1952年に初リーダーアルバム「ディスカバリー」を
吹き込んで、折り紙付きの一流奏者としての評価を得た
アート・ペッパーは、以降、数年、麻薬による刑務所入り、
療養を繰り返す。
そして1956年にカムバックしたペッパーは、「アート・ペッパー・
「カルテット」、「リターン・オブ・アート・ペッパー」、
「モダン・アート」、「プレイボーイズ」などの快作を
連発する。これらの中で、私が一番愛聴するのが
「カルテット」である。
もとよりペッパーは「白人のバード」とも言える、閃きに溢れた
インプロバイザーであると共に、陰影と哀愁を帯びた
情感あふれる表現力、豊かな感受性からにじみ出る歌心
、リズムに対する乗りの、自然でスインギーな感覚と音色の
端々さなど、魅力に満ちた天才アルト奏者である。
「カルテット」は、ラス・フリーマン(p)以下の馴染みの
リズムセクションを従え、肩肘の凝らない、ナチュラルに
歌い、スイングする演奏に終始しているところが魅力。
特に「べサメ・ムーチョ」における魅惑的なアレンジと
響きはペッパーならではである。
ちなみに、ペッパーは、56~57年に集中的に傑作を
連発して以降、74年前後まで、長期にわたり麻薬による
スランプに陥る。そして、75年以降のカムバック後の
ペッパーの演奏は、コルトレーンの強い影響もあって、
モード奏法に傾く。この時期以降の演奏は、批評家の間でも
評価の分かれるところで、私自身は魅力を感じない。