5年前の3月11日の少し前。
三回、夢を見た。
窓の外は広く平らな街並み。
私がいるのはプレハブ小屋のようなもの。
ほんの少し目をそらして、窓の外に視線を戻したら、そこは黒く大きな川になっていた。
いつかのテレビで見た中国の揚子江のようだと思った。
私のいた小屋もザブンザブンと流された。
天から声が聞こえた。
「ここではありませんよ」
2回目の夢は橋の上にいた。
どんどん川の水かさが増してくる。
小さな子供が流されていた。
川に飛び込み子供を抱えて岸に戻った。
走りなさいと叫んだ。
3回目は、自衛隊のヘリが、
大波の中に取り残された人を助けるのを、
船の上から見ていた。
船の中にいた人々が、手伝おうと降りていく。
私も行こうとすると、ここにいろと言われた。
その後の大震災。
あの夢は何を私に伝えたかったのだろう。
「ここではありませんよ」の言葉が、頭の中で虚しく響いた。
まるで海外の災害時の「日本人はいません」みたいに。
まったく意味のないことと知りつつ、どうすることもできない罪悪感を感じていた。
数日後の朝のワイドショーで、叔母に連れられて、いなくなった母を探す小学生の少年がいた。
母の車を見つけて、車内を確かめると、そこには母の遺体があった。
少年は泣かなかった。
ただポカンとしていた。
ポカンとしたまま、ただ前を見ている少年。
あの子は今どうしているだろう。
何歳になっただろう。
家族は、死んではいけない。
死なないようにしなければいけない。
悲しむ人がいるから。
単純にそう思う。
けれど、どうしようもない時もある。
だから毎日を、愛さなければいけない。
今目の前にいる人に、愛してると伝えなければいけない。
mustばかりで、ごめんなさい。
でも、そう思う。
オリンピックよりもっと前に、
しなければいけないことが、
あるんじゃないかしら。