1mm happiness


■Basic data■


名前:荒木健太郎(あらきけんたろう)
生年月日:1990年4月10日 22歳
所属:天理大学国際文化学部ヨーロッパアメリカ学科イスパニア語専攻4年



■Questions■



1、現在の活動



○書道家


以前は路上での活動が多かったけど、今は看板や名刺への文字のデザインやお店の壁書きなどのお仕事をメインでしている。即興で書きあげたものを渡す路上とは違って、何種類もサンプルを書いてみてお客さんの反応やニーズに合わせて作品を創っている。


書道を始めたのは大学1回生のとき。
自分を表現する手段を持ってないことにすごく恐怖を覚えたことがきっかけ。
ずっとサッカーやってる奴にはサッカーがあるし、ダンスに熱中してる奴にはダンスがあるけど、俺にはそれが何も無いなあ、まずいなあ、っていう変な危機感があって。
「何しようかなー」っていろいろ探してた時期に、たまたま家の模様替えをする機会があって、昔からあるたてつけの悪いタンスを運んでたら、たまたま引き出しが抜け落ちちゃったんやけど、その中に筆が入ってた。それを見た瞬間、「筆で何かやってみたら面白いんちゃうかな?」って思って始めた。


ある先輩に「家で365日字を書くより、1日路上に出て人前でやったほうが上手くなるで」って言われたから、たいして練習もしないうちから地元の天理駅で紙と筆だけ持って、何も敷かず地べたに座って、「あなたの目を見てインスピレーションで言葉を書きます」って言うのを売り文句に書き始めた。初日から7人くらいに書いた。


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元々知ってる人に対して書くときも、思い込みとかイメージをとっぱらって思いついた言葉を書くようにしてる。
最初からどんどん言葉が浮かんできたわけではないけど、経験を重ねるうちに感覚がつかめるようになってきたし、「当たってる」ともよく言ってもらえる。直感で降りてきた言葉や、「どんなものを贈ったら目の前の人が元気になれるだろう?」ってイメージたときに浮かんできた言葉を書く。

今までに、4000人以上の人に書いてきた。


3年前の3月に、当時すごく有名な大学生だった倉崎憲さんと出会い、憲さんの写真展でブースを設けて書かせてもらったのがきっかけで、学生団体などのイベントでブースを構えさせてもらうことも増えたりと、ちょくちょく繋がりで依頼をもらうようになった。
去年9月にはカメラマンの子と一緒に初めての個展も開いた。中にはブログを見て福岡から突然やって来てくれた子もいてうれしかった。



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今やらせてもらってる仕事も、ほんまに繋がりから。

路上で出会った人から急に電話が掛かってきて依頼されたり、ブログを見て依頼してくれたり。

今はお世話になってる経営者の方が俺の口コミをしてくれてるおかげでいただける仕事も増えた。


ニーズに合わせて書くときは、自分が和紙に書いたものがスキャンされて看板になったりチラシになったりとカタチを変えて出来上がっていくのを見てるときが一番面白く楽しい。


路上の場合は、いろいろな人と出会えるのがいい。
1時間くらい長居する高校生が来たり、年配の人が声を掛けてくれたり。

たったの10分や15分間やけど、俺が書いたものを渡すことによって俺のことをずっと覚えててくれてるのはうれしいよね。壁に飾ってくれてる人も多いみたいやし。


でも、路上での活動は今年いっぱいで終わりにしようかなと思ってる。
ルール的にもあんまり良くないしね(笑)。
これからはショッピングモールとかでもやっていきたいな。

結局、相手の人にどうやって気持ち良く受けとってもらうかを考えて書くことが大事なわけやから、どこでおっても俺がやることは一緒。



2、好きな言葉


・「動かなければ、否定も賛同も得られない」
どんだけビビってても、結局何かを得ようと思ったら自分が動くしか手段は無い。
自分の中で閉じこもってたら何も起こらへんよ。
動いた分結果が出て、それではじめて周りの反応があるわけやし。
なんでもいいから自分の外に発信することって一番大事やと思う。
発信せなわかってもらえへんからね。


○大事にしてること


最近は、朝起きたら鏡を見て「荒木健太郎!今日も朝起きれてよかったなあ。愛してるよー!」って言ってる。恥ずかしいけど(笑)。
好きな人と一緒やったらどこに行っても何をしててもおもろいやろ。
けど、嫌いな人と一緒やったらどんだけうまいもん食ってもええ景色みてもたぶんあんまりおもしろくないと思うねん。
それとおんなじ原理で、自分のことが嫌いやったら、自分の行動や環境や周りの人のことを全部嫌いになってしまうと思うし、大事にできひんと思うねん。
逆に、自分のことが好きな奴って、自分の行動を認めて周りの人を大事に出来て人生を楽しめてると思うねん。だからもっと自分を愛するためにやってる。



3、自分の性格


○好きなところ


・ポジティブなところ
まあポジティブやね(笑)。
一度、夜中3時くらいに音楽を爆音でかけてチャリンコ飛ばして友達ん家から帰ってたら、道路の縁石にバコーン!って乗り上げて、チャリンコの前輪が壊れたことがあったんよ。

その場所は俺ん家まで歩いたらめっちゃ距離あるからちょっとへこみながらもチャリの前輪を上げながら歩いて帰ってたときに、「これでブログ書けば絶対おもろいやん!みんな笑ってくれる!これはおもろいこと起こった!」っていう発想にすぐ切り替わった。結局2時間くらい掛けて帰ったんやけどな(笑)


悩むことももちろんあるけど、まず考えるんは「そんなに大きい問題か?」ってこと。
すると楽になる。
あと、悩んでるときって、結局答えは心の中で決まってることが多い。
そのときに人に相談するのもきっと賛同してほしいだけ。
どうせ同じ答えを出すのなら、早く決断して進んでいきたいよね。


・聴き上手なところ
路上でおったら、「普通初めて出会った人に10分や15分で言わんやろ!」って話を話してくれる人がたくさんいたこともあって、聴くことに関してはかなり自信があったけど、最近「この人すごいな」と思う師匠ができた。その方はお世話になってる経営者の方やねんけど、相槌の種類がめっちゃ豊富!
あと、めっちゃ頭のいい人やねんけど、前にある人がしゃべりおわった後に、「俺が考えてたこととまったく同じこと言ってくれたわ!」って言ってたくらい、謙虚で相手を立てることのできる人。
聴き上手って結局、褒め上手やったりもするんじゃないかな。相手をいい気分にさせるってところに、聴き上手の本質があると思うし。



○課題


・否定されると反抗してしまうところ
「こっちのほうがいいよ」とか言われると、「そしたら俺は別の方で結果出したるわ!」って思ってまう。

どっちが効率的かとかを頭で判断できたらベストなんやろけど、「くっそー!」っていう感情に任せてやってしまう。もうちょい素直に聞けたらいいんやけどなあ。

人って、相手の変化をすごく嫌うし、他人が飛び抜けようとするのをすごく嫌がる性質を持ってるからな。日本人は特に。俺はそれがすごく嫌。
でも、空気の抵抗が無いと飛行機が飛べんように、否定も自分を前に進ませてくれる原動力やと思うし、否定が出てくるのは動いてることの証拠やから、応援してくれる奴も辞めろって言ってくる奴ももうちょい同等に見れるようになりたいなあ。。。



4、自分を漢字一文字で表すと?


「動」



5、人生のターニングポイント


○ハーフとして生まれてきたこと
よく冗談で、「俺は生まれたときにパッておかんの顔見て『親スペイン人かい!』ってツッコんだ」っていう話をするんやけど(笑)、まあ珍しいよな。
日本人の父親とスペイン人の母親を持つハーフなんやけど、ほんまに生まれたときから分かれ道に立たされてたんやなあって思う。
嫌やなあって思ったこともあるし、いじめられたこともある。
おかげで、小学校の頃から「自分って何なんやろ?」って考えることがすごく多かった。
「大学に行こうがスペインに行こうが結婚しようが、何十年経っても、俺はずっとハーフで人と違うんや」っていう気持ちがが何をしててもあった。でもそれが嫌なわけじゃなく、今は「自分はこれでいいし、これにしかなれない」って思いが強い。


○書道を始めたこと

書道を始めて、ずっと探してた、「おまえ何できるん?」って聞かれたときに「俺はこれができるで」って言えるものが見つかった。
書道を辞めようと思ったことや嫌になったことは特に無いかな。


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○大学3年の夏に、40日間スペインに行ったこと
2回生の秋、全然学校に行ってなかったから成績も悪くて、スペイン語の先生に「おまえ親スペイン人やのになんでできひんねん」みたいなことを言われて、すごく腹が立った。でもそれがきっかけで「もっとスペイン語を勉強しよう、もっとスペインのことを知ろう」って思うようになって、3回生の夏にスペインに飛んだ。
スペインに行くのは実はまだ2回目だった。
基本的にはじいちゃんばあちゃんの家で過ごしたり、地中海のバレンシアにある叔父さん家に泊めてもらったりと常に傍に家族はおる状態やったし、彼らに色んな場所へ連れてってもらったけど、俺にとっては衝撃的やったことも、向こうにとっては日常の光景で当たり前のものやから感動を共有できひんかったのが不思議やった。
スペインに行って、日本の製品の良さやきめ細やかさにも気付けたりと、日本と海外をちゃんと差別化して見れるようになった。



6、モチベーション


○上がるとき
・「情熱大陸」を見たとき
毎回チェックしてる大好きな番組。
有名な俳優さんが出てる回よりも、見たことも聞いたこともない職業の人が取り上げられてる回が好き。
この前、小説家で芥川賞受賞者の田中慎弥さんが出ててんけど、あの人って授賞式のときに「こんな賞は要りません」って言うたやんか。そんなん普通言う人おらんから、すごいなあって思う(笑)。
自分が考えの付かない思考を持ってる人の考え方をちょっとでも知れるっていうのがおもろいよね。

・音楽
朝起きてから夜寝るまでに音楽を聴いてない状況があんまり無いくらいに、びっくりするぐらい好き。

ライブハウスで音楽イベントを開いたこともある。
特に好きなのは10-FEET。
ボーカルのTAKUMAさんは人間的にもすごく魅力的な人。
「風」とかむっちゃ好き。


○落ち込んだときの対処法
どんちゃんするのが好きやから、人に会いに行ったり友達と飲んだりすることが多い。
その時に、自分の悩みとかについての話をするというよりかは、相手の波長に自分を引っ張りあげてもらう。
逆も同じ。俺が調子いいときに、たとえば愚痴を言う子が目の前におってもそれに引きずられたらあかんって思うからある意味聞き流すねん。

「そうやなあ。大変やなあ。」って同情したり共感したりするよりも、「俺は今絶好調で、こういうことがあって、こういうことを頑張ってるよ」って言うことによって、相手を出来るだけ俺の波長と同じ高さに持ち上げるっていうか。
空気だけでも上げれんねん。そこを底上げすることによって、帰るときには相手も勝手に元気になってることが多いよ。



7、好きなエンターテイメント


○本
・「やる気のスイッチ」/山崎拓巳
今の俺の考え方のきっかけになった本。
たとえば「フォーカスする」っていう話。
あるブランドの物を欲しいと思ったら急に街中でそのブランドの商品やお店ばっかり目に付いたりとかすることってあるやん。
人間ってほんまわずかの物しか見えてなくて、意識して始めて目に飛び込んでくる情報があると思う。チャンスも見つかりやすくなるし。 
この本を読んでから、色んな本をちらちらと読むようになった。

○映画
・「バーレスク」



8、尊敬する人や憧れの人


○尊敬する人
・子ども
彼らのエネルギーはすごい。たかが一年、二年しか生きてないのに俺らより何十倍もエネルギッシュだよね。
あと、疑問を全部ぶつけていく姿勢とか彼らの物の見方もすごいと思う。
俺の友達がテキ屋のバイトでたい焼きを焼いてたときに、ちっちゃい子どもとお母さんが来たんやって。

でもちょうどそのときストックが無かったらしく、「すいません、ちょっとお時間掛かるんですよー」って言ったら、おかあさんは「えーっ」って言ったらしいんよな。その一方で子どもは、「やったー!出来たてが食べれる!」って言ったんやって。
それ以来、友達はストックがなかったら「出来たてご用意しますんで」って言い換えるようになったらしいんけやど、そう捉えられる子どもってすっごいなあって思った。
めっちゃクリアやし、決め付けが無いよね。
結局勝手な常識を俺らが押しつけてるだけで。
もっと俺ら大人が子どもをのびのびさせる必要があると思うねん。


○憧れの人
・岡本太郎
「字は絵だろ。」っていう彼の言葉に衝撃を受けた。
彼の言ってることは次元が違い過ぎて、すごすぎて、理解できる域を超えてる。
・ガウディ
サグラダ・ファミリアなんかを手掛けた有名な建築家。卒論もこの人を取り上げて書いた。
元々めっちゃ貧乏やねんけど、建築の図面を書くバイトをしながら建築学校に行ってた。そうやってずっと勉強できる環境を自ら作ったのがすごいよね。
しかも、ガウディは最期、路面電車にひかれて死んでしまうねん。
「ハングリーにならへんかったら、すごい建築はできひん」みたいなことを言ってて、そのときもめっちゃ貧しい生活を自ら選んでしてた。
だから、ぼろぼろの布切れを着て倒れてる人がガウディってことを誰も気付かんくて発見が遅れたらしい。死に際まですごいよね。



9、未来について


就活生って明らかに負のオーラが出てる人が多いなって思ってた。
それもひとつの道やし悪いとは思わへんけど、俺はそれに引きずられる必要はないし、それやったら自分がいま出来ることをこれからも続けていく方がいいと思ったから就職って道は考えなかった。
「恐怖とか不安とかあるんちゃう?」って言われたりもしたけど、「絶対なんとかなる」って信じて決めて突っ切ると、2~3年は俺の面倒を見てくれる人や応援してくれる人との出会いがたくさんあったり、色んな考え方を知れたり、たくさんのチャンスをいただけるようになった。それでどんどん自信が付いてった。


○人生でやりたいこと
・人生を“夏休み”にする
夏休みってくっそおもろかったやん。
毎日わけもわからず早起きしてラジオ体操やプールに行って、とにかく何するにしてもすごいわくわくしてたと思うんよね。
「頑張る」っていうのは、力んで堅くなってしまう感じがしてあんまり楽しくない状態やとおもうから、俺は、もっと右脳の部分で「わくわくするかどうか、楽しいことかどうか」をすっごい大事にしてる。

・スペイン・イビサ島に行く
泡が天井から降ってくるクラブがあるらしく、そこに行きたい。
・ヨーロッパで書道活動をする
日本ってヨーロッパからしたらそれだけでブランドやから、日本の良さをうまく書道で表現していけたらと思う。
向こうですぐにカタチにするのは難しいと思うから、それまでにある程度権利収入をつくっていきたい。


昔は、ビジネスの視点なんてまったく持ってなかった。
けど、このままアーティストとして何も考えずに感覚に任せてやってったら、そこらへんで野垂れ死んでしまうなって思って、自分の好きなことをしていくためには外せへんことやってやっと気付けた。


○理想の人生


単純に楽しいこととかおもろいことを一緒に創っていけるメンバーが周りにいたら幸せかな。今は理想がカタチになりつつある。


俺、葬式なんかしてもらいたくなくて。
代わりにビールかけしたり、めちゃくちゃええ感じのミュージックに合わせてみんなが踊り出すような、くっそあほみたいなパーティーを開いて見送ってほしい。


今も否定や批判を受けるときはあるし、それは今後も変わらんやろうけど、死ぬ時に、一点の曇りもなく「最高やったなあー!!!俺がやってきたことはやっぱり間違いじゃなかった!!!」って思いたいね。




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Blog→「あらっちょのちょっとした日記」



■My note■




あらっちょと初めて出会ったのは、大学1回生の3月。倉崎憲さんの写真展に行った時のことだった。
そのときの私はというと「他にやりたいことが見つかったから」と入っていた演劇サークルを退部し、年明けから色んなイベントに顔を出して見かけは充実していたものの、ひとつのことに集中して取り組めてない分、居場所が無いような感覚を抱いていて、常に内面は不安定だった。
しかも、同じ時期にサークルの先輩の卒業公演を観に行ったときに、お世話になっていた先輩から「がんばっとんか?」って言われて「はい」と答えながらも心からそう思って返事が出来なかった自分にすごく嫌気が差していた。


そんな不安定な時期にたまたま告知を見た私は、この写真展に足を運んだ。
ギャラリーに飾ってある写真を一通り見た後、ブースを構えていたあらっちょに言葉を書いてもらった。
じっと私の目を見つめた後、イヤホンを耳に突っ込み、音楽にノリながら彼はすらすらと言葉を書き上げた。
出来上がった書を受け取ると、そこに並んでいた文字は私の弱さや孤独や自信の無さなどそのときの精神状態を見事に掬い取ったもので、でも希望と安心をくれるもので、驚いた。彼には見透かされていた気がした。
その後も、イベントでお会いしたり、ときどきブログにコメントをくれたりしていて、縁が続いていたあらっちょのお話を今回聴かせてもらうことができた。


あらっちょは、一見いかにもパッション!!って感じの人に見えるけれど、実際に話してみるとそんなことは無くあったかーい温度の持ち主。
すっごくオープンで、おもしろくて、一瞬一瞬の感覚を大事にしながら言葉を紡ぐ人。
そして、「人生楽しんでるなあー!」っていうのが全身から伝わってくる人。「生きてる」って感じがする。


彼の書いた言葉は、時に人の心を救い、人に勇気を与える。
それは、きっと彼がいい言葉を知っているからではない。彼の書がうまいからだけではない。
彼の生き様が真剣だからだ。
だから、皆の心へ響くんだ。


人生を謳歌するために、彼は今日も本気で生きている。
可能性に満ちた、仕事道具で相棒の筆を片手に。