SFというジャンルは広く深い

→看板掲げて商売する以上、口に合わない客にぶつかる可能性は100%ある。

SFという言葉が何を示すかという論争が空論でしかないとおよそ結論づけられる程度には、今現在世の中とはサイエンスでありセンスオブワンダーに満たされた領域である。


故にSFという思想ジャンルに触れ、かぶれた者はその経過時間と同じ程度に

膨大な人数となっているだろうし、牽強付会な極論を言えば

「文字が大量に記された媒体から情報を取得出来る」それ自体が最早SFである。
 

言わばそれは「ラーメン」のような存在である。

従って「今現在敢えて」それを名乗る産物を出し、あまつさえ金銭を要求するのであれば、

その名に惹かれて近づいて来る者全ては「それが何か知っている客」であると覚悟しなければならない。
この時点において、関係性は既に対等ではない。


先人が開拓し、研究し、地に満ち、屍山血河を築き上げ、血肉と骨で舗装された大道を行くのであるから、それは既にして「訴求する力に溢れている」のである。


故にこそ「ラーメン」という看板を見れば「取り敢えず一杯食ってみようか」とする客が一度は金を落としてくれるし、「SF」という看板を見て「一回は読んでやろうか」と手にとってくれる客が居るのである。


AXДめちぇ*とぽへひあ♪ひょげ%じょぬるね¥りぷべ*}&(解読不能):

(世界で他に無いジャンルだから)1万円

 

…などと看板を立てた所で21世紀の地球には1万円を差し出してくれる人はきっと居ない。
 

これはジャンルに拘泥しろという意味では無い。
その看板を掲げた限り、その看板を見て味見をした客が「これは俺の好みじゃない」と言ってもそれは「実際そうだからしょうがない」のである。


故にわざわざ成分分析と自分の好みを比較・開陳して並べ立ててくれても結構であり、黙って二度と来なくなろうが、悪評を立て(作品と関係無い部分ならば別問題となる)られようが、そこまでは「看板の威力」と言わざるを得ないのである。


精々「あなたにとっての名店の味を教えてくれてありがたい限りです。当店はその味が出せないですし、作り替えも効かないのでごめんなさいさようなら」…ここまでやってノーサイド、というものであろう。

もちろん黙って無視するのでも構わない。要は相手が「求めた味と違う」と文句を言う「までは」認めざるを得ないのだ。
 

「それはお前の舌が悪い」と言い返してもしょうがないし「お前の言ってる事はSFじゃない」は厳密に正しくないのだ。
対応の仕方が気に入らないとかは問題外…フィールド外での場外乱闘なので、別のルールに託すとしよう。

 
 

客(ファン)は盾と棒じゃない

→喜んでくれる客は守るべきお客様であって、お前の正当性を担保してくれるものではない。
「誰に向かって書いている」という事を相手の主張に対する対抗策としてはならない。


書き物は所詮自説を開陳しているだけに過ぎないものである。

それを喜んでくれる相手は希有にして得難い対象であるが、

たまたま趣味を同じくしているだけの相手である。
 

それが万物の神でもない限りは、正当性の保証とはならず、
「自分はコイツらの趣味嗜好など理解しきっているし、書いているものはコイツらが理解出来る程度に落とし込んでくれてやっている」
というメッセージになりかねない。


得てして客(ファン・好事家)というものはそうした(書き手にその意思があるかないかは関係無い)明言されざる意図をこそ(勝手に)敏感に感じ取るものであり、

一度メッセージとして発してしまえば、今まで気付いていなかった客や、好意的に解釈してくれていたファンも気付かざるを得ない。
 

そこに気付いてまでも擁護してくれる信者を増やしたいのであればそれも構わない事ではある。

それが本当に書き手として願った事であるのかは自身に問い質し続ける必要は有ろう。


ただ、SFという看板を掲げるのであれば(例えそれがどれだけいい加減で無知の産物であろうと)科学的論考をこそ背景とすべきものであり、無思慮無批判に全ての言説が受け容れられる事は、言う事全てが駄法螺であると認める事に表裏一体であるので拒否すべきなのであろう。


また、ある作品を喜んでくれた信者が別の作品が口に合わなかったからと言って、その瞬間から元・信者の裏切り者として扱わざるを得なくなる事態は容易に想定されるという事もまた、無視してはいけないであろう。


畢竟「誰に向かって書いている」と明言する事は落とし穴であり、精々自分が愛好する領域を好いたように書いていると嘯き続け、そんなヒマがあるなら作品の一本でも書いて示すか、黙っているかが良かろうという事になろう。


「そんな黙っている作家は無遠慮に叩いてストレス発散に役立てて良い」?
誰もそんな事は言ってないし、良いワケ無いし不健全である上に、作品の批判になってないなら戯言か暴言なので、相応の報いは覚悟した方が良い。

所詮世の中「あなた と わたし」なのだ。