ピンポーン……。
夜の11時、インターホンがなった。
お風呂から上がって、髪を乾かしてお肌のケアして。
ベッドに横になったときだった。
「………誰。」
ボソッと呟く自分の声が不機嫌なのがわかる。
でも、相手はわかりきっていた。
ピンポンピンポンピンポン…
ああもう……出ればいいんでしょ。
近所迷惑になってしまうと思いつつドアを開ければ、そこにいたのはやっぱりこの男だった。
「…とりあえず入って。」
中に通せば、我が物顔でソファに座る。
一言も喋らずに。
「……来るのはいいけど連絡して。
それに近所迷惑だから何度もインターホン押さないでよ、隼人。」
「……寝てた?」
「寝てたよ。」
やっと喋ったと思ったらこれ。
とりあえずココアを淹れ、隼人の前に置く。
「……で、今日はどうしたの?
また彼女に愛想つかされたの?」
そう問えば、無言で睨まれる。
図星か。
「あんたが前の女ズルズル引きずってるからでしょ。」
「…うるさい。」
…本当は知ってる。
引きずってたのは隼人じゃなくて女の方。
その女と付き合ってたわけでもないのに隼人は優しいからそんな勘違いされて。
それに……
「大事な彼女だったんでしょ?」
呆れられた彼女のこと、隼人がどれだけ大事にしてたかも。
知ってる。
だって……
「なあ。」
「ん?
わっ…!」
隼人は私の手を引くとベッドに投げるみたいに寝かせる。
そしてそのまま多いかぶさってきた。
「……抱かせろ。」
隼人が大事なモノを無くした時は、いつも私のところに来るから。
ウサギの面倒を見始めて部活に顔を出さなくなった時も。
インターハイで優勝出来なかった時も。
乱暴に私を抱いた。
私を抱く隼人は、いつも辛そうだった。
事が済めば、隼人は私に背を向けて横になった。
「…ねえ隼人。」
「……。」
返事がない。
もう寝ちゃったのね…。
「……ずるいよ…隼人…。」
いつもいつも、一方的に感情をぶつけて。
ほんとずるい…。
なのに……
「私じゃ…ダメなの…?」
ずっと隼人が好きだった。
ううん、今だって好きなのに。
隼人から返事はなくて、聞こえてくるのは寝息だけだった。