Quoi


ジェーン・バーキンの「Quoi」(クワ)を歌いました。作詞はもちろんセルジュ・ゲンズブール。


どうしようもない男を好きになった女性の心の叫びが歌われていて、

もういやなのに憎めない、なかなか終わりに出来なくて切ない気持ちがないまぜになった曲です。


Spotifyで音楽配信をした際、

ミックスをしてくださったKay Asanoさんから、

「Quoi」を歌ってみませんか?と先月お話をいただき、

初めて知った曲でした。


このところ私は、

自分の歌に対して悩んでおりました。

前から発声法に問題があり、

へんな癖を取りたい、

歌だけでなくナレーションにも両方に必要なこと、

とボイストレーニングに通って数ヶ月。


もちろん歌には心が大切、

でも心だけでは足りなくて

その心を伝える身体と技術がやっぱり必要だと思うから信頼できる先生を頼ることにしました。



呼吸の意識や声の響くポイントを教えてもらってそれを掴むのに必死。

すると今度はピッチがどんどん怪しくなり、

前はできていたことができなくなったり、

ますます歌が不安定になったりしました。


音が違うのはわかっているのに

声を出すときに色々考えてしまい調整がうまくいかず、

もうどうやって歌ったらいいのか全然わからなくなってしまったのです。

一番大切な「心」も見失いそうに。


一方で、「Quoi 」の動画の制作は

Asanoさんがどんどん色んな準備を進めてくださり、

仮歌から収録までサクサクと進んでいきました。


ところが収録を始めてみると「仮歌のほうが良い出来」だったりしてやっぱり不安定。

録り直しのテイクを歌いながら、「やっぱり私ダメ」と思いましたが、

この歌のどうしようもない怒りと切ない気持ちが気分に合い、すごく歌いたい気持ちに。


考えすぎて小さく縮こまるよりかは、

「勢いを大切に」と言われ、開き直って歌いました。

音も外れているところが色々あるけど、

これがいまの私、と受け入れることにしました。


先日、大阪出張があり、ひとりでホテルで過ごしていると、

大好きな「魔女の宅急便」のウルスラ(絵描きのお姉さん)の言葉を思い出して

夜中に年甲斐もなく泣けてきてしまいました。


魔法が弱くなり空を飛べなくなったキキが落ち込んでいるシーンです。

「そういうときは、ジタバタするしかないよ。描いて描いて、描きまくる!」


でもやっぱり飛べなかったら?

「描くのをやめる!散歩したり、景色を見たり、昼寝したり、何もしない!そのうち急に描きたくなるんだよ。」


そういうものかあ。

このシーンにこれまでも救われてきたことがあったけど、

まだこんな機会が巡ってくるとは。


ウルスラの言葉で泣いてしまうということは、

わたしは本当にフランス語の歌が好きなんだな、と思えました。


で、わたしもジタバタしていたら、

昨日くらいからちょっとトンネルを抜けたような感覚がありました。

発声についてはまたひとつわかったことがあったし

ピッチも地道に一音一音、鍵盤やチューナーで確認して耳に覚えさせていけば大丈夫。


そんな時期とこの「Quoi」の動画作りが重なったので、

忘れられない歌になりそうです。


プロデュース、音源制作にミックスと色々してくださったKay Asanoさんと、

マスタリングをしてくださったTakeshi Horimotoさん(一度もお会いしたことがない方です。ほ」なのに今回のマスタリングのために色んなフレンチポップスを聴いて勉強してくださったそう)に心から感謝しています。