最近プリメインアンプのフラッグシップに「ワンボディセパレート」と言うフレーズを付けるのが流行っている。


要するに電源など内部構造の分断とセパレート並の物量を謳っているわけだが、それは以前のプリメインアンプから何か変わった訳では無い。


そもそもセパレートとは何か。何故分ける必要があるのか。


分断の目的はメカニカルノイズ、つまり振動の分断と電気的ノイズの分断である。


プリアンプは極めてノイズに弱い。ハイエンドプリアンプは電源さえ別筐体にする事で徹底的にノイズを遠ざける訳だが、デジタルノイズを撒き散らすDACや大電流を扱うパワーアンプと同じ筐体に押し込めば大きなディスアドバンテージとなるのは目に見えている。


小生は現在主流となったスイッチ式ボリュームの性能を確かめるべく、最新40万クラスのプリメインと、長らく愛用して来た8万クラスのプリメインのプリ部を比較した事があった。


安価な方はブラシ接点による昔ながらのボリュームで価格は1/5。最新スイッチ式ボリュームの圧勝は目に見えた実験だが、結果は40万アンプの惨敗。


折角買った最新アンプのプリ部は8万クラスに劣るのかと肩を落としたが、数日後ふと思いつきで、パワー部を8万円の方に固定して同じ実験をすると結果は僅かに最新アンプが勝った。


つまり、5倍の価格差より「分ける」効果の方が大きかったのである。


そして、同じ筐体に押し込めるデメリットは強力な電源部を持つ上位機種の方が大きいのだ。


この簡単な理屈が分かると、ワンボディセパレートと言う言葉が如何にユーザーをおちょくったフレーズか分かるだろう。


メーカーはセパレート化による甚大なメリットを知りながら、プリメインに「セパレート並の〜」と言う文句を踊らせる。


ハイパワープリメインアンプはどうしても繊細な表現が難しく、描写力はあるのにエントリーグレードで聴こえていた音が潰れてしまったり大味になりがちである。


この対策として上位グレードをバランスアンプにする事も多い。パワーアンプで扱う電圧を小さくする事でプリ部への影響を抑えるのに加え、プリ部自体もバランス伝送によってノイズの影響を受けにくくなる。


バランス伝送はプリメインとして極めて理にかなっているのだが、音質が大きく変わってしまう為好みは別れるところ。


個人的にはバランスアンプの音は好きだが、パワーインが必ずと言って良いほどアンバランスなのは意味不明。将来的にパワーアンプとして使おうと思った時、これではアンバランスでしかパワーアンプ部が機能しない。


または反転アンプにて無理矢理バランス駆動にするのだろうが、反転回路なんぞ組み込めば音質劣化は明確である。


ついでに言うとXLR23番切り替えスイッチも意味不明。各機器にこの切り替えスイッチがあるとか音質に悪影響があるだけである。


位相なんぞ機器内で何度も反転して正しく出て来ているかも分からないのに各機器にスイッチつけて合わせるとか間抜けにも程がある。


どうしても位相が逆になるのが気になるなら最終的にスピーカーケーブルをプラスマイナス逆につなげば良いだけだ。


DENONSA1はバランス入力だとセレクターさえバイパス出来る無駄を一切廃した構成だったが、SX1は無知な老人に媚びてアンバランスのパワーインとXLRの切り替えスイッチと言う無駄なものを追加したのは非常に惜しい。


プリアンプの分離は音質を飛躍的に向上させる。


プリメインアンプでは到達出来ないクリアな音がある。


メーカーは安易にセパレートを貶めるようなフレーズを並べるのは止めるべきではなかろうか。