西村真悟 
北朝鮮が二十九日の早朝、ミサイルを発射し、北海道上空を通過させ襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下させた。それから、二十九日と三十日の二日間の報道は、このミサイル発射に関することだらけで、昼のワイドショーにおいてもミサイルの専門家が出てきてやっていたようだ。
その報道をほとんど見ていなかったのだが、我が国は北朝鮮がミサイルを我が国上空に飛ばしたことに衝撃を受け、Jアラートは即座に安全な場所に逃げてくださいと国民に呼びかけ、新幹線は停止し、飛行機も飛び立つのを自粛した、と報道され、しばらくすると、専門家が続々と出演して、何故あの飛行経路だったのかとか、発車されたミサイルはどういうミサイルなのかとか、アメリカのトランプ大統領がどう動くとか、日米の連携とロシアと中国そして国連の動きとか、盛んに話していたようだ。
 繰り返すが、この報道をほとんど見ている時間が無かった。しかし、我が国の報道と専門家の議論には肝心な部分に「欠落」があることは分かった。
 北朝鮮は、今まで、日本海と太平洋にミサイルを弾着させてきた。そして太平洋に弾着させるときには、いつも我が国上空を飛ばしていた。従って今さら、北朝鮮がミサイルを我が国上空に飛ばしたといって驚くこともないではないか。
肝心な問題点は、何故、北朝鮮は、ミサイルを日本海と我が国の東に広がる太平洋にだけ弾着させてきたのか、である。この問題点を見つめれば、その原因は明らかに我が国にある。まさに「灯台、もと暗し」、だ。

 そもそも北朝鮮はミサイルを、何故、オホーツク海や朝鮮半島の西の黄海やグアム島やサイパンの方向に撃たないのか。その理由は、オホーツク海や黄海やグアム島やサイパンの近くにミサイルを弾着させれば、ロシアや中共やアメリカが黙っているはずがなく、何をされるか分からないので怖いからだ。これに対して、日本海や日本の上空を飛ばしても、日本は絶対に何もしないから怖くない。これが理由だ。
 では、何故、日本は怖くないのか。
日本は絶対に反撃しないからだ。その訳は日本の、憲法九条!つまり日本上空は、北朝鮮のミサイルにとって、飛び放題の「快適な回廊」というわけだ。従ってこの北朝鮮のミサイルが我が国上空を飛翔する原因が、我が国自身にあることを見つめずに、マスコミは、二日間にわたって、ミサイル専門家の意見を拝聴していた訳だ。

次に、この度の北朝鮮のミサイル発射に対して、国連そして日米両国等の各国が連携して北朝鮮に圧力をかけて、北朝鮮にこれ以上の核とミサイルの開発を断念させようとする動きについて。
この問題についても、我が国の報道は、自ら為すべきことに取り組まず、アメリカが如何なる制裁に踏み出すか、そして北朝鮮と密接な関係を有するロシアや中共が何を為すかに関心を集中している。
しかし、まずロシアや中共ではなく、まず我が国が率先して何を為すか、これがポイントではないか。何故なら我が国こそ北朝鮮と密接な関係を有するからである。

 昭和四十九年八月十五日、北朝鮮工作員となった在日韓国人の文世光は、ソウルで韓国の朴大統領を狙撃した(文世光事件)。この朴大統領狙撃は文世光が、大阪湾に入った北朝鮮貨物船万景峰号のなかで、朝鮮総連生野支部政治部長から受けた韓国の朴大統領狙撃命令を実行したものである。狙撃後、文世光は韓国当局に逮捕され、すべてを自供し朝鮮総連に騙されたと悔いた。そこで韓国政府はかねてより日本が北朝鮮の対南工作基地でると認識していたのであるが、文世光の自供に基づいて日本政府に対して朝鮮総連の強制捜査を要求してきた。
しかし日本政府(田中角栄内閣)は朝鮮総連の強制捜査を実施しなかった。以後、朝鮮総連は現在に至るも、北朝鮮政府の組織として我が国内に存在している。そしてこの朝鮮総連は、我が国から北朝鮮への巨額の送金、北朝鮮の工作活動、そして北朝鮮の日本人拉致を実施している。
この朝鮮総連を通じた我が国からの北朝鮮への巨の送金は、明らかに北朝鮮の核とミサイル開発資金になっている。従って我が国こそ、北朝鮮と密接な関係を有する国なのである。
ところで、何故、文世光事件に際して、田中内閣は朝鮮総連への捜査を実施しなかったのか、これは、戦後政治の最大の謎であり、戦後政治の暗黒部分である。よって我が国は、
まず、我が国内における朝鮮総連をはじめとする北朝鮮傘下組織を徹底的に無力化した上で、国外のロシアや中共そして多の各国に対して、対北朝鮮制裁強化を呼びかけるべきなのだ。
以上、この度の北朝鮮のミサイル発射を切っ掛けとして我々は、我が国が北朝鮮の核とミサイル開発資金の供給源であること、我が国の憲法九条が北朝鮮のミサイルを我が国上空に呼び入れていること、を認識し、その元凶である「戦後体制」すなわち「憲法九条体制」から、速やかに脱却する決意を新たにするべきである。
 世に憲法九条を守れと訴える人々がいることは、もちろん承知している。そしてその人々の目的が、我が国を中共や北朝鮮の隷属下に置くことではなく、平和にあるのならば私は、その人々に賛同して目的を同じくしていることを喜び、「平和を望むならば、戦いに備えよ」(古代ローマの格言)と申し上げる。

 では、現在の状況における、「憲法九条体制」から脱却の具体的な一歩は何か。
 それはミサイル防衛力の強化と敵ミサイル基地および指揮命令系統の撃破能力の強化である。よって安倍内閣が、その方向に向かっていることを強く支持する。
さらに、アメリカのトランプ政権が、北朝鮮の指揮命令系統撃破(斬首作戦)を開始すれば、同盟国としてその作戦を支援すべきである。