(一)

大発表、しました。

BOYS END SWING GIRLを結成して5年。
やっと、CDを全国流通でリリースします。

本当に嬉しいことだ。全国のCD屋さんに僕たちの音楽が並ぶ。
想像するだけで顔がニヤけてしまう。

でも、それだけなら、他のバンドと変わらないかもしれない。
ずっと一緒にやってきた仲間のバンドたちも同じように全国流通盤をリリースしてきた。


僕たちがこの発表を【バンド最大の挑戦】と呼んだ理由。


それは、

僕たちには、所属事務所も、所属レーベルもない。ということ。



完全自主の、全国流通。



ライブスケジュール管理も、店舗への営業も、もちろんCD制作から販売にかかるお金までもちろんCD制作から販売にかかるお金まですべて自分たちで。市場で権力を持ってたり、ドンとお金を出してくれる業界のオトナは僕たちにはいないのだ。



それでも、伝えたいことがあります。
ただCDを出すでなく、どうしても”自主レーベル”という形でリリースしたかった理由。



毎度のごとく長くなるので、興味のない方はそっと閉じてもらって構いません。読んでくれる方はどうか最後まで、お付き合いください。

それでは、はじまりはじまり。

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(ニ)

子供の頃からCDが、音楽が大好きだった。中学生の頃、毎月音楽雑誌を買って、覚えたてのインターネットで30秒の視聴音源を聴いて、部活帰りにCD屋さんに走った。試聴機に入ってるやつならフル尺で聴けるから。

サッカーとバンドで忙しくてバイトなんてほとんど出来なかったから、少ないお小遣いの中、みんなが食べるハンバーガーを我慢して月に一枚CDを買った。部屋が埋まるほど買えたわけじゃないけど、あのとき手にしたGalileo GalileiやLUNKHEADを始めとする青春の音楽たちはいまでも僕の宝物なのだ。


あの頃に夢と憧れをくれたミュージシャンみたいに僕もなりたいと思ってバンドを始めた。10代の頃は何もかもうまくいって、このままドンドン進んでいける気がしたけれど、20代になると現実はそう甘くない。これは前回の記事でも書いたこと。


そしていよいよ去年の10月、行き詰まった僕たちは活動休止を決断。それから時間が経つにつれて“解散”という二文字が僕たちの頭を支配していった。そこからどう復活していったのかは、前回の記事を読んでもらうのが一番はやいか。そう、みんなのおかげで立ち直るわけです(詳しくはこちらを)。


そう、それからあの記事に一つだけ付け加えたいことがある。復活後の「ただいまツアー」を通して、僕たちにはこんなにも味方がいるんだな、と実感した僕だったのだけど、それともう一つ。


ライブに来られない人たちからも、ものすごくパワーを貰ってるなって思ったんだよね。


それは遠方のファンのみんなや、地元の友達や家族の応援もそう。


ずっとライブハウスで活動してきた僕たちだから、ずっとライブハウスに来てくれる人たちに向けて音楽を届けることにいっぱいいっぱいだった。だけどすこし目線を外してみたら、外側にだってたくさんの応援してくれる人がいた。

そのときに改めて、「CDを出すなら、ライブに来られないような人の元へも届けたいな」って思ったんです。


中学生や高校生の頃の僕みたいな子がきっといる。

部活や仕事で忙しくてライブには行けないけれど音楽が大好きで大好きで仕方ないって人たちへ、もっともっと僕らの音楽を届けたいと、そう強く思うように。


そのときかな、「全国流通、したい!」と本気で思ったのは。


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(三)


じゃあ、なんで自主レーベルなんだろう?

自分たちだけで流通盤CDを出すには、今まで見たこともないほどのお金もかかるし、僕たちには大手のツテもないから、果たして売れるのかなんて賭けでしかない。


それでも、伝えたいことがある。

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実際に、これまで幾つかの音楽事務所やレコード会社の人たちとお話をする機会はあった。いまでも付き合いのある会社方もいる。

だけれど、どれも当時の僕たちの実力不足も含めて、じゃあ一緒に“仕事”として音楽をしていこう!という話には至らなかったのでした。


そうして今年の春、解散という道ではなくもう一度バンドに夢を見たいと思った時、「音楽を通して伝えたいことは何なのか」を改めて考えてみた。


これまでの僕の人生とこれから生きていく道、頭がパンクしそうなくらい(それは言い過ぎかもしれないけど)考えた末に辿り着いたものがある。


『何事も踏み出さなければ始まらない』

ということ。



考えてみれば、後悔ばかりの人生だった。中途半端にサッカー選手の夢を諦めてしまったことも、ずっと好きだった女の子に告白できなかったようなことも。

だから、そんな自分を変えたくてバンドを始めた。憧れだったミュージシャンみたいに一直線に、これだけは貫いてみたいと思って。


そんな最初になりたかった自分の姿を思い出して、もう一度自分を変えようと思った。踏み出してみようと思ったのだ。



3月26日、早稲田大学の卒業式。

閉会の言葉が終わった瞬間、壇上に上のぼった。自分の歌を歌った。

完全ゲリラ的な犯行だったから、終わった後こっぴどく叱られたけれど、あの瞬間に僕の中で何か爆発が起きた。


当日の朝に歌おうと思って、 ギターを持っていったはいいけれど、「やっぱりやめようか」と何度も何度も悩んだ。人生で一番緊張した。足が震えっぱなしだった。

頭の中には数十パターンのシナリオが浮かんで、警備員に止められてしまう姿や場内が静まり返ってしまう様子で頭は埋め尽くされた。


それでも歌った。チューニングもボロボロだし、マイクに声は入ってないし、声は裏返っても歌った。自分を変えたかったから。


歌い終わると、いままで浴びたことのないほどの大歓声(自分で言うことでもないけどね。)。


その瞬間に、『一歩踏み出せば、何か変わるんだ』と心の底から思った。だって、思い描いていたどんなシナリオよりも、もっともっと最高の景色がそこにあったのだから。

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一週間後、単身でロンドンへ行くことに決めた。社会人になってしまう周りに負けないように、自分も何かを掴みたくて。

食事をしたお店の店員さんには必ず話しかけた。道を歩いている人にも「俺は日本のミュージシャンなんだ、これ聞いてよ」ってCDを渡した。ほとんど英語は話せなかったけれど、みんな笑ってくれた。たまにはお酒を奢ってくれたりした。勇気出してよかったな、って何度も思った。

弾き語りライブもした。徹夜で英語のMCを考えて、必死に英詞の歌を練習した。最高の夜だった。


今までの僕だったら「海外でライブをしたい」と思っても、「でもお金がないから」とか「うまくいくかわからないから」のまま、後悔ばかりしていたと思う。


実際、卒業式でもロンドンでも、後悔はある。だけれど、その後悔は「、 こうしておけばもっと伝わったかな」「もっとうまくやれたよなあ」なんて、先に繋がる後悔なのだ。もっともっと、と先を見ることのできる後悔。

それって、全然違うんだなって。

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音楽に夢を見ている。
僕の歌を日本中に、いや世界中に届けたいし、みんなの背中を押したい。

そんな夢を見させてもらっているのは、僕の歌を好きと言ってくれる人がいるからだ。応援してくれる人がいるからだ。

だからこそ、僕も何かを発信したい
音楽と一緒にメッセージも届けたい。

そんなふうに思っている。


だからこそ、一度しかない【はじまりの一枚】は、自分たちの手で最初から最後まで作りたいと思ったのだ。


これが、自主レーベルを立ち上げたかった理由。

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これから、大変なことがたくさん待っている。今まで知らなかった分野の仕事をたくさんする。時間もどんどんなくなっていくと思う。


それでも、『一歩踏み出せば何か変わる』と僕は信じてる。


(実際に、最初は無理だと思ってた達成リストだって見事クリアできたんだよ。なんだってやる気になればできるんだよ、って再認識できました、ありがとう。)

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『KEEP ON ROLLING』、リリースは9月を予定しています。

僕らと一緒に夢を追いかけてもらえたら、本当に嬉しい。その想いには、絶対に応えたい。


とっても長くなったけれど、
最後まで読んでくれてありがとう。


この一枚が、あなたの背中を押せますように。


2016.5.31
BOYS END SWING GIRL
Gt.Vo.冨塚大地