あるところにおじいさんと１０匹のおばけが住んでいました。
「おばけは１０匹じゃなくて、１０羽じゃない？ 飛ぶんだから」と娘いわく。
そ、そうなのか～、知らなかった。
今晩は嵐です。
こんな日は、おじいさんのベッドで一緒に眠ることができるので、嵐は怖いものの、おばけたちは少し嬉しい。
歯みがきをしたり、枕を持ってきたり、眠る準備をしていていると、雨音に混じって「クーン クーン」と小さな泣き声が聞こえてきます。
ドアを開けてみると、びしょ濡れの子犬が、寒くて震えているではないですか。
子犬をタオルでくるみ、あったかいミルクを飲ませ、その夜は子犬がおじいさんと一緒に寝ることになりました。
その晩だけなら良かったのですが、次の日も次の日も、子犬はすっかり元気になったのに、おじいさんを独占。
１０匹のおばけたちは、羨ましくて仕方ない。
だから、おじいさんが街に出かけたとき、おばけたちは、子犬を仲間はずれにして、ちょっと意地悪をしてしまいました。
おばけたちが、夢中になって遊んでいると、なんとドアから泥棒が入ってきます。
しかし子犬がありったけの大声で吠えたため、どろぼうたちは大慌て。
が、ふと１０匹のおばけに気づいたどろうぼうたちは、逃げるのを止め、「こいつは高く売れるぞ」と、袋に詰め込み、トラックで運び出します。
おばけを助けようと、子犬は死に物狂いで、トラックを追いかけました。
が、トラックのスピードにはかないません。
子犬は賢く、途中で近道をして、交番に駆け込みました。
ちょうどやってきたトラックを、おまわりさんが止めると、荷台の袋から１０匹のおばけが飛び出します。
「おじいさんとこの こどもたちじゃないか。ひどいことをするやつだ」
と、どろぼうは無事に逮捕。
おまわりさん、さらっと言いましたが、おじいさんとこの子ども？
おばけが公認というだけでもびっくりなのに、こどもとして認められていたとは。
こうして、子犬とおばけは仲良しになりました。
子犬用に新しいベッドをおじいさんが作ってくれ、子犬とおばけたちは並んで寝るようになったので、もう焼き餅を焼くこともありません。
なんて可愛いお話でしょう。
おばけの絵も可愛いです。