だらしのない態勢でコアラみたいに ややこにしがみつかれていた日の午前中

ぼんやりと空を眺めていたくもり

長方形のベランダの窓を
ほぼ正方形に区切る窓枠の一つを

対角線に飛行機雲が線を引き

見事に三角を二つ残していったキラキラ


おぉ…キラキラ


うすら笑いを浮かべつつ

ややこにしがみつかれつつ

私は高校生の頃に
眺めていた空を思い出していたキラキラ


バイト三昧で遅刻や欠席の常習犯だった私だが

友達には恵まれたキラキラ

これまでの人生の中で
キーパーソンとなる人の殆どは高校時代に出会った人達で

私の通った高校を選んだ事だけは絶対に間違っていなかったと今でも思う焄


先日、仲間の一人のソータが

「今スペインにいるよ」

と言っていた、ソーシローキラキラ

一年生の時、
「あビックリマーク絵うまい人だ煜」

と私のバイト先に偶然来ていたソーシローは

2クラス合同の選択教科の『美術』で

私と背中合わせに座っていた隣のクラスの奴だった。


男前だけど飾らずマイペースなソーシローは

みんなから愛されたキラキラ


何せおかしなヤツ淏


学校のすぐ傍が家なのに
毎日5分の遅刻を続けに続け

最後は校長室に呼ばれていた淏

5分送れるなら10分遅れて職員玄関から入れば

生活指導に見つからないのにだ淸

「校長室の絨毯スゲーふかふかだ煜」

と満面の笑みだったキラキラ



古い校舎の石油ストーブの煙突を誰よりも

「気をつけなきゃ」

と、その日警戒したお気に入りのダウンを着ていたソーシローキラキラ

昼休み前には

腕から沢山の羽が飛び出し

セロテープで応急処置されていた淲

翌日、縫われたダウンは

片腕だけが筋肉マンの様になり

みんなに大爆笑されたが
彼はその冬着続けた淲

お洒落さんなのに
そんな事も平気でやってのける淏


体育の後の昼休みは上半身裸でズボンを下まで下げ

ほぼパンツ一丁で弁当を食べ…

その弁当箱は必ず持ち帰るのを忘れ

二、三日は

「今日こそ持って帰る」

と笑顔で言う淏


そんなソーシローの彼女は二つ年上の凄い美人淏



雪がちらつく初冬の夕方、
どぶに等しい大きめの川淵の『裏道』を自転車に乗り仲間と通った時

何故かソーシローは

川へ直感に曲がり

ETみたいに飛ぶわけもなく

「あれっ」

と一言残して

川に落ちた澈



落ちた矢先に彼が言ったのは

「自転車どこ!?ビックリマーク

かけていた眼鏡や荷物よりガタガタの自転車の所在の心配だったが

底がヘドロに近く水位も膝より少し上なドブ川で

そう簡単に自転車は流されない淏

翌日彼は

「道が見えた」と言い

「スゲー寒くて震えた煜」と

やっぱり笑っていた焄


何でもテキトーで無頓着な人気者だが

絵に関しては別だったキラキラ


他の美大には目もくれず

二浪して彼は多摩美術大学に受かり

卒業し

画家になったキラキラキラキラキラキラ


ソーシローの絵は私のとは違い

穏やかで安定していて芯があり澄んでいたキラキラ

彼がみんなから愛される所以がまるまる見てとれたキラキラ


私はソーシローの絵が好きだったし

ソーシローが多摩美に受かった時は

自分の想いが重なって

どうしようもなく嬉しかったし

細々ながら画家でやっていると聞いた時は

救われた想いがしたキラキラキラキラ




そんなソーシローが個展をひらいていると言ったから

東京へ弟の舞台を観に行きがてら覗きに出向くと

ぎゃらりーはCloseで…

前々から日にちを確認していたのに

「定休日なの忘れてた煜」

やはり笑ったソーシローキラキラ

しょっちゅう携帯を無くすので

よく連絡を取れなくなるソーシローキラキラ


そんな彼を誰も咎める事なく 皆が笑うキラキラ

「ソーシローだから煜」



芸術家は割と浮き沈みが激しく難しい人間が多いというが

あっけらかんと明るいソーシローを

私は『絵かき』になるべくして生まれて来た様に思う焄


普段の抜けた分

絵に対してだけは

とても繊細な事を

私は知っているキラキラ


彼が全力になれるのは
絵に対してだけ焄





流されていく飛行機雲を見ながら

ぼんやり思い出すキラキラ

文化祭の準備期間中

煙草を吸いに学校を抜け出して

近くの沢で、あっけらかんとガウディの話をした焄

あの時手に持っていた一眼レフで撮った空を

しばらく実家の部屋に飾っていたが

気付けば片付けられていた淸


あの写真どこいったんだろう……淏!?

スペインかぁドキドキ
いいなぁキラキラ

きっとソーシロー財布スラれてるだろーなぁ淲

私が知ってるスペイン語…ボキート ボラーチョ…だけだな淏




意味は『少し酔った』

スパニッシュも流通してるアメリカのパブで唯一覚えたスペイン語淏

きっともう使う事はない淏



何故だか晴々しい気持ちになったその日の夜は雨が降り

ぐんと寒くなった翌日には

冬が駆け足でやって来る気配がした鋓


北海道で一番短い季節は
『秋』かもねキラキラ