マリガンが1954年暮れから、あっさりとウエストコースト
を捨て、イーストコーストに移って以降、ジョニー・ホッジス、
セロ二アス・モンク、ポール・デスモンド他との共演盤
を多くをヴァーヴに残し、その名をとどろかせたことは
つとに有名だ。
紹介の「ブルース・イン・タイム」は、1957年録音の
デスモンドとの共演。この時期のデスモンドは、
50年代後半、「ダウンビート」「メトロノーム」「プレイボーイ」
各誌のアルト部門読者賞を総なめしていたスター。
このアルバムも、デスモンドの作品といってもいい。
当時、デスモンドは、ブルーベック・カルテットの顔として在籍
する傍ら20枚程のリーダーアルバムを残し、脂の乗り切った
時期といえる。
このアルバムも、マリガンというよりもむしろデスモンド
名義のものと勘違いしてしまう。「自分のうた」を好勝手に歌って、
それがすべての人を感動させる見事なラインになってしまうという
「圧倒的な自然さ」をもって、柔らかさやくつろぎ、優しさに溢れた
トーンで聴くものを包み込むデスモンドは、ウエストコーストの至宝だ。