プリアンプのバージョンチェンジ
LA10はストレートな音を所望する一部のマニアから強い支持を受けたが、最善手として採用したP&G社製ボリュームが生産を中止すると言う通達を受けて、ファンダメンタルは可能な限りの在庫を確保し、その在庫が無くなる前に代替え品を用意する必要に迫られた。
結果、2年をかけて自社製のバランスボリュームを完成させた。
このボリュームは極めて小さな最低音から実用域でのステップを細かく刻んだ独自のカーブを持った力作だそうで、あまりに出来がいいのでプリとは別にパッシブアッテネーターを販売しようと言う話が持ち上がったらしい。
鈴木氏はパッシブアッテネータの制作には消極的だったらしいが、実際作ってみると意外に良いものが出来たと胸を張る。
巨大な別筐体の電源を持つファンダメンタルのプリアンプは100万だが、このボリューム部分のみを収めたパッシブアッテネータは20万。
聴き比べでは正直ほとんど違いが分からなかった。
強いて言うとしばらく聞いてからアタック音の鋭さがやや失われた気もしたが、気のせいかも知れないし曲も変わっていたのでちょっと自信はない。
パッシブタイプは小音量が苦手なのかと思ったが、鈴木氏はむしろ一般家庭で音量を絞る環境がパッシブの美味しいところと言うニュアンスのことを言っていた。
また、このボリュームはリモコンが付かないのだが、リスニングポジションまでケーブルを引き伸ばしても意外にほとんど劣化が見られなかったと言う。
ただ、個人的好みを言うとリモコンとボリュームを表す数字が欲しいところ。
この曲はボリューム15、この曲はボリューム12…と覚えておけばフォルテに転じた瞬間に慌ててボリュームを下げに行くなんてこともなくなる。
リモコンとボリュームインジケーターは例え音質と引き換えになっても欲しいところ。
大手国産プリアンプは50万程度からとなるが、そこには入力セレクター、トーンコントロール、フォノコライザー、キャノンコネクターのホット/コールド反転スイッチなど全部載せ。これらは全部音を汚す要因である。
プリアンプに置いてセレクターまで省くのは鈴木氏のこだわりで、プリ、パッシブプリ共にRCAさえ備えないのでRCAの機器と接続する場合は変換ケーブルを使用する必要があるが、 RCAは音質面で不利なんて事はもちろん無い。
ここまでの徹底したこだわりがプリアンプと言う「必要悪」による劣化を最小限に留めており、異次元のスピードを実現している。
もういじるところが無いと言うシステムにこの100万のプリアンプを導入するのはかなり面白いと思う。
パッシブプリの方は鈴木氏も述べていたが、上位のプリメインのパワーダイレクトにつなぐとかなり大きな効果を期待できる。
プリメインはプリ部を分けるだけでもかなり音が良くなるので、このパッシブと繋ぐだけで飛躍的に音が良くなるだろう。
個人的には数百万のシステムにこのパッシブプリを入れても高級多機能プリとは違った音が楽しめるだろう。
今のシステムがどこか物足りないと思っている人はファンダメンタルのプリとパッシブアッテネータはお勧めである。
試聴会は予定の2時間を超え3時間以上に渡ったが、鈴木氏のレコーディングに関するお話は非常に興味深いもので、時間はあっという間だった。
Soulnoteの音作りをより深く理解でき、共感出来る部分と自分の好みがより明確になった。
とりあえず今のアンプにはパワーダイレクト入力が無いが、アンプを導入した際にアッテネータの導入は間違い無いだろう。