第5話
曇った空がやけに落ち着く。
晴れの日はもちろん好きだけど、
曇りの日はなんかゆったりしてる。
遠くまで見渡しても、
青空は少しも顔を見せない。
そんな中、俺は自転車を走らせた。
今朝は寝坊したから
1時間目は絶対に間に合わない。
それをいい事に、
こんなことを考えながら
ゆ~っくり自転車をこいでる。
いつもなら
朝のホームルーム
ギリギリを狙って全速力で駆け抜ける道も、
空の機嫌を伺いながら
…右、左、右、左…
タイヤはパンパンに
空気を入れたばかりだから
ペダルはいつもより軽い。
それでもゆっくりゆっくり、
自転車を走らせる。
そーいや、
結局甲子園も鬼も全部夢だった。
あのちっさい鬼は俺をハメやがった。
追いかけていったら
竜宮城みたいな所があって
綺麗なお姉さんが
たくさんいる島にたどり着いた。
見たこともないような
豪華料理を並べられて
宴を楽しんでいたら
遠くから暗雲が迫ってきた。
竜宮城は一瞬にして暗闇に包まれた。
そして、闇の中からどデカイ鬼が現れた。
次の瞬間。
俺はボコボコにされた。
…めっちゃボコられた。
そこで俺はやっと目を覚ました。
最終的に現実世界に引き戻された俺は
親父のゲンコツを食らって
家を締め出されていた。
…
お前はデカイ夢ばかり見過ぎなんだよ!!!
って事か。
あぁ。
自分で言うのもなんだけど、
本当に俺は
…なんて哀れな少年なんだ。。。
…とりあえず
明日からケータイ没収確定しました。
…
灰色の電信柱たちが
俺の横を緩やかなスピードで
走り去っていく。
昨日まで風を切って蹴散らしていた
カラスの大群が電線の上に座り込んで
こっちを見て笑っていた。
つづく
蜂谷高校 野球部物語 第5話