取れてしまった己の頭部を両手で持ち上げ、左右に動かしダンスを踊る蟻の衝撃。

 

はじめてオトコに抱かれた日、その、圧倒的な肉の摩擦を味わいながらも、ふと気付いたように微笑んで、オトコという生き物の下唇をなぞるオンナという衝撃。

 

生きたくて、喉を掻き毟るほど生きたかったので、いっそ死のうと首をくくった夜明けの身体の氷のような冷たさの衝撃。

 

泣き疲れ、笑い疲れて書き殴る詩の、渇いた行間に眠る毎日の生活という衝撃。

 

焼かれた骨の白さより、不思議な果実のように漂う甘い香りが天まで立ち昇る衝撃。

 

溶けたナメクジが寝床にしていた緑色のスポンジで、そっと洗う夕食の皿の白さの衝撃。

 

バラバラの、墜落遺体の人としての面影は、ただどこまでも静かな、沈黙の欠片という衝撃。

 

運命を変えたくて、突き刺した少女の耳たぶから滴り続けた赤い血は、誰かがあの時、喉から手が出るほど希求していたかもしれぬ衝撃。

 

狂おしいほどに追いかけて、どうしても手に入れたくて入れられなかった情熱の証に、止め処なく流れ続けるように思えた涙もやがてそっと枯れる衝撃。

 

ひとは孤独から逃れるため、悲しみさえも手放すことができぬサガという衝撃。

 

 

いのちという衝撃。

 

この今、如何にもこうにも、生きているという衝撃。

ひとつ背負った人生に、ひとつ御魂が宿る衝撃。

 

そしてあなたを、愛しているという衝撃。

 

 

Aisha

 

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