怒りの感情で理不尽に接してくる人に、私たちはどう対抗したらよいのでしょうか。1番は「キレる人に近づかない、距離を置く」なのですが、相手が子どもだった場合、そう簡単にはいきませんよね。


思春期は多感な時期ではありますが、大人に向けて視野を広げ、自我を確立する大切な時期でもあります。


「腫物を触るようだから放っておく」のも、ひとつの方法ではありますが、できる限り良質なコミュニケーションを取り、導いてあげたいものです。そこで今回は、思春期の男女別の対処法をご紹介します。


◆思春期男子は、心が静まるまでそっとする

多くの子どもも親も、この怒りや衝動性に関して無意識です。「この時期だから仕方がない」というのもありますが「イライラモヤモヤが止まらなくてどうしようもない」という子もいます。


また、怒りが原因で友達とトラブルを起こしてしまう子もいます。叱ったり諭したりすることが求められてくるのですが、その前に、私たち親がこの怒りのメカニズムについて理解をしておくことが大切です。


思春期に入ると、男子はテストステロンという男性ホルモンが分泌されていきます。ひげが生えたり、声変わりをしたりと目で見える変化と共に「キレやすくなった」「イライラするようになった」など気持ちにも変化が見られます。


「昔はあんなに素直でいうことを聞いてくれたのに、攻撃的になってしまった」と嘆く親御さんもいると思いますが、テストステロンには攻撃的になるという特徴があるのですね。


この時期はスポーツなど、ルールのもとで勝敗を決めることができるものに没頭できたらよいのですが、少し以前にあった某大学のアメリカンフットボール部の悪質なタックル問題のように「相手を傷つけてでも勝ちたい」と思ってしまうのは間違いです。


なので私たち大人が、多感な時期の子どもの心と身体の状態を正しく判断し、導いてあげることがベストなのだと思います。


子どもが興奮状態にあり、キレてしまった際はまず、興奮が冷めるまでそっとしておきましょう。このときにほかの子どもに被害が行きそうなときは、別室に移動させたり、暴れている際は治まるまでハグをすることもよいと思います。


家庭内であれば、親自身にも攻撃が及びそうな時は逃げて構いません。時間を置いてから、話し合いをしていくことをおすすめします。親だからといって、暴力を受け止める必要はありません。それとこれは別だと考えてくださいね。


◆私だけにすぐキレる息子

先日、読者の方からこんな質問がきました。


「中学1年生男子の母です。私に対する息子の暴言についてお聞きしたいです。息子は私の相槌や返答が気に食わないとすぐにキレてしまいます。いいがかりをつけられた形になることも多く、相手をすることに疲れてしまいます。

最近特にキレることが増えてきて、話を聴きたくても話してくれません。しつこくするとまたキレてしまいます。学校では目立たない存在のようで、キレることはなく先生との相性も悪くないそうです。反抗期だと諦めるしかないのでしょうか?もしいまできることがあったら教えてください」


中学生のお子さんへの対応でお困りとのこと。ちょうど、思春期・反抗期真っ盛りということで、お母さまも1番しんどいときだと思います。そのようななかでも、話を聴こうとする姿勢をお持ちであること、大変素晴らしいと思います。ぜひ、寄り添う気持ちをそのままに、この時期を乗り切っていきましょうね。


さて、反抗期の子どもへの対応をお話したいと思います。もうご存じだと思いますが、この時期の子どもにどれだけ感情的に訴えても「うざい」「うるさい」という言葉でしか返してくれません。


といっても、こちらが声掛けをしなければそれはそれで「無視された」「見捨てられた」と感じるお年頃。厄介だと感じると思いますが、こうした揺れ動く時期だと腹をくくり、受け止め・受け流していくようにしていきましょうね。


基本的にこの時期の子どもは、上から目線、アドバイスが嫌いです。よかれと思っての声掛けも「指示・指摘・注意」だと受け取ってしまい、その事に対して衝動性を見せてきます。


そのため、このときは「そんなことがあったんだね」「うんうん、そうなんだ」と共感しながら話を最後まで聴き切りましょう。聴き切ることで、子どもは親に対して信頼を見せ、本音を話すようになってきます。


いいたいことが山のようにあるとは思いますが、子どもは、こうした揺れ動く時期を経て、心が広く深くなっていくので、大人になるための通過儀礼だと思うようにしましょうね。


そして、そろそろ話をしていきたいなと思った時はまず、お子さんの1番機嫌の悪い時間を知るようにしていきましょう。


◆機嫌が悪い時間を把握する

帰宅後すぐ、寝起き、部活があった日、塾があった日、特定の曜日…など、機嫌の悪さにも波があったりします。疲れていたり、嫌な授業があった日、部活が大会や試合前など緊張したり嫌なことがあったりすると、特に機嫌が悪くなってくるでしょう。


そんなときに、勉強の話や進路など大切な話をしようとしてもカチンとスイッチが入ってしまいます。休日やゴロゴロしていて比較的穏やかなとき、そしてもし車をお持ちでしたら助手席に座らせているときなどに、何気ない雑談から入るようにしていきましょうね。


「コンビニ行くけどいっしょに行く?」「本屋行くけど、どう?」など、お子さんの興味をそそるような場所へ誘ってみるのもひとつの手です。「いかない」といってきても「じゃあお土産買ってくるよー」と伝えて深追いしないようにサッと出かけてしまいましょう。


そして男の子の暴言を怖いと感じてしまうと思うのですが、サラッと「反抗したい時期なのはわかるけど、そういういわれ方はしたくないよ」と伝えましょう。反抗期だからといって、相手が親だからといって何をしても許されるというわけではありませんからね。


悪いことは悪いと、きちんと伝えていかないと逆に子どもは愛情を感じられず「何をしてもいいんだ」「俺なんてどうでもいいんだ」と受け取ってしまうので、時々、気づきの言葉として掛けていきましょうね。


この時期は、子どもは子ども、親は親として親離れ子離れを経て、お互いがいち個人として自立の道を歩む時期です。天邪鬼で扱いが難しい時期ではありますが、挨拶などの声掛けをサッとするようにし、クドクド長々とした話はしないようにしていきましょう。


◆思春期女子には共感する

先述したことは男子に多く見られるのですが、女子にももちろんあります。思春期男子はテストステロンという男性ホルモンの影響で、攻撃的になったりするということをお話しましたが、これ実は女子にもあるのです。


「自分よりも上の存在が気に食わない、肩書や縄張り意識が強い」という場合は、テストステロンの分泌が強いタイプだと思われます。なので、思春期男子のようにキレて暴れてしまう際は、前回書いた内容での対応が望ましいと思います。


さて一般的に、思春期女子はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が活発になり、好き嫌いがはっきりしたり、異質なものに対して拒否反応を示したりしてきます。


親がよかれと思っていった言葉でも「はぁ?」「最悪…」「マジ無理」など、プイっとそっぽを向いてしまうことが多くなる時期なのですね。そして、異性である父親に嫌悪感を示してくる時期でもあるので、お父さんは耐え時だといってもよいでしょう。


これまで、べったりとパパっ子だった娘が急に「キモイ」といい出したり、無視したりしてくることで戸惑う気持ちがあると思いますが、これは異性を意識する気持ちの芽生えであり、女性ならではの防衛本能でもあります。異性との距離の置き方を学んでいるのだなと思って、そっとしておきましょうね。


そして女子は何といっても、お母さんとの関係が要となってきます。共感能力が高い女子は、自分を受け入れてくれない人は家族であろうと「敵」と認識します。一度「敵」と認識されると、その溝を埋めるのに相当な年数を要してしまうので、上手に接していきましょう。


具体的にどうしたらよいのかというと「共通の趣味を持つ、子どもの興味のあるものの話をする時間を持つ」ことが1番の特効薬です。テレビドラマでも、漫画でもアニメでもアイドルでも料理でもなんでも構いません。


友だちのことでも、好きな人のことでもよいです。話を共有し共感することが、この時期の女子にとって1番の対策となるのですね。一見「くだらないなぁ」と思うような内容でも、存分に話を聴きながら、懐に入ってしまったほうがいうことを聞いてくれるようになりますよ。


◆「本音で話す」を意識する

また、女子はお母さんの姿を良く観ているので、誤魔化そうとしても無駄です。いい過ぎてしまったり、間違ったことをした際は素直に謝るようにしてください。


「ごめんね、ママ勘違いしてた。あなたのいっていたことが正しかったわ」「さっきはいい過ぎてしまったね。お母さん疲れていて感情的になっちゃった。気をつけるようにするね」など、理由も少し交えて謝ることがポイントです。


「ごめんなさい」だけだと「言葉だけ!」と思われてしまいますし、言い訳ばかりでも「ぐだぐだ自分を正当化してんじゃないよ」と思ってしまうでしょう。適切な長さで一度区切り、必要であれば言葉を足していく感じでいましょうね。


女子との会話での相槌は「わかるよ、その気持ち。お母さんも昔そんな風に思ったことあったもの」。この言葉の繰り返しで安心感を与え、本音トークをしていくようにしましょう。


by them(バイゼム)掲載記事

https://by-them.com/412034/4