息子がドイツで初めて具合が悪くなった。
評判の良い小児科病院(個人病院)へ連れて行った。
診察室に入ると息子は先生を見てまず泣き出した。
2歳の子供だって不安というものを感じるのだろう。
すると、
先生は黙って、息子をハグしてじっとそのままになった。
5秒、10秒・・・
息子は泣き止んだ。
「この人は恐い人ではない」と感じたかのようだった。
先生はゆっくり体を離した。
あとは
「お口あけて」でも、
「お腹見せて」でもなんでもスムースに進んだ。
ハグの文化なんだなぁ、と思った。
診察の間にも、この先生はすごく良く説明をしてくれた。【ドイツ語】
「こういう症状はこういう原因だから、
他にもこういう症状があるはず。
ありますか?
そう、
じゃ間違い無い。
そういう時にはこうするのが良いがこういう薬を使う事も有る。
でも、
この状態だとあれがこうだから抗生物質を使わない方法で試したほうが良いです。
抗生物質を使うと、○○で・・・」
これに対して家内も相当詳しくて(この事は前にも書いたが)すごく長い会話が交わされている。
(ドイツ語なので半分しか分からない)
分からんなぁ、と思っていたら先生は今度は私のほうを見て英語で説明し始めた。
(それでも医学用語は分からないものが多いが)
「今、奥さんに説明したんだが、
後で詳しいことは奥さんに聞いていただくとして、
今日のところはこの子は○○だから、
○○をして様子を見る事にしましょう。
取り敢えず○○に気をつけて、
○○が△△になるなら**しないといけません。
その時はこうします。
そうで無い時はこうしましょう。」
ドイツ人はみんなもともとすごく良く喋る、のかもしれないが、
これだけ会話していれば医者に行くたびに知識が増えて当然だな・・・とつくづく思った。
(家内が日本の医者にかかって質問を始めると医者は大抵居住まいを正したものである)
診察時間はそんなに長くないが(せいぜい15分)、
交わされる情報量が非常に多い。
この先生は特にそうだから評判が良いのかもしれないが、
これが私のドイツでの医者初体験だった。
このとき、
医師の説明をどこまで理解するかは誰の努力だろうか、
を改めて考えた。
この先生も家内も、
共になって努力しているように見えた。
医者と患者両方が同じ意識を持ち、
どちらの立場が上下という事も無く、
理解を共有するという下地がここには既に出来ているのだと思った。
改めて聖路加病院を初めとする日本の病院の不愉快な記憶が甦った一日だった。
【続く】