「考えなさい、自分とは異なる誰かのことを / Think of Others」

Mahmoud Darwish

 

朝食の支度をするとき 考えなさい 自分と異なる誰かのことを

ハトにえさをやるのを 忘れてはいけない

争いへ向かおうとするとき 考えなさい 他者のことを

平安を求めている誰かのことを 忘れてはいけない

水道代を支払うとき 考えなさい 他者のことを

雲からの水で生き延びている誰かのことを 忘れてはいけない

家 あなたの家に帰るとき 考えなさい 他者のことを

テントで暮らす人のことを 忘れてはいけない

眠りについて星々を数えるとき 考えなさい 他者のことを

寝るための場所を持たない 誰かがいることを

自身を喩えて解放するとき 考えなさい 他者のことを

言葉にする権利を失った 誰かのことを

そしてあなたが遠くの他者のことを想うとき

考えなさい 自身のことを

そして声にするのです

「ああ、私が暗闇の中の蝋燭であったら!」と

 

原文はこちら

 

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M. ダルウィーシュは、パレスチナの代表的な詩人です。

1941年に生まれ、2008年に亡くなるまで、

パレスチナ人の心の琴線に触れる数々の詩を発表してきました。

 

パレスチナではエドワード・サイードよりも彼の方が断然知られていて、

ウォール・アートにも描かれていたりします。

タクシー運転手が詩を諳んじてくれた時はびっくりしましたが。笑

それだけ、彼らの心に沁みる作品が多いのでしょう。

この詩もアラビア語が韻を踏んでいて、シンプルに美しくできています。

 

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「モラルは詩に秘められた弾丸」と説いた詩人の、

最上級のモラルを見せつけられたような思いがします。

遠く、遠くの人を想えばこそ、

私が、彼が、彼女が、闇の中の蝋燭でいられますように。

いま、ここで。