TAOCのインシュレーターの特徴は大きく2つある。炭素を含んだ鋳鉄の振動吸収性と鉄と言う素材の重さである。


鋳鉄と言うのは型に流し込んで作る鉄で、鋼ともステンレスとも特性が違う。


非常に高い振動吸収性を持ちながら、同時に弾力と言うか、音楽の弾けるようなニュアンスを減衰させる事なく押し出すようなところが、ただ吸収が良いだけの素材と一線を画す部分だと感じている。


同時にインシュレーターそのものの重さも特筆すべきもので、機器の天板や電源アダプターに置くと、音のギラついたものが抑えられ、その振動吸収性と重さが如何に音に影響するか分かる。


因みに現行モデルは塗装など改良が加えられ、モデル名もTITE-25GPTITE-46GPに改められている。


音の傾向と汎用性が気に入り、気が付けば9対の25PINが手元にあったが、更に大きい46PINが常に気になっていた。


一言で"大きいと言ってもその重さは想像以上である。1対で800gあるので、3個セットを両スピーカー用に2セット買ったら重さは5kgにも及ぶ。


電車移動でうっかりヨドバシで衝動買いしたらその後の予定はキャンセルして帰宅するハメになる重さだ。





とりあえず2台のパワーアンプに。


3点支持で124kgあるアンプに使って見るが特に変化は感じない。


アンプにはコーリアンボードを使用しているのだが、これのキャラが支配的である。


取り外しても変化は無く、「まあこんなもんだよな」と言う印象。


マランツのインシュレーターは鍛造アルミの削り出しだったと思うが、それと46PINの違いが分からないなら同じ素材の26PIN46PINの違いを聞き分けるのは至難の業だろう。


デカくて見栄えも悪いし、買った事をちょっと後悔し始めていたが、とりあえずせっかく買ったので気力を振り絞って本命のスピーカーにセットしてみる。







前一点配置はただでさえ見た目が不安定で落ち着かないのだが、重心が上がる事で更に不安である。…不細工過ぎてこれは無いなあ



音はなんか良い気がするが、重労働した事によるプラシーボだろう。


ひと通り聞き慣れたソースを聴いて、元の25PINに戻す。


46は余りにデカくて、やはりどこに使うにも25PINの方が見た目がスマート。ヤフオクで売ろうかと思ったが、25PINに戻したスピーカーの音に驚く。


…うるさい。メタリックと言うかトゲトゲしいと言うが、間違い無く昨日までと同じ音だが1歳の小型犬のように騒がしく落ち着きが無い音で、思わず音量を下げる。


再度スタンドから805を下ろし46PINにするとやはり落ち着き放った大型犬が現れる。


うるさく無いばかりか物足りないので音量を2クリック、1dB上げる。


この1dBの差は大きく、音の密度と深みが増し、低音はブックシェルフと思えないほど沈み込む。まだ音量を上げてもうるさいとは感じないだろうが、これ以上大きくすると長時間のリスニングでは聞き疲れしそうなので、僅かにもの足りない程度でやめておく。


大音量がうるさくないと言うのはオーディオにとって非常に大事な事である。ジャズなどでどんどんボリュームが上がって来て、最高潮に盛り上がるシーンで思わずボリュームを下げるなんてヤボな事をしないで済む。


映画を見ていると、特に低い周波数の重く鋭く立ち上がる音のリアリティにたびたび驚く。


とりあえず、見た目は不細工だが、前の音には戻り難い音である。




今までのTITE-25TITE-46は素材は同じグラデーション鋳鉄で、違うのはサイズと重さのみと言う事になるのだが、これだけ違うと、自ずと最上位モデルも気になる。




しかし、最上位のTITE-35やブックシェルフ向けのTITE-33は素材がアドバンスドハイカーボン鋳鉄とハイカーボン鋳鉄の組み合わせで、800gと言う重さの圧倒的効果を体験した後では、TITE-331170gと言う重さは不安になるほど軽い。





TAOC自身もグラデーション鋳鉄とハイカーボン鋳鉄は音色傾向が違うと明言しており、今回体験した更に上位の音と言う訳では無いようである。


しかし、TAOCの最高峰の音いつか試してみたいものである。