悲しいとか悲しくないとか


忘れてとか忘れないでとか


そんな野暮な話ではないまだ冷たい春風


眩しくて顔を上げられないから


俯いた足元に梅の花びら


小さくあいた私の口から


無言という言葉が逃げてゆく


強くなったのか


はたまた弱くなったのか


人に決められる筋合いはないけれど


自分で歩いてきたこの道は尊い


振り返ることはしなかったはずなのに


振り向きたくなるのは


まだ16歳のままのあなたが居るからだろうか


目を凝らすには遠すぎて


手を伸ばすには足りなくて


きっとここは、あなたから遠い場所


数ミリ先の雨粒の跡、指でなぞる


濡れた黒い地面を踏んで歩く


私を傷つけた人はここに居ない


白くてやさしいカモメもここに居ない


梅の花びら数えようかな


でもきっとすぐに飽きるんだろうな


3月に雪の降らないこの街で


私は私の名前で生きている