長編お話「鬼子のヒオリ」の 31 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

間崎がしようとしていることを止めさせたいんだ、とそのおじさんが言う。鼻がへんに尖ってるとこなんてほんっとに気持ち悪いな、と私は思い、
差し出されたコーラを頑なに拒んだ。

「君は間崎の事を知っているね。私は間崎の後を探してここを探り当てたんだ。」
私はあ、もしかして、
「間崎さんと喧嘩したのってもしかしておじさん?」
と思ったので言った。
喧嘩が目的じゃないんだよ。とおじさんは悲しそうな顔をする。

「私は間崎を止めたいだけなんだよ。君のおとうさんのために。
たいせつな土地の神である君のおとうさんを生かすためにね。」
「でも間崎さんは…」
私が言いかけたのを遮って、おじさんは首をよこに振る。奴等のやり方は間違ってる。そう言った。

「君のおとうさんはまだ元気に生きているんだよ。これからだって命を保っていける。
なのに間崎達はその命ある神々をむりやり食い荒らしてしまっているんだ。このままでは国が滅ぶよ。」
と、そう話す。

「でも、間崎さんは国が滅ぶから、おとうさんを食べに来たって…」
「この国は滅ばない。」
おじさんは力強く言って私の右肩を掴んだ。
気力が抜けきっていたのでやめてください、と振りほどけなかった。こんな人に手を乗っけられているなんて、
ほんとにいや。

「現に君のおとうさんが命を保っている。まだ生きているんだよ、人も、神も、土地も。
間崎はそれを滅ぼそうとしてる。滅びが来るなんて、連名を焚き付けているんだ。」
おじさんと間崎さんの言っていることが真反対だ。
こう言う時に、信用する方は、決まっている。

「しりません! 家に帰るから送っていってください!」
私は涙を手で払って最大音量で訴えた。
「申し訳ない。
本当に申し訳ないと思っているよ。
ただもう少ししたら間崎がここに来るから、それまで待っていて欲しいんだ。」


グガルアアアアアアウアアアウアアア!

と恐ろしい唸り声が社の杜をがらがらと揺らした。

「鬼子に何をしやがったこのニンゲンッタレ目があ!!」
砂利を吹き飛ばすつむじ風とともに社の石だたみに三郎彦が舞い降りた。