サン=テグジュペリの「人間の土地」に出てくる

ギヨメのように、文章を書きたいなと思っています。

 

------------------------------------------------------

それにしても、あの晩、なんと不思議きわまる地理学の講習を、ぼくが受けたことか! ギヨメはぼくに、スペインを教えてはくれなかった、彼はスペインをぼくの友達にしてくれた。彼は、水路学のことも、人口のことも、家畜家賃のこともまるで語らなかった。……ただゴーデスの近くに、ある原っぱを囲んで生えている三本のオレンジの樹について、<あれには用心したまえよ、きみの地図の上に記入しておきたまえ……>と、言った。するとたちまちにして、その三本のオレンジの樹が、地図の上で、シエラネヴァダの高峰より幅を利かすことになるのだった。彼はまた、……つまらない一軒の農家について語った。その生きた農家について。……すると、この夫婦の者が、ぼくらのいまいる所から千五百キロの遠隔の地にありながら途方も無い重要さをもつのであった。……こうしてぼくらは、全世界のあらゆる地理学者に知られていない事情を、その忘却とその驚くべき距離の奥から引きずり出してくるのであった。……ぼくは、地理学の先生たちがなおざりにした、あの羊飼い女を、その正当な位置においた。

サン=テグジュペリ「人間の土地」(堀口大學訳、新潮文庫)p.15-16

------------------------------------------------------

 

* * *

 

最近、スマートフォンを解約しました。

自分らしい時間を取り戻したかったからです。

長い長い移動時間に新聞と本が読めるようになり、今月に入って6冊読みました。

しばらく、こうやって過ごしてみたいと思っています。