実話です。

先日、いつもお世話になっているAさんとお酒飲んでた時に、Aさんが話し始めました。

Aさんの幼なじみのBさんという方がいらっしゃいます。Aさんと同じ50歳前後の方です。

Aさんの職場は大徳寺のほど近くにあるのですが、今から3ヶ月ばかり前のある日、Bさんがふと訪ねてきました。

大阪に住んでいるBさんが、随分久しぶりかつ突然に来訪したので、Aさんはどうしたのか聞いてみたのです。

大徳寺はBさん家の菩提寺で、Bさんのご両親(共に故人)のお墓があります。珍しいことに、Bさんは結婚式もここで挙げられたとか。

「もうちょっとだけ長生きさせてくれと、死んだおかんに頼みに来たんや」

Bさんは二型糖尿病で、近日中に足の切断手術を受けることが決まっていたのです。

糖尿病で足の切断に至る場合、10%の方が術後1ヶ月以内に亡くなると言われています。

このケースに当てはまらなくても、予後が非常に悪いことはよく知られています。

50歳の若さで足を切断するほど進行しているのですから、恐らく他にも相当悪いところがあるのでしょう。

Bさんはすっかり死を覚悟し、せめて少しでも多く子どものために財産を残そうと、東奔西走しておられたのです。

私、ここまで伺いまして、ただちにBさんと連絡して下さい、間に合うかどうか分からないけど、とにかく糖質完全に断つよう伝えて下さい、何とかして無理やりでも江部ドクターの診察予約取るから、と言ったのですよ。

悲しすぎるでしょ、50歳やそこらで死を覚悟して、奥さん子どもが困らないように必死になって、死んだ母親にもうちょっと時間くれ、なんて。

Aさんは「じゃあ、今言ってみるわ」とBさんの携帯に電話しました。

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Bさんの携帯電話は解約されていました。

「B、もう亡くなってしもたかな....」

たぶん......

手が届かないのが一番辛いです。