ある日の夕方僕はまた、ふと例の場所へ行きたくなった。
と言うよりは行く事になった。

その店は一風変わっていて、造りはちょっと小洒落たカフェみたいだが、中を覗けばアクアリウムの店であった。
そこの店主はとても気さくで面白い男だが、何より変わっている。

「あ、ども」が彼の発する一言に誰もが心地よいを感じるらしい。


そこに集まる客もこれまた不思議で客なのか、店員なのかわからない。ただ言えるのは大工だったり、設備屋だったり材料屋だったりと本当この店で家が建てられるのではないかと思える。

この摩訶不思議な感じがこの店の魅力なのであろう。だから、僕もついついと長居してしまう。
当然、お客同士も自然と顔見知りになるのだが、そこは程よい距離感があり干渉されない大人の付き合いが出来るのも、魅力なのかも知れない。


そんな事もあり、たまにはお客さん同士で呑むのも悪くなかろうとこの店の店主の計らいで、呑む事になった。

呑むにつれて色々と話をした。趣味の話や、色恋話し仕事の話しなどネタに尽きない。
このままこの小説風が官能小説になったらどうなのかとか。でも流石にそれは無理と丁重にお断りをさせてもらったが、面白いかもしれないと僕は思った。


人は誰も多くを語らないが、背負っている物は変わらないのかも知れない。





すると突然電話が鳴った。









未完




追加






すると突然電話が鳴った。





「焼き鳥まだぁ?」



その電話の主は奥方様からであった。




それまでの楽しい気分が一瞬にして吹っ飛び凍りついた。

そうだ、確かに鶏皮、ネギ間、鳥ももを頼まれてたはず。僕はは完全に忘れていた。



いちように暗雲がたちこめる。代わりになる物はないか、帰りの電車の中で生きた心地はしなかった。


仕方なく、開き直り駅の近くなコンビニに立ち寄るが時は辺りを暗闇に変えている。日付けが変わったこの街のこの時間に、ろくなものが無いのは無理もない。

とりあえず冷たい麦酒をしこたま買い込む。正に天国と地獄を短い時間で味わうとは思いも寄らない。これから待ち受ける出来事は安易に想像出来やしない。僕は肩を落とし家路へと向かう。


街の冷たい風がほろ酔いの僕の身体をそっと吹き抜けたのであった。