↑左から2sq、3.4sq、8sq
PC-Triple Cケーブル3.4sq + 極太ケーブル
オヤイデのペア4万のケーブルに対し、SAEC SPC-850は4000円/m程度のケーブルである。
こう見ると何となく安く見えるが、端子付きだと2mペアで4万程度になるので実は同価格帯のケーブルである。
PC-Triple Cと言う導体はヤマハNS-3000やクリプトンのスピーカーの内部配線にも使用されている、いわゆるスピーカーメーカーのお墨付きと言える新導体である。
太さはSAECの1番太いもので3.4sqとOR-800の一本より僅かに細い。
シールドやスターカッドは理論上電磁波の影響を受けにくいはずだが、シンプルな二芯が最も開放的な音がするので、敢えて凝った構造でないこのケーブルを選んだ。
ハイ、ロー共に8sqの極太ケーブルを使用した状態から、これをハイ側のケーブルと交換すると太すぎによる高域のインピーダンス増加を抑えられ高域の抜けが良くなるのではと言う試みだったが、予想通りハイの抜けが若干良くなり、シンバルなどの実在感や残響が美しく感じられた。
続いて高域と低域のケーブルを入れ替え、細いSPC-850をロー側に持って行く。ローが3.4sq、ハイが8sqと通常ならあり得ない組み合わせだが、3.4sqのpc-triple Cが中音と低音にどう変化をもたらすかの実験である。
驚いた事にハイ/ロー8sqの時よりロー側に細いケーブルを入れたのに、更に高音がキレイになった。
それどころか全域で描写力が上がっている。
8sqを4sqにした時より3.4sqの本ケーブルは最低域は弱いかと思ったが、4sqの時より最低域は出ている印象。
それでも一般的に“低音"と呼ばれる帯域はしっかり出ており、「ケーブルを太くしても低音は変わらない」と言う意見があるのもよく分かる。
D3までの805はバスレフダクトの共振周波数が50Hzに設定されており、駆動力のあるアンプを使うそこが出過ぎる傾向がある。小生が"最低域"と呼ぶのはバスレフの共振周波数に設定された50Hzの盛り上がりの事で、バスレフが更に低い周波数に設定されたトールボーイなどの場合どう変化するか興味深い。
一般的に低音と言う2〜300Hz以下に関してはケーブルが細くなっても絶対量に大きな変化は感じないので、低音の出過ぎを細いケーブルで抑えると言った使い方は出来ないと考えた方が良い。
特筆すべきは中域の解像度とスピード感がグッと上がったことで、正直ハイ側を細くした時より大きく音が変化した。
ハイに太過ぎるケーブルを使うと若干高域に翳りが見えるが、中域の変化の方が明らかに大きいところを見ると、中域の印象で太さを選ぶのが最も効果が大きいようである。
SAEC AC-3000(2sq)
写真左がAC-3000。右がOR-800の8sq。
これだけ多くのケーブルがありながら、高音用や低音用と銘打ってケーブルは少ない。小生が知る限り、これを行なっているのはクリプトンがスピーカーの内部配線用に開発したSC-HRシリーズくらいである。
こちらの場合、低域用が約3.6sq、高域用が約2sqとなっており、今回はとりあえずこの辺を参考に太さを選んでいる。しかし、クリプトンのケーブルは高域用8000円/m、低域用12000円と中々のお値段なのでお試しと言う感覚ではちょっと手が出ない。
saecのスピーカーケーブルは3.4sqより細いものとなると、1.4sqまで細くなってしまうのだが、そこで目を付けたのが同社の電源ケーブルPC-3000。構造はSPC-850と同じで太さが2sqとちょうど良い。
値段はSPC-850と変わらないのでこれを高域に使用しても良いのだが、せっかくなのでクリプトンの高域専用と同じ太さを検証したい。
買って来たPC-3000の被覆を剥いて見ると、その細さに驚く。8sqの1/4と言う事は直径で半分あるはずだが見た感じは直径が1/4程に見える。
あまりの細さに不安になるが、パワーアンプに電気を供給しているFURMANのタップのケーブルが2sqなので、これでも太さは十分なはずである。
繋いで見ると明らかにハイがふんづまっている印象で、やはり細すぎてハイ側の音量自体が控えめになってしまった印象。
しかし、映画一本見終わるとつつがなく高音が出ている事に気付く。
続いてボーカルを再生すると驚いた。
小生の求める音の一つに“気持ち悪いほどリアルな人の声"と言うものがあるのだが、まさにそれなのである。
OR-800は4万円程で、バイアンプする為に2ペアで8万円である。ケーブルはそこそこ良いものを買って“上がり”を決め込んでいた。
「前はもっと生っぽい声が出ていたような…」と常々感じていたが、まさかのスピーカーケーブルが原因とは思わなかった。
何かを変えて良くなった一方で失われたものがある事に気づかない事は多い。
極細ケーブルから出て来る音はとにかくソリッド、そしてアキュレイトである。
太めのケーブルを使うと”滲み”が出ていたことがよく分かる。理屈は分からない。しかし、定位は大きくなり、輪郭はボヤけ、声は肉付きが良くなる。耳あたりが良い代わりにシステムによっては美音に聞こえるかも知れないが、一方で細部のディテールは失われていた。
2sqのケーブルの音は、"その肉付き全て削ぎ落としたらこんな音です"って感じの音である。
↓その1
↓その3