【R3司試再現】民事系 | ついたてのブログ

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弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

民事系第1問

第1 設問1

1 ㋐におけるCの主張の根拠

Dは、Bとの間で代物弁済契約(482条)という取引行為をしている。Dは、指図による占有移転(184条)により動産甲の占有を取得した。Dは、占有取得時に善意・無過失であった。よって、Dは、甲の所有権を即時取得する(192条)。

2 ㋑におけるAの主張の根拠

指図による占有移転は、「占有を始めた」(192条)に当たらない。

3 上記CAの主張の当否

元の所有者が間接占有(181条)を有する場合には、指図による占有移転は「占有を始めた」に当たらない。

Aは、Bに対して、甲に関する契約を締結する代理権を授与していない。よって、Aは、甲の間接占有を有していない。したがって、指図による占有移転が「占有を始めた」に当たり、上記Cの主張が妥当である。

4 ㋒におけるAの主張の根拠

甲は盗品であり、Aは、令和2年4月10日から2年間回復請求できる(193条)。

5 上記Aの主張の当否

Bは、土木業を営む者であり、工作機械甲と同種の物を「販売」する商人(194条)に当たらない。よって、Aは、甲の代価を弁償することなく甲を回復できる。したがって、上記Aの主張は妥当である。

6 以上より、請求1が認められる。請求2は、不当利得に基づく返還請求権(703条)を根拠とするものである。Cは、善意占有者であるから、果実に相当する使用利益相当額を取得する(189条1項)。よって、請求2は認められない。

第2 設問2

1 (1)について

契約①におけるEの債務の内容は、令和3年6月から10月までの5か月間、Aの事業所にて出張講座を開設し、週4日、授業を行うことである。契約①は、AがEに対し法律行為でない事務を委託し、月額報酬60万円を支払うことを内容とするので、準委任契約(656条)の性質を有する。また、契約①は、令和3年の乙検定の合格者数に応じた成功報酬をAがEに支払うことも内容としている。この部分は、仕事の結果に対し報酬を支払うことを内容とするものであり、契約①は、請負契約(632条)としての性質も併有する。

2 (2)について

(1) 請求3は、656条・648条3項2号を根拠とするものである。令和3年8月31日に、AがEに対し契約①を解除する旨の意思表示をしており、契約①は同日に終了した(656条・651条1項)。よって、648条3項2号に当たり、請求3は認められる。

(2) 請求4は、同年9月及び10月分の報酬相当額を損害として賠償請求するものである(709条)。しかし、上述のように、同年8月31日の時点で契約①は終了しているので、上記損害は生じない。よって、請求4は認められない。

第3 設問3

1 (1)について

(1) 500万円全額について

Hは、弁済期を令和10年4月1日として契約②を締結しており、同日から権利行使できることを知ったといえる。請求5の時点では、同日から5年の消滅時効期間が経過している(166条1項1号)。もっとも、令和10年6月20日にAがHに本件債務の弁済の猶予を求めており、承認による時効の更新が生じている(152条1項)。しかし、連帯保証人Fは「承継人」(同条3項)に当たらないから、更新の効果はFに及ばない。よって、Fは、本件債務の消滅時効を援用して(145条)支払いを拒むことができる。

(2) 丙の売買代金100万円分については、同代金債務は被保証債務に含まれないので、支払いを拒むことができる。

2 (2)について

Fは、Aに対して、300万円を求償できる(462条1項)。

(1445字)

 

民事系第2問

第1 設問1

1 本件連帯保証契約は、362条4項2号及び356条1項3号・365条1項に反し無効である。

2(1) 主債務の額5000万円は、甲社の資本金1億円の半分、平成28年事業年度の経常利益2000万円の2,5倍にも達する額である。よって、本件連帯保証契約の締結は「多額の借財」(362条4項2号)に当たる。

(2) したがって、同締結には甲社の取締役会の承認を要するが(同項柱書)、Aは、同承認を受けないで同締結をしており、同項柱書に違反する。同項柱書違反の行為は原則として有効であるが、取締役会の承認を得ていないことにつき相手方が悪意又は有過失の場合は民法93条1項但書を類推適用して無効となる。

乙社の主観的事情は、代表取締役であるBについて判断される(民法101条1項)。Bは、甲社の資本金や経常利益を確認しており、甲社の取締役会の承認を要することにつき悪意である。もっとも、Bは、同承認を得ていないことにつき善意といえる。しかし、BがAに対して取締役会の議事録の写しを要求したのにAは本件確認書の交付にとどめており、同承認が得られていないのではないかとの不審事由が認められる。よって、同承認が得られたか否か調査確認する義務がBに認められる。ところが、Bは、同義務を尽くさずに本件連帯保証契約を締結しており、Bに過失がある。よって、乙社に過失があり、本件連帯保証契約は無効である。したがって、上記主張は妥当である。362条4項2号違反の主張により甲社の目的は達せられるから、356条1項3号・365条1項違反の主張は検討しない。

第2 設問2

1 本件株式の株主の地位はCに帰属する。

2 誰が株式引受人となり、払込みにより誰が株主となるかは、私法の一般原則に従い、諸般の事情を総合考慮して社会通念により決せられる。

本件株式の発行に際し、CがAに対し、多少の株を持っておく必要があること、金のことは心配しなくていいことを述べたが、それ以上のやり取りはされなかった。よって、かかるやり取りは決め手とならない。本件株式の株主名簿上の株主はAである。しかし、払込金2000万円は全てCの貯金によって賄われた。資金拠出者がCであることは、本件株式の株主がCであることの証拠となる。また、本件株式に係る剰余金配当は、C名義の銀行口座に振り込まれた。本件株式の株主がAであれば、Aは異を唱えるはずであるが、Aはそうしていない。そして、剰余金配当についてはCの所得としてCが確定申告をしていた。この事実も本件株式の株主がCであることを推認させる。以上を総合考慮すると、本件株式の株主の地位は社会通念上Cに帰属するといえる。よって、上記主張は妥当である。

第3 設問3

1(1) CがGの出席資格を否定したことは、決議方法の法令違反の取消事由(831条1項1号)に当たる。

(2) 甲社の定款には、議決権行使の代理人資格を甲社株主に限る旨の規定がある。同規定は、株主総会が非株主により攪乱されることを防止するという合理的理由による相当限度の制約であり、有効である。ただし、非株主を議決権行使の代理人とする必要性があり、株主総会が撹乱されるおそれが低い場合は、当該定款規定の適用が排除される。

Dは、AとCがもめていることを知り、一方にのみ肩入れすることを避けるため、Gに議決権行使を委任した。DがACの直系尊属であることからすると、かかるDの心情は理解できる。そして、丙社は株式会社であるから丙社を代理人とすることは事実上困難である。そうすると、非株主Gを代理人とする必要性がある。Gは弁護士であり、株主総会を撹乱させれば懲戒処分を受けるおそれがあるから、同攪乱のおそれが低い。よって、上記定款規定の適用が排除される。したがって、310条1項が適用され、Gは議決権行使できる。上記Cの措置は同項に違反する。よって、上記主張は妥当である。

2(1) Cが丙社の議決権行使についてAによる投票を無効としたことは、決議方法が310条1項に違反するという取消事由に当たる。

(2) Fは、丙社の代表取締役であり、丙社を代表する権限を有する。よって、Fによる投票は、丙社の議決権行使として有効である。そうすると、丙社の議決権行使として、AとFの投票が併存することになる。この場合、Fによる投票のみが有効である。なぜなら、時間的に後に行われた投票は、一般に株主の真意を反映している可能性が高いし、それより以前に行われた投票を撤回したといえる。また、Fによる投票が丙社の内規に違反する点については、内規は外部に明らかでない。よって、内規違反を重視することは、会社をめぐる法律関係の安定を害するおそれがあるから、控えるべきであるからである。したがって、上記主張は妥当でない。

(1954字)

 

民事系第3問

第1 設問1

1 課題1

(1) 引換給付判決をすることができない場合にすべきことになる判決は、請求棄却判決である。

(2) Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決の既判力は、本件建物収去本件土地明渡請求権の存在について生じる。これに対し、上記請求棄却判決の既判力は、同請求権の不存在について生じる。

(3) 上記引換給付判決は、Xが申し立てていない事項について判決をするものとして、246条に反するとも思える。しかし、同条の趣旨は、審判対象の決定権を原告に委ねる点にある。また、同条は、被告に対する不意打ち防止の機能を有する。そこで、原告の合理的意思に反せず、被告に不意打ちとならない場合には、引換給付判決をすることが許される。

Xは、本件建物収去本件土地明渡請求権の不存在の既判力を受けるよりも、上記増額した立退料の支払の負担を受けてでも、同請求権の存在の既判力を受けることを望むと考えられる。よって、上記引換給付判決は、Xの合理的意思に反しない。また、立退料が増額される点でYに有利であるから、Yに不意打ちともならない。よって、上記引換給付判決をすることは許される。

2 課題2

Xは、1000万円という額が、早期解決の趣旨で若干多めに提示したものであって、早期解決の目がなくなった以上、より少ない額が適切であると思っている旨陳述している。そうすると、Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすることは、Xの合理的意思に反しない。また、1000万円という額が若干多めに提示された額である以上、より少額の立退料であってもYに不意打ちとまではいえない。よって、上記引換給付判決をすることは許容される。

第2 設問2

訴訟承継制度の趣旨は、相手方当事者の権利関係の安定を図る点にある。そして、引受承継人に対し、被承継人の訴訟状態を承認する義務を負わせる(50条3項・49条1項)ことが許される根拠は、承継人が被承継人に実体法上依存する点にある。そこで、「承継」(50条1項)とは、訴訟物に関連する実体法上の地位の承継をいう。

Zの本件建物賃借権が存続するためには、本件契約が存続していることが前提となる。よって、Zは、訴訟物に関連する実体法上の地位を承継したといえ、「承継」をしたといえる。

第3 設問3

1 課題1

(1) 「時機に後れた」(157条1項)とは、訴訟のより早期の時期に提出できたことをいう。

Yは、Bから、亡くなる直前に、本件契約の際に権利金としてAの口座にかなりの額を振り込んだこと、本件通帳をきちんと保管しておくことを伝えられていた。また、Yは、本件訴訟の前にも本件通帳の中身を見てBからAへの振込みを把握していた。そうすると、Yは、弁論準備手続が終結する以前の時期に本件新主張を提出できたといえる。よって、「時機に後れた」に当たる。

(2) 「訴訟の完結を遅延させる」(同項)とは、当該攻防方法を提出した場合としなかった場合との訴訟の完結時期を比較して判断する。

本件新主張を提出しなかった場合、最終期日で訴訟が完結したといえる。これに対し、本件新主張を提出した場合、Aの証人尋問を実施するために改めて期日を指定する必要がある。よって、本件新主張を提出した場合、「訴訟の完結を遅延させる」に当たる。

(3) XがYに対して弁論準備手続終結前に本件新主張を提出できなかった理由の説明を求め(174条・167条)、Yが合理的理由を説明できない場合、Yの「重大な過失」(157条1項)が推認される。

2 課題2

(1) 上述のように、ZはYの訴訟状態を承認する義務を負う。そうすると、①である以上、②についてZによる本件新主張は却下されるべきである。

(2) 承継人に訴訟状態承認義務を負わせる前提条件として、被承継人が適切に訴訟追行していることが必要である。なぜなら、被承継人による不適切な訴訟状態まで承認しなければならないとするのは承継人に酷だからである。

上述のように、Yは、BからAへの振込みを把握していた。ところが、Yは、本件訴訟においてそれほど需要なものとは思わずに本件新主張をしておらず、適切な訴訟追行をしていない。よって、Zは、上記承認義務を負わない。

(1732字)