夫が2年間かけて関わってきた仕事をひとつ終えた。


夫は家庭に仕事を持ち込まない。

持ち込まないというよりは、仕事の話を一切しない。

それを良しという考えもあるのかもしれないが、ワタシは違う。

仕事や人間関係の不満だってあるだろう。

そんな時にはワタシを吐け口にしてくれればいい。

長い結婚生活の中でいつもそう思ってきた。


夫婦でありながら、仕事をしている夫のことをワタシはなにも知らない。

パパはなにも話してくれない。

そう何度も泣きながら夫へ訴えたこともある。

ワタシに話したところで、何かが生まれるわけではないし、

仕事に関して口を挟めるわけでもない。

それでもやっぱり話して欲しいと思ってきた。


仕事人間なのかと聞かれたら、決してそうではない。

どちらかといえば、典型的な家庭人だ。

どんなに仕事がハードで疲れている時でも、それを口に出すことはない。

オレは働いてるんだから!

などという言葉は一度も口にしたことがない。


商売をしている家庭に育ち、幼い頃から両親が不在だったという。

それを寂しいと感じたことはないけど、自分の子どもたちを同じようには

したくないと夫は言っている。



先週金曜日、一緒に仕事をしてきた方が送別会を開いて下さった。

始発で帰るという夫に、明日は休みだから迎えに行くよと伝え、

夫から連絡が入ったのが午前3時。

深夜に横浜まで車を走らせた。


大きな花束と、みなさんからの寄せ書きの色紙を抱えた夫。

普段は飲むことのないウイスキーを飲んだと言う。

アルコールのせいなのか、いつもよりも少し饒舌だった。



大変なことがたくさんあったけど、

振り返ってみたら楽しかったなぁ。



ひとつの仕事を終えた正直な感想だったのだろう。



そか・・・良かった。



ワタシにはこんな気の利かない言葉しか出ない。

運転しているワタシは前だけを見ている。



ママ、本当にありがとね。

こうやって無事に終えられたのもママのおかげだよ。

オマエがいてくれたからやってこれた。



言葉が出なかった。

涙があふれてきて、運転しているのに目がかすんでしまう。



・・・やめてよ、運転してるのに。



いつも思ってたんだよ。

オレがこうやって安心して外に出られるのは、

ママがシッカリ家庭を守ってくれてるからだって。


あのね、人に注目されながら頑張ることってのは、

そんなに難しいことじゃないんだ。

でも、地味に頑張るってなかなかできることじゃない。


おねーちゃんにチビ二人、それにバアちゃんだろ。

子どもたちは朝が早いし、オレは毎晩帰りが遅い。

それなのにママは頑張ってくれてるもんな。

いろいろと大変な思いをさせるな。



そんなことないよ。

けっこう楽しませてもらってる。





一大決心をして大阪へ引っ越した10年前。

ワタシがこんなに弱くなければ、ワタシがもっと辛抱できていれば、

夫の生活だって変わっていたはずなんだ。


義両親に寂しい思いをさせることもなかった。

何も言わずに認知症の母を引き受けてくれてはいるが、夫の母も

車椅子の障害者だ。

妻の親よりも自分の親のほうが大切なはずだ。

それなのに、そんなことは一度も口に出したことがない。




ワタシがもっと大阪で頑張れたらよかったよね。

大阪にいれば、母にだって関わらずに済んだよね。



いや、大阪に戻りたいなんて考えたことないよ。

たまに遊びに行くのはいいけど、オレは東京も好きだよ。

それにオヤジやお袋のことだって、ママには感謝してる。

オレが行けなくても、ママが行ってくれてる。

いつだって気にかけてくれてるだろ。

それだって、なかなかできることじゃない。


だけど、よく続いたよなぁ。

今度の結婚記念日で○×年だろ。

何度壮絶なケンカしただろうな。

ちょっとしたケンカじゃなくて、壮絶なケンカ!


壊した物や、穴を開けた壁の数だけやってるんだろうな。





そーねそーね。

今回は初めてワタシが自分の携帯をぶっ壊したけど、

物に当たるのはアナタだもんね。


これからもきっといろんな物が壊れていくんだわ。