはずである。

なお、予算がはっきりしている場合は買えない額の機器は絶対試聴しない方がいい。

良い音を知ってしまうと予算内で買えるものが魅力的に見えなくなるし、購入した後も愛着が半減してしまう。…間違ってもハイエンドの音など聞くものではない。



いろいろ聴いて行くと、欲しい機器はどんどん予算をオーバーして行くのが良くあるパターンである。

サイズもデカイほど良くなる。

極論を言えばCDに込められた情報を全て引き出したいのなら、巨大なウーファーと最低2、30畳の高い天井を持った部屋が必要だが、都会に住むほとんどの人はそんなもん不可能である。

だれもが今いる部屋でより良い音が聴きたいと言うのがオーディオ選びのきっかけだろうから、オーディオの為に部屋を用意するとなると本末転倒も良いところである。

ミニカーのコレクションが1/48スケールより1/12スケールの方が凄いなんてことは無い。

スピーカーも自分にとって程よいサイズを選ぶことが最も重要なのだ。

とあるカリスマブロガーの表現を使わせてもらうなら、小規模で良い音を奏でるオーディオが持つ魅力はまさに「盆栽」的と言える。




















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