サンケイホールブリーゼ『噺家生活三十周年 桂米紫独演会』 | 桂米紫のブログ

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米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。

改めまして、2月23日のサンケイホールブリーゼ『噺家生活三十周年 桂米紫独演会』にお越しくださった皆様、誠に誠にありがとうございました。

Xにて短文で御礼のメッセージをポストさせて戴いたのみで、きちんとお礼を申し上げられておらず、大変失礼を致しました。

独演会翌日にはホテルプラザオーサカでの『桂米紫の落語会 芝居噺の会』、翌々日には新開地で『朝パル落語会』と『喜楽館昼席』の掛け持ち(と、それに続く打ち上げ)、そして今日はYouTube『米紫&吉の丞㊙ワールドニュース』の生配信…と、こんな時に限って予定が立て込んでおりましたもので、ロースペックの僕の脳味噌ではゆっくり文章を綴らせて戴く余裕もなく、ご無礼致しました。


僕はどちらかと言うと、サニーサイド側の人間ではありません。
それは別に、そのことに対してやさぐれている……という訳ではなく、生来の性格的に、ミーハー層からチヤホヤされるサニーサイド側のものよりも、ある特定の人から偏愛されるニッチなものの方により興味を抱く……という意味に於いてです。

そのように偏屈でつむじ曲がりな人間がミーハー受けする訳もなく(しかもそれを少し誇りに感じているような、若干こじらせたところまでありますので)、そんな僕がサンケイホールブリーゼのような大きな舞台で独演会をさせて戴けるとは、本当に夢にも思っておりませんでした。

もちろん満席には程遠く、2階席に至ってはモンゴルか!というぐらい人口密度の低い状態ではありましたが、それでもそんな変わり者の僕を応援してくださる方がこんなにも沢山いてくださったのかと思うと、それだけで「チョイと触れば涙が出る」程の情緒にまで達しておりました。

ここ数年ずっと「米紫くんもブリーゼで独演会をやったらどうや」と言ってくださっていた師匠・塩鯛にゲスト出演してもらえたこと、師匠の奥様に(しかもチケットを買ってくださって)その場に居てもらえたことも、「チョイと触れば涙が出る」情緒に拍車をかけました。

そして、僕と同じ属性を持つ仲間達がこぞって応援に駆けつけてくれたことがとても嬉しく、そうした色んな要素がごちゃ混ぜになり、トリネタの「柳田格之進」では感情が高ぶり過ぎて、もう中盤から涙と鼻水で顔中ズルズルになっている……という、実に不恰好な状況に陥っておりました。

でも、“不恰好な人間を演じること”こそが今回の独演会の主眼だったとも言えますので、それもまた一興かなと思い、最後までもうひたすらズルズルさせながら高座を務めさせて戴きました。


スマートとは言えない無様な歩き方ではありましたが、三十年この道を歩いてきて本当に良かったと思える、そんな独演会にして戴くことが出来ました。
これからも、これまで通りの無様な歩き方しか出来ないだろうとは思います。でもこのまま進めばいいんだという自信を、皆様から戴きました。
心より感謝申し上げます。


最後に……。

あれだけアナウンスがあったにも関わらず何度も携帯鳴らしてた人、正直に名乗り出なさい!!