貴船石
十数年前、’鉢の祭典’という催しが上野グリーンクラブにてありました。
当時駆け出しだった私も拙い盆栽用小鉢を持参し参加いたしました。
その時、向えに売店をだす石屋のおじさんがこう言いました。
「兄ちゃん、絵描くのか。絵描けるんなら石の台座も作れるだろ。」
それからしばらくは石の台座の作り方のレクチャー、、、
それを隣で聞いていた鉢作家の豊生さん(慶心さんの奥様)が一言、
「あんた、ばかなことしてないで鉢屋でがんばりな!」と。
その後、ちょくちょくグリーンクラブの展示会売店で会うおじさんは
「春ちゃん、石の見つけ方教えてやる。」と。
(いつしかおじさんは私のことを’春ちゃん’と呼んでかわいがってくれていたんですが)
「山形の石なんか探すなよ。まっ平らな石を捜すんだよ。
平らな石を見つけたら、片っぱしからひっくり返すんだよ。」と。
ある時、「石の値段がまるでわかんないよ。」と言うと、
「いいか、この石とこの石どっちがいい?」
「こっちかな。」
「じゃあ、これとこれはどうだ?」
「こっちかな。」
そんな具合に十個ぐらい石がグリーンクラブの窓際に並んだでしょうか。
すると、おじさん曰く、
「な、物にはこうして順序や価値が決まってくるんだよ。」
「ほ~。」
十個の石を前にするとなんだかわかったような理屈も、
今思うとわかった様なわかんない様な。
(でも、おじさんが8回も結婚してるわけはなんとなくわかるような気がする。)
おじさんは石屋かと思えば、ときに骨董屋であり、鉢屋であったりもする。
自作の盆栽鉢を骨董の間に並べて売っていたりするけど、
これが結構雰囲気でてた。
決して上手でもないし、焼き物としても滅茶苦茶だけど、
存在感がある。
おそらく中途半端に上達しようなんて、はなから考えてないのがいいんだろうと思う。
でも、恐ろしく高い。
ちょっと大きめで5万円ぐらいは平気でついてる。
秋雅展の売店会場で、その日のおじさんはまるで売れてなかった。
するとおじさん5万円の自作の丸鉢を持ってどっかに出かけていった。
しばらくしてなんと5万円の長寿梅と交換して帰って来た。
そんなことを繰り返すこと数回。
(ちなみにおじさんの容貌はどっからみても危ないひとです。)
こっそりついて行って聞き耳をたてていると
「それじゃ私が損だ。しょうがない、こちらの木で手を打ちましょう。」
なんておじさんのやさしい声が聞こえてくる。
そんな光景を眺めていると、後ろで
「この長寿梅下さい。」
なんとさっそく客が。
(骨董や水石の間に盆栽が置いてあると目に付くんだよね。)
「もう少し安くならんか。」とお客。
するとおじさん、「じゃあ、いいでしょう、25000円で。」
「えっ!」「えっ!」
5万円がいきなり半額に。
その後もおじさんは盆栽を売り続け、
結構稼いで帰っていった。
それを最後におじさんとは会っていない。
風の便りに、上野グリーンクラブへは出入り禁止になったとのこと。
でもヤフーのオークションなんかで、おじさんの品物を最近よく目にする。
おじさんの落款は’獅子丸’。
人気急上昇。
でも、まだ取り替えた盆栽の値段にはほど遠いようです。
ちなみに、おじさんには本業があります。
サーフボードの輸入販売だそうです。
その世界では’草分け的な存在’だとも言っていました。
もちろん、確認したわけじゃありませんが。
十数年前、’鉢の祭典’という催しが上野グリーンクラブにてありました。
当時駆け出しだった私も拙い盆栽用小鉢を持参し参加いたしました。
その時、向えに売店をだす石屋のおじさんがこう言いました。
「兄ちゃん、絵描くのか。絵描けるんなら石の台座も作れるだろ。」
それからしばらくは石の台座の作り方のレクチャー、、、
それを隣で聞いていた鉢作家の豊生さん(慶心さんの奥様)が一言、
「あんた、ばかなことしてないで鉢屋でがんばりな!」と。
その後、ちょくちょくグリーンクラブの展示会売店で会うおじさんは
「春ちゃん、石の見つけ方教えてやる。」と。
(いつしかおじさんは私のことを’春ちゃん’と呼んでかわいがってくれていたんですが)
「山形の石なんか探すなよ。まっ平らな石を捜すんだよ。
平らな石を見つけたら、片っぱしからひっくり返すんだよ。」と。
ある時、「石の値段がまるでわかんないよ。」と言うと、
「いいか、この石とこの石どっちがいい?」
「こっちかな。」
「じゃあ、これとこれはどうだ?」
「こっちかな。」
そんな具合に十個ぐらい石がグリーンクラブの窓際に並んだでしょうか。
すると、おじさん曰く、
「な、物にはこうして順序や価値が決まってくるんだよ。」
「ほ~。」
十個の石を前にするとなんだかわかったような理屈も、
今思うとわかった様なわかんない様な。
(でも、おじさんが8回も結婚してるわけはなんとなくわかるような気がする。)
おじさんは石屋かと思えば、ときに骨董屋であり、鉢屋であったりもする。
自作の盆栽鉢を骨董の間に並べて売っていたりするけど、
これが結構雰囲気でてた。
決して上手でもないし、焼き物としても滅茶苦茶だけど、
存在感がある。
おそらく中途半端に上達しようなんて、はなから考えてないのがいいんだろうと思う。
でも、恐ろしく高い。
ちょっと大きめで5万円ぐらいは平気でついてる。
秋雅展の売店会場で、その日のおじさんはまるで売れてなかった。
するとおじさん5万円の自作の丸鉢を持ってどっかに出かけていった。
しばらくしてなんと5万円の長寿梅と交換して帰って来た。
そんなことを繰り返すこと数回。
(ちなみにおじさんの容貌はどっからみても危ないひとです。)
こっそりついて行って聞き耳をたてていると
「それじゃ私が損だ。しょうがない、こちらの木で手を打ちましょう。」
なんておじさんのやさしい声が聞こえてくる。
そんな光景を眺めていると、後ろで
「この長寿梅下さい。」
なんとさっそく客が。
(骨董や水石の間に盆栽が置いてあると目に付くんだよね。)
「もう少し安くならんか。」とお客。
するとおじさん、「じゃあ、いいでしょう、25000円で。」
「えっ!」「えっ!」
5万円がいきなり半額に。
その後もおじさんは盆栽を売り続け、
結構稼いで帰っていった。
それを最後におじさんとは会っていない。
風の便りに、上野グリーンクラブへは出入り禁止になったとのこと。
でもヤフーのオークションなんかで、おじさんの品物を最近よく目にする。
おじさんの落款は’獅子丸’。
人気急上昇。
でも、まだ取り替えた盆栽の値段にはほど遠いようです。
ちなみに、おじさんには本業があります。
サーフボードの輸入販売だそうです。
その世界では’草分け的な存在’だとも言っていました。
もちろん、確認したわけじゃありませんが。