宇都宮で行われた木下黄太さんの講演会。

僕は後ろの方で、こっそり話を聞いていました。


原発事故直後の、テレビ局の報道部の様子。

それは、テレビの裏側を知る僕のような男には、

とても興味深い話でした。


皆さんは、テレビ局が情報を隠蔽したと思って

いるかもしれませんが、「原発事故の直後は

隠蔽どころか、何も伝えられる情報がなく、

ただ混乱していた」といいます。


入ってくる情報は、福島第一原発がどのような

状況になっているのかではなく、首相官邸が、

ただアワアワしている様子だけ。


木下さんは、知り合いなどに電話をかけて、

情報を掴もうとしますが、どれもこれもテレビで

使えるような情報ではなく、情報を待つしかない。

そんな状況に陥っていたのでした。


そうこうしている間に、1号機、3号機が爆発。

1号機の爆発の時は、木下さんはタクシーの

中にいたため、状況を知らなかったそうですが、

報道局では、「これを放送したら大変なことに

なるんじゃないか」と言って、どうしたらいいのか

わからなくなり、放送するまで2時間ほど躊躇が

あったため、リアルタイムで放送していなかった

メディアの判断力の無さを語りました。


ちなみに、木下さんの“数少ない”友人に、

原発メーカーで、シミュレーションプログラムを

作っている人がいるそうなのですけど、津波で

壊れるという想定は一度もしたことがなく、事故が

起こってもすべてクリアできる設定になっていて、

「どれくらいの被害になるんだ?」と聞いても、

ゴニョゴニョ言うだけで、まったく説明ができず、

何を言っているのか分からなかったそうです。


これ以外にも、集めた情報をいろいろ紹介して

くれたのですが、僕が紹介するよりも講演会で

直接聞いた方が楽しいと思うので、割愛します。


ただ、これだけは言っておかないといけません。

テレビに出演していた中川恵一先生は、番組で

「大丈夫、大丈夫」と言っていたのに、放送が

終わって、「いやぁ、どうですか?」と聞いたら、

真っ青な顔で、「ダメダメダメダメ!」と言って

帰っていったそうです。


現場スタッフは、それを見ている。


専門家だって、裏では「ダメ」だと言っている!

最終的には、「他人を殺してまで、金儲けを

したいのか?」と考えるようになり、東京を離れ、

3日ほど頭を冷やし、この活動を始めたそうです。


実は、この講演会の後に、僕は直接、お話を

させてもらったんですが、僕のことはご存知で、

僕に言った「第一声」が・・・、


「こういう活動をしていても、

デメリットしかないだろ?」


話すことはいっぱいあったのに、開口一番、

「デメリットしかないよな!」という話をされ、

僕は即答で「デメリットしかないです!」

答えました。


「だよなー!」「ですよねー!」


もうこれだけで以心伝心状態ですよ。

自分にとっては、「デメリット」しかない。

これは木下さんも、そして僕も、同じ感覚です。


放射能がどれくらい危険かを調べて、伝える。

これは本来、テレビ番組でやるべきことですが、

今のテレビ局では、まったく放送ができません。

だから、ブログやTwitterで展開するんですけど、

個人的に得をすることは、何一つないのです。


「講演会で金を儲けているに違いない」とか、

「本やメルマガでビジネスをしている」とか、

そんなのは貧乏人の妄想に過ぎません。


テレビ局の社員で、それなりの役職に就ける

人だったら、そのまま仕事を続けている方が、

よっぽど収入がいいし、安定しているわけです。


僕だって、三流とはいえ、放送作家の仕事を

続けた方が、いろんなアイドルたちに会えるし、

メルマガを発行して小銭を稼いでみたところで、

たいして儲かるわけがありません。


さすがに本職の方が儲かります。


僕はかつて東京電力様の一社スポンサーの

番組もやらせていただいていましたし、今でも

放送されている、大間に原発を作ろうとしている

会社がスポンサーになっている番組の企画書を

書いたのは、何を隠そう、僕ですよ。


今はやっていませんけどね!


当時の僕は、あまりにも無知でした。

だけど、僕は銀座のマンションに住んでました。

あのセレブリティーな生活に、メルマガごときで

戻れません。金銭的メリットは、圧倒的に小さい。

しかも、儲けたお金で吉原にでも行こうと言うなら、

テンションもチンチンも上がろうってなものですが、

そのお金で何がしたいのか。


「もっと取材をしたい」のです。


僕は、これから「取材」に力を入れます。

いろいろな人に直接、話を聞こうと思います。

こんな面倒臭いこと、普通は、誰もやりません。

最近、よく言われる「カロリーが高いから」です。


だけど、割に合わない記事ほど、たくさんの人に

面白がってもらえるというのが、僕の経験です。

セシウム検査の結果を公表するのも面倒です。

でも、面倒で誰もやらないから、読んでもらえる。


木下さんも、かなりの年収と肩書きを捨てて、

今は何をしているかって、ひたすら高速道路を

運転しているんです。自分が体験したことだとか、

いろいろな人から聞いた話を伝えていくために。


で、ここからが、皆さんが一番聞きたい話だと

思います。木下さんは、なぜ健康被害に関する

情報をブログにまとめているのか。


「東京も危険で、避難した方がいい!」

「各地でさまざまな被曝症状が出ている!」


多くの方は、こうやって危険っぽく書いた方が、

不安を煽ってアクセス数が上げられるのでは

ないかと思うかもしれないのですが、実際には、

健康についての話を書くようになって、ブログの

アクセス数は大幅に減っているそうです。


人気取りが目的ではない!


木下さんが言う、「東京も危ない」というのは、

東京にいると必ず病気になると言うのではなく、

「リスクを背負う覚悟が必要だ!」ということ。


年配の人たちは、放射能の影響で何かあっても

死ぬだけだからいいけど、子供たちは、病気など

辛いものを一生背負っていかなければならない。

だから、「東京は危ない」と言っているのです。


東京の放射線量は、キエフと同じくらいです。

そのキエフでも健康被害は出ているし、当時、

キエフの子供たちはモスクワに逃がされました。

でも、東京の子供たちは、ほとんど誰も逃げず、

あげくに東京に人口は、どれくらいいますか?


チェルノブイリでは、土壌の調査をしましたが、

日本では、空間線量で「大丈夫、大丈夫」

言ってしまうため、調査がまったく進んでおらず、

そこには確かにセシウムがあるのに、セシウムが

あるという事実を認めようとしません。


それどころか、汚染された瓦礫を持ってきては、

バンバン燃やしているというのが東京の現状。

前代未聞の汚染を繰り返しておいて、被曝の

影響が出ないと考える方が不自然なのです。


そして、チェルノブイリでは具体的にどのような

症状が出ているのかを、僕たちは日本の衆議院

ホームページで見ることができます。


『チェルノブイリの長い影』という資料を、

ぜひダウンロードして、読んでみてください。


木下さんは、「僕の言うことは信じないと言う

人もいるでしょうが、少なくとも『衆議院』で

出している資料なら、読めるでしょ?」

紹介しています。


ちなみに、この資料の冒頭には、ウクライナの

医師たちが「どんな小さな症状も、放射能と

関係ないとは決めつけないこと」。これこそが

一番大事なことなんだと書かれています。


そこには、チェルノブイリの医師たちの失敗と

後悔の跡が見られる。だから、集まった情報を

皆さんにブログで伝える。実際に会ってみたら

わかるのですが、そこまで過激なことを言って

いるわけではないのです。


ブログと本人の話の間には、

けっこう大きなギャップがある。


皆さんも、機会があれば、講演会に行って、

「こういう人なのか!」と思ったらいいでしょう。

きっと、皆さんのイメージは変わると思います。