■Basic Data


名前:東海林大樹(しょうじだいき)
生年月日:1988年8月15日 25歳
所属:某市体育協会



■Questions



1、 現在の仕事



紆余曲折あって、2013年8月に市の体育協会に正規採用された。
大学でスポーツビジネスの勉強をしてたから、いつかはスポーツに関わる勉強をしたいなと思ってた。でもやっぱり狭い業界やし、新卒でいきなり入れるところでもないから、転職で入れたらいいかなーと思ってた。けど、タイミングや縁が重なり入ることができた。


協会の仕事は大きく分けて2つあって、1つは市内の公共体育施設の管理・運営。
もう1つは市の教育委員会内のスポーツ担当部署と市民向けにスポーツの機会を提供する、市民スポーツ団体・クラブが活動しやすいような枠づくり、が主な仕事。

だから、最前線に立つのはあくまで市民の人たち。

彼らが自主運営でスポーツを通じたコミュニティづくりを進めていけるよう、裏方として支援することが体育協会の役割。


具体的に言うと、1つ目の管理の仕事に関わるキーワードは、「指定管理者制度」。10年ほど前にできた制度で、今までは都道府県がおこなっていた公共の施設の管理・運営を民間に代行させることでうまく回していくのを目的にしている。
たとえば指定管理を募集した体育館があったとしたら、そこに対して色んな企業や団体から入札がある。そこで提案をして受け入れられたら、何年間かの契約を結んで、毎月支給される指定管理料をもとに自由に運用していくことができる。委託よりはもう少し裁量権がある感じかな。うちの協会は市内のスポーツ施設の指定管理者になっているから、その運営に携わってる。



2つ目の仕事に関わるキーワードは、「総合型地域スポーツクラブ」。
10年以上前から、国が「スポーツをもっと積極的におこなうべきだ」って言い続けてきてて、「2010年には国民の50%以上が週1回はスポーツをおこなえる環境づくりをするために、総合型地域スポーツクラブを各市町村に一個は設置しましょう」っていうのがスポーツ振興基本計画の中で定められてる。
「総合型」っていう言葉は、多種目・多世代・幅広いレベルのことを指してる。かつ安価に気軽にスポーツができるような環境の提供を最終的な目標に掲げてる。だから、主に小中学校の施設が有効活用されている。


総合型地域スポーツクラブを充実させることは、コミュニティを活性化させることにもつながる。「自分の地域にどんな人が住んでるのか」を知ってれば、災害時にも助け合えるし、クラブの責任者が普段から利用してる学校の鍵を持っていれば、避難所にするときにすぐ鍵が開けられるというメリットがあるし、何より地域の人が集まって何かできる場を提供することに意味があるんじゃないかな。


うちの市にも総合型地域スポーツクラブが幾つかあって、一応その担当をさせてもらってる。

あくまで主役は市民の皆さんだから、自分たちが主導になりすぎてはいけない。

「こういうことやりたいねんけど、体協なんか情報知らへんか?どうしたら実現できると思う?」って相談してもらえるようなサイクルをつくったり、クラブ同士で情報交換してイベントを実施するサポートなんかができれば理想やなあ。



2、 好きな言葉や大事にしてること


自分の周りの人を大切にしようと思っている。
出会ってきたたくさんの人たちの中で、今でも連絡をとり続けてる人は限られてるから。 
自分の一つひとつの行動によって、その人たちが自分に持ってくれてるイメージを悪い意味で裏切りたくないと思うし、そこは気を付けてる。
それと、その人たちのことをもっと知ってそこから何かを学ぶこと。自分と同じ人はおらんわけやから、誰からでも何かを得ていきたいな。


あとは、「大丈夫」という言葉。
今まで、わりと順調に、苦労もせずそこそこの成績や結果を出せてきたから、周りからも「お前なら大丈夫やろ」って言われることが多かった。
けれど、大学5年生のとき、留学から帰ってきた時期が遅く就職活動に十分な時間が割けなかったこともあって、結局就職が決まらずに春を迎えた。
その後も友達に会うたび、「大丈夫」って言われてたけど、やっぱり誰に言われるか、言われたときに感じ取れる相手の言葉の重みから、それが本音かどうかわかるし、「大丈夫」にも重みがあるなぁと感じた。


「なんやかんや大丈夫やろ」って言われ続けられるような見方をされたいなと思うし、自分も相手の立場や心情をくみとったうえで、安心感のある「大丈夫」って言葉を掛けてあげられる人でありたい。



3、 人生のターニングポイント


○スポーツの持つチカラとの出会い
小学校入学前に引っ越してきたので、最初は全然友達がいなかった。
せっかく仲良くなった友達とも小3のクラス替えで離れてしまってなかなか馴染めずにいたある日の放課後、クラスメイトの2人が野球に誘ってくれた。
行ってみたら、キャッチボールの経験があったからかそこそこ活躍できて、「すごいやん!」って周りに認められるようになった。
「しゃべることが苦手でも、スポーツを通じて友達と仲良くなれたり、自分を認めてもらえることはできるんだ」というあのときの気持ちは、あれからずっとスポーツに関わっている自分の原点。


○スポーツに年齢は関係ない!
大学のときに市内のソフトボールチームに入ってたんやけど、そこは高校生から、70歳のおじいちゃんまで幅広い年の人が所属してるチームだった。
そこで、「何歳になっても若い人と年齢関係なくスポーツできんねや!」って気づきも大きかったんやけど、一番印象的だったのは、ある日60歳以上の人しか所属できないチームと対戦した時のこと。
向こうのチームのファーストと、うちのチームの高校生が実のおじいちゃんと孫だった。だから孫が出塁したときベース上でなんか仲良さげに話しててん。
「自分がおじいちゃんになったときに孫とキャッチボールできたらいいなあ」とは思ってたけど、「孫と対戦することもできるのか!それいいなぁ」って思って、年をとっても楽しめて色んな交流ができるスポーツの良さを改めて感じた。


○大きなワクを持った先生
中3の担任の、W先生。
最初に紙を配って、「呼ばれたい名前を書いてくれ」って言って生徒のことをあだ名で呼んだり、「教室では『Wくん』って呼んでいいぞ。その代わり職員室では呼んだらあかんぞ!」って言ったりと、とにかくフレンドリーでおっきな心を持った先生だった。
自分が間違ったことは素直に謝れるところもすごく素敵だった。
卒業式のときに、「俺の中ではきっとこのクラスを超えるクラスは無いから」って言って以来、担任を持ってない先生。
中学のときから、かっこいいと思える大人のモデルに出逢えたことは大きかった。
「こうなりたいな」っていう理想像が一個あったから、いつも「W先生に近づくには、許容できる枠を広げていくにはどうしたらいいんやろ?」って考え続けられてる。


○広い世界を見ろ
大学2年のときに、学校のプログラムでハワイに一週間、旅行兼研修に行った。
リゾート地だからかもしれないけど、「働いてる人がすごく楽しそうでいいなあ」と印象に残った。帰国後、関空からの帰り道、電車で目の前に座ってたサラリーマンは全員疲れててだらしない様子で座ってた。「自分もこんな風になるのかな」と思ったときに嫌だと感じて、「働くこと」や「日本の労働環境」に漠然と違和感を覚えた。


その翌年、アメリカに語学留学をした。元々スポーツ観戦をしに旅行に行こうと考えてた。でもたまたま、語学試験なしで単位のもらえるアメリカへの語学留学制度を知った。昔から英語が大嫌いで苦手やったからこの制度はラッキーやった(笑)目的は英語さえできればアメリカでも生活できるかを試すため。それができれば、必死に英語勉強してアメリカの大学でスポーツビジネスの勉強するのもありやなって思ってた。


留学中に気付いたのは、「違いがあっていい」「一個の価値観で凝り固まることはもったいない」「違いをわかったうえで自分の意見を言うことは大切だ」ということ。
授業で毎回「what do you think?」って聞かれて、自分の考えを言葉にする、相手の考えを聞く回数が日本にいるよりすごい多かったから。





○もがいた2年間
アメリカに行った結果、「もっと海外で勉強したい」って思いが募って、長期で海外の大学に行くなら就職する前にするのがいいと思ってそこから準備して、どうにか基準をクリアできたので、大学5年生のときに10か月間オーストラリアに留学した。
留学中は、授業についていけなくて、消極的になってしまい、友達もほぼできなかった。
今まではそこそこ成績が良くてあまり苦労しなかったから、そのときに初めて授業についていけなくて勉強が嫌になってしまう人の気持ちがわかった。
すごくしんどかったけれど、「授業は休まない、逃げない」ってことだけは決めてやり切った。「なんにも出来ひんときに、どう行動するか。その中から、どうやって自分ができることを探していくか」を学生の間に経験できたのはよかったって今は思う。当時はただただきつかったけどさ(笑)


帰国後、就職活動をしたけどなかなかうまくいかず、決して“大丈夫”な状態ではなかった。どこをどう改善したらいいかわからへんくて、自分でも何が悪いのかわからんまま落ち続けたことは苦しかった。
だからこの期間は、それまでに経験できひんかった感情や出来事にひたることができた。
しんどかったけど、前よりは少しだけ、いろんな人の気持ちが理解できるようになったと思うから、必要な時間やったんやろうなぁ。


○毎日が『ターニング』ポイント
こうやって話していくと自分の『ターニング』ポイントいっぱいあるなって発見できたわ。最後にその最大というか最長で現在進行形の『ターニング』を。
小6からずーーっと仲がいい相棒的存在のやつがいんねんけど、そいつと過ごす時間は常に『ターニング』やわ。自分とは性格が真逆やねんけど、お互いが大切にしているベースというか常識が似てるからいやじゃないねん。

だからこそ、同じものを見てもやつの話すことを聞くと、「なんでそんなこと思うんやろ?なんでその見方するん?」って、自分との違いを常におもしろがれる。だから、結局やつとの間にどういうことが起こってもたいがいはおもしろがれるし、自分の中で新鮮な感覚になれるから、『ターニング』がすごく強い。『ターニング』ポイントって何か今までの考えとは違った影響をもらった起点ってことやと思うねんけど、そういう意味ではやつの存在自体がほんまに『ターニング』!!





4、 好きなエンタメ


○本
・井上雄彦作品:「スラムダンク」「バカボンド」「リアル」
本質的で言葉一つ一つに重みがある。
バカボンドは人を斬る話だから、「書くには人を斬る気持ちや斬られる気持ちがわからないとストーリーや表情が書けない」と井上さん自身がどこかで書いていた。
そこまで自分を追い込んで絞り出しているから、体調を崩して何度か長期休載してるほど。そこにプロの姿勢を感じる。


・羽海野チカ作品:「ハチミツとクローバー」「3月のライオン」など
色んな人の生き方や感情が交錯し、それぞれが葛藤するも最終的には前向きに進んでゆくところが好き。


・「宇宙兄弟」
グッと来るセリフが多い。どんな状況でも前へ前へ進んでいく登場人物の姿に、勇気をもらえる。


■好きな作家
伊坂幸太郎・朝井リョウ・森見登美彦・金城一紀・万城目学

小さいときから絵本に囲まれてたし、小学校の読書感想文を何冊分も書いちゃうほどの本好きだった。
図書館には今でもよく通ってる。
最近お気に入りの本屋さんは、阪急水無瀬駅の長谷川書店さん。
町の本屋さんって感じやけど、全体の2~3割くらいは「おっ!このチョイスいいな!」と思うような本が置いてあって、棚の構成も好みに合ったし、店長さんがね~「なんか」良いねん。
本を読むときの、ここではない世界をのぞき見るワクワク感が大好き。


9月には仕事旅行社のブックセレクターの仕事を体験する旅に参加した。

実際にその仕事をしている方の一日に密着して、その方の想いや出版業界の現状を聞き、神保町で古書を自分で選んで買ったあとに、磨いて包装して値付けしてカフェの書籍販売スペースに1ヶ月置かせてもらうってことを体験した。


年間何万冊と本が出版されてる中で、その一冊の本と出会える確率ってすごく少ない。
その出逢いのきっかけを演出する仕事は素敵だなぁと思ったし、自分が良いと思ったものを気に入ってもらえる喜びはすごいなって発見した。だから、この旅以降、本一冊一冊を前より大事にできるようになったし、そんな本を読んでない人はどうやったら好きになってくれるんやろ?って考えるようになった。





○映画
・「ノッティングヒルの恋人」
自分が初めて衝撃を受けた大好きな作品。
ストーリーとしては、しがない小さな本屋さんを営んでいる男性とハリウッド女優が、偶然出会いお互いに惹かれ合うも、立場の違いもありすれ違う、、、といった風に展開されるラブストーリー。
この作品のジュリア・ロバーツよりきれいな人はおらんやろなあって思う。
男性が夢を描けるストーリーだし、どんなに立場が特別な人でも本質はみんなと何も変わらないただ一人の人であって、好きな人に気持ちを伝えるときには不安やし涙も出るんだよってところを等身大に描いてるところに毎回グッと来る。


・「ビッグ」
トム・ハンクス主演で、少年の「早く大人になりたい」という願いが叶ってしまう作品。
友人が原因究明をしている間、主人公はおもちゃ会社で働くことになるねんけど、中身は子どものままやから、大人が「くだらない」って言葉で片付けることを真っ直ぐ主張して超言い合いになるねん。
周りの大人との対比も面白いし、「そういう純粋な子どもの気持ちや疑問を持ち続けて生きていきたいな」って思わせてくれる。


・「GO」
主人公はが在日韓国朝鮮人のため差別される話なんだけど、そこに反骨心を持って立ち向かう様がかっこよくて、「相手を見た目で判断せず、ちゃんと中身を見よう。何人であろうが、どんなバックグラウンドを持っていようが、それは重要じゃない」って思えた。


・「ラブアクチュアリー」「ニューイヤーズイブ」「バレンタインズデイ」
それぞれ順に、クリスマスのロンドン、大晦日のニューヨーク、バレンタインのロサンゼルスを舞台にした群像劇。それぞれの場所らしさや、その日が持つイメージをそのまま描いてる。登場人物がそれぞれ知らない所で影響しあって少しずつ話が進み最後にはうまくまとまっていく感じが大好き。それぞれの季節には毎年見たくなる。



5、尊敬する人


「尊敬」って、自分の中では重たい言葉で、「その人がAっていうなら私もA」って言っちゃうような関係性なんじゃないかと思ってて、それはよくないんじゃないかなーと。
尊敬しすぎると、その相手が絶対で、自分の頭であんまり考えへんくなっちゃうんじゃないかなーって気もするから、たとえ同じ意見でもワンクッション置くようにはしてる。


そんな中で、最近「この人すごい!」と思ったのは、ジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さん。
「風立ちぬ」の制作期間のときに、NHKの「仕事ハッケン伝」っていう番組で鈴木さんが取り上げられてたんやけど、仕事に対するスタンスが自分の信じてることと似てて惹かれた。プロデューサーは、資金調達とかコピーの考案まで幅広く取りまとめていかなきゃいけないから、仕事が一人で完結できないらしい。
だから、「いかに仕事って気持ちを忘れさせて、祭りをするようなイメージで周りを巻き込んでいくか」が大事だって言ってた。


それに、鈴木さんは「絶対どんな人でも必ず1個はいいところがある。だから、プロデューサーとして色んな人と接する中で、相手のいいところを引き出せなかったら俺の負け。それを引き出すのが俺の仕事。」って考えを持って目の前の人の才能を信じ切っているスタンスがすごくかっこよかった。
自分も、教えることや、人が成長するプロセスを見ることや、何かをおこなうときに皆の適正を見てメンバーの配置を考えることが好きなので、重ねて見ることができた。



6、未来について


○やりたいこと


・仕事以外のコミュニティに踏み込む
・本に関わることをなにかしら行う
・国内外へスポーツ観戦に行く(メガスポーツイベントから地域スポーツまで)
・自分の行動範囲をもっと知る
・『何か』を育てる(対象は限定しない。人でも、植物でも、動物でもいい。)
・想っていることをカタチにする


今までを振り返ってみても、自分のためだけに頑張ることは苦手だなあって思う。
誰かのために何かをしているときが、一番いろんなアイデアも浮かぶし何より自分が楽しいから。
「相手に対して、今自分が何をしなければいけないのか」を考える状況を意図的につくった方が、自分は成長できるような気がする。



死ぬときに、「最後まで『自分の名前通りにありたい』という姿勢を持ち続けられた」と思えたら満足だと思う。あとは、生前から死ぬことに対してちゃんと向き合いたいな。
周りから、「あいつ体調悪いみたいやけど、なんやかんやで大丈夫やろ」って言われてる中、死にたい(笑)。そしたらきっと、「あいつががんばって無理やったんやから、しょうがないな」って納得してもらえると思うから。深刻に心配してほしくないんよね(笑)


とにかく、「大樹」という、名前の通りに生きたい。
自分がおっきく成長すればするほど、その大きな樹の陰に入ったり、寄り添える人も増えるしね。そうやって自分の周りに寄り添い合いたいと思える人を増やしていきたい。



 


■My note


しょーじさんと出会ったのは、もう3年以上前な気がする。
でも挨拶程度しか交わしたことがなくて、今回はじめてゆっくりお話を聞くことが出来た。


会うまでも、会ってからも変わらない印象は、もっのすごくマメ!ってこと。
レスポンスが早く、どんなに小さな返信やコメントひとつにも手を抜かない印象がある。
あとは、とっても物腰が柔らかい。
それはおそらく、いろんな価値観に触れてきて、どんな色に対しても染まれる(そのために興味を持てる)土壌を持っているからだと思う。


色んなストーリーに耳を澄ませられる優しさを持った大きな樹は、
いろんな経験を養分にして、
これからも天に伸び地に大きな根を張っていくことだろう。