新年だしコロナだしという事で、なんとなく攻めに気合いを入れにくいスタートとなった仕事環境。営業職ってそんなもの。
なんてのんびり構えていたら、次から次へと襲いくるトラブルや事故。

まず理不尽なクレーム客に粘着される事を皮切りに、寒波を食らったグンマーは、凍結による被害事故が各所で頻発。こうなると本来の営業の暇なんて無く、否が応でも現場を走り回らねばならないという、ある種の強制スイッチが入って2週間ほどが経過した。
一つの事案に着手している途中でまた別のトラブルが入ってくる雪だるま式の多忙が極まった昨日、ド早朝よりまさかの魔王が再降臨した。そう。一昨年の5月に初邂逅を果たして以降ご無沙汰だった、尿路結石様である。

こいつを一応王とするのは、海外では「キングオブペイン」なる二つ名を有することのみが理由だが、確かにその名に恥じぬほどの強烈で無慈悲な痛みをもたらす。奴との初戦では確か4時間ほど「ひたすら耐える」という手段で対抗したものの、ナニカの限界を感じて救急搬送というKO負けを喫した。脂汗でビチャビチャなTシャツのまま病院へ入り、受付での体温測定で34.3℃という異常な体温だった事だけが記憶に残っている。どうやらその後間もなく気絶したらしい。

そんな独特の痛みから昨日は瞬時に王の帰還を確信したものの、それはそれで究極の二択を発想。
①前回以上に気合いを入れ、耐久時間の自己ベストを狙いたい。
②いや間違いなく仕事に支障が出るから、病院へ直行しろ。
率直な気持ちは①だった。だってドMだもの。ある種「待ち侘びた」という気さえしたほど、奴へのリベンジを狙っていたから。
しかし早朝5時にこうなると、例え自己ベストを更新したとてその時点で仕事の始業時間を迎えてしまい、遅刻確定。またそこから気絶でもしようものなら、まず半日は潰れてしまうだろうと。こうなるとただでさえカツカツだった仕事スケジュールも益々厳しくなり、これは社会人としてアウトだろうと。
幸いにして頭は割と冷静だったので、自らの欲求を封じ込め、少々の葛藤だけで選択肢②に準ずることができた。

慣れとは怖いもので、医者が「まじすか?」と聞くくらい、普通に自分で車を運転して病院へ入った。実際結構な痛みはあったのだが、そこは背中に刃物を刺されて尚原付で病院に入ったという棚橋伝説の面白さを越えたい欲が勝ったので問題無かった。

医者の問診があり、点滴をされ、エコー機を当てられ、CT機に通された。全く前回と同様の対応だ。しかし今回は気を失うほどに体力を失っていた訳ではないので、そうした一つ一つにナニカ笑いを見付けられないかと集中するくらいには余裕があった。そんな無駄な発想が実るはずもなく、病院なんて笑いの要素が排除されている空間なんだけど。

そして今度はコチラが「まじすか?」と言うターンになったのは、新たな魔王の巣が発見された事。

前回は背中から腰に掛けての痛みは半身の右だったが、今回はソレが左側であるのは気になっていた。
腎臓に大きな結石が存在していて、そこから剥がれ落ちたカケラが尿路に詰まることで発症するのが尿路結石。言わば腎臓にある結石は、魔王の巣と呼んで語弊は無い。この結石が無くならない限りは常に魔王の襲来が起きても不思議でないとは認識していたが、まさか人体に2つしか備わっていない腎臓の両方がそんな巣であったとは。しかも医者曰く、「左の方が大きいですね」ときたもんだ。

この巣をやっつけてしまえば、取り敢えず不安に震える事も無くなる。なんか外部から超音波を当てて粉砕するというやり方があるらしいのだが、なんせわざわざ金と時間を費やしてスリルを失うのが嫌だった。不安に震えるというのは決して比喩では無いリアルな表現のつもりだが、ただ実際は嬉しさが多分を占める興奮で震えていたのだ。

また新たな二択が発生しかけて気を滅入らせていたら、今回はこのまま泌尿器科へ行けと。前回とは異なるミッションを課せられた。新イベントである。

泌尿器科。
営業開始時間に到着したにも関わらず、駐車場がパンパンだった。何かの間違いだろうと扉を潜れば、狭いフロアーに満タンのジジイがおりました。これまた比喩でなく、リアルに俺以外全員全白髪orハゲという純度の高いジジイオンリーの空間。
5人が横並びで腰掛けられる長椅子3本と臨時のシングルチェアーが4脚あったが、そこは当然ジジイのポジとなる。瞬間的にスペースが出来たタイミングもあったが、追加のおかわりジジイも後をたたず、まあ座れませんわな。
また多分そんな奴らがポンコツだからが原因なのだろうが、全然ジジイが減らないの。診療一人に掛かる時間がやたら長く、受付で「オシッコは我慢しておいてください」と言われてから全く俺のターンになる気配が無かった時間は辛かった。
また自分のターンに痺れを切らしたジジイがいちいち「まだですか?」なんて聞きに行くものだからロスタイムは延長を重ねまくるし、暇を持て余しまくった別ジジイは明らかな初見同士でどうでも良過ぎる雑談に興じていた。一応全員マスクは着用していたが、完全なるクラスター状態の上に飛沫付きのフルコースな環境から得るストレスたるや、膀胱のパンパン具合と共に軽く狂ってしまうかもと思った。座れないものだから、なんか階段でクネクネしていた。

結果的に、王の痛みよりその後の泌尿器科が地獄過ぎたので、もうこんな思いは嫌だと治療していくことにした。

これ、良かったの?