大麻最前線
20世紀前半にアメリカで石油化学産業が勃興してからその利権のために長らく悪者にされてきた大麻。SNSで情報収集している人たちの多くはすでに、大麻がどれほど人間や環境にやさしい植物なのか、どれほど私たちと長いつきあいがあるのかは知っていますが(日本人も1万年ぐらいつきあってきています)、巷ではまだまだ「大麻」というと麻薬の親分、違法で危険で怖いもの、というレッテルを貼られています。
が、すでに大麻=悪のウソは科学的にもバレバレになっており、世界各国でも医療大麻を皮切りに合法化に向けた試みや議論が進み、嗜好用大麻まで解禁になるところが出てきています。
1961年以来、大麻悪玉説に貢献してきたWHO(世界保健機構)も、ついに来月2018年6月、大麻の再審査をすることになりました。
カナダでは7月から医療用・嗜好用・産業用に関わらず、大麻の全面的解禁に入ります。国民が自らの未来を当たり前に議論し、研究する国。さすがです。トルドー首相は2015年の総選挙で大麻の合法化を公約に掲げて、カナダ国民はそれを選びました。
こうしたタイミングで、高城剛氏が2年かけて世界各地へ飛んで取材し、日本の読者のために書いた素晴らしい本が大手出版社に総スカンを食らい、Amazon Kindleでベストセラーになっています(発行は今年2018年4月20日。)。しかも医療や健康ではなく、国際ビジネス部門で、です。
大麻ビジネス最前線: Green Rush in 21st century (未来文庫) Kindle版
本書の要約をそのままコピーします(文字修飾と追加の改行は当ブログで勝手にやりました):
1948年、日本では大麻取締法が制定され、大麻の所持や栽培、譲渡などに関する規定が設けられて以降、「ダメ。ゼッタイ。」というキャッチコピーとともに、覚せい剤同様に扱われていた大麻が、いよいよ2018年6月に、世界保健機関(WHO)による取り扱いが変わると目されている。
いまも日本では、多くの芸能人や著名人が大麻取締法のもとに、所持や使用によって起訴・逮捕される日々が続き、もちろん、法律を破ることは正しくない。
だが、一旦世界に目を向けてみれば、大麻に含まれる成分がもつ効能を評価し、「医療用」として大麻を合法化する(あるいは、厳密には違法だが刑罰は見逃すという「非犯罪化する」)国が、驚くほどに増えている。
最近の研究によれば、大麻にはがん細胞を縮小させ、認知症やてんかんなどの治療に効果を発揮する成分が含まれているのが、科学的に判明している。
だからこそ、世界保健機関も大麻の扱いに関する記述を書き換える用意をしているのである。
こうした事実を、常にビジネスの好機をうかがっている投資家や事業家が見逃すはずがない。
すでに、アメリカやイギリス、カナダでは、医療用大麻および嗜好品としての大麻を一大産業にすべく準備が急速にはじまった。
このあたらしいムーブメントは、現在「グリーンラッシュ」と呼ばれている。
しかし、日本において大麻を科学的に研究し、精査した機関は存在しない。
なぜなら国内では、大麻取締法によって「研究のための使用」さえも禁じられているからだ。
現在の日本は、「大麻ガラパゴス」と言わざるをえない状況である。
こうした実情は、裏を返せば大麻ビジネスに参戦する好機に他ならない。
一体どこに、いまだ誰も手をつけていない、金脈ならぬ、緑脈があるのだろうか。
世界中で「緑の革命」は、すでにはじまっているのだ。
-以上、本文より-
アマゾンのKindleを持っていなくても、スマホやタブレット、PCに無料のKindleアプリをダウンロードすれば読めますので、…というか、画像やチャートはむしろそのほうが鮮明で拡大やスワイプもしやすいので、まだの方はぜひこの機会に。
以前も書きましたが、Kindle Unlimitedのサービスに登録すると、月980円で、いろんな対象電子書籍が読み放題。初月無料で解約も再開も簡単なので試してみてください。
読めばわかりますが、ネットで拡散されているような有用性のことだけでなく、どれだけビジネスとしてポテンシャルが大きいのかも具体例が次々数字つきで出てきます。雇用もどんどん創出されるのです。しかも、石油化学で疲弊した人体や環境にやさしい植物で。
医療や嗜好用はもちろん、産業用として衣類、紙製品、建材、プラスチック、燃料、美容・健康食品・化粧品なども開発が進んでいます。自動車の素材にもなります。
産業用大麻は、各国で栽培が復活してきており、2016年に中国で5万ヘクタール、カナダ3.3万ヘクタール、EU3.3万ヘクタール、アメリカ4千ヘクタール。日本では8ヘクタールしかないという…(神社のしめ縄や横綱の綱、七味用の麻の実ぐらいですね)。
大麻ビジネス最前線より画像拝借
仮に今すぐに法整備のための議論を開始して、それが比較的早く解禁になったところで、供給は当面すべて輸入に頼るしかなく、割高になるわけです。国土の広範囲が放射能汚染されてしまったとはいえ、まだいたるところに大麻栽培できる土地が残っているこの国で。本来なら自給自足で農家の安定収入にもなり、いろんな新ビジネスで雇用創出にもなるはず。
読み進むほどに、大手出版社は誰に忖度してんねんw…とそのチキンぶりと事なかれ主義に唖然としてしまいます。医療利権と石油化学利権…他に何利権があるのか知りませんが、金儲けしたいのであれば人体や環境を破壊し客を騙し続けることばかりでなく、破壊された地球を修復し、人々を長期でハッピーにする金儲けも考えればよさそうなものを…。まぁ大麻悪玉説を作り上げた強欲な人たちがほとんど死に絶えた頃なので、やっと一歩、石油以前の頃の正しい位置に向かうわけですね。
たぶん、高城未来研究所のメルマガを購読している若い人たちがイニシャティブをとって海を渡り、ビジネス方面から目下の問題を打開していくでしょう。そして、いま身動きとれない人は、とりあえず情報拡散に努めるべし?
そもそも大麻ってな~に?
そもそも大麻とは何か?
大麻、麻、大麻草、ヘンプ、マリファナ、ハッシッシ、グラス、カンナビ… これらはすべて同じ植物を指しています。
大麻ビジネス最前線の第2章から抜粋します:
- アサ: アサ科一年草の大麻草のこと。植物学では植物名をカタカナ表記する。
- 大麻草: 繊維、種子、根、花穂、葉を含めた植物体のこと。
- カンナビス: 大麻の正式な学術名
- 麻: アサを漢字表記したもの。麻畑、麻の実、麻子仁でよく使われる。
- 大麻: 大麻取締法第1条でいうところの花穂と葉の部位のこと。法律用語。
- マリファナ: 大麻草の花穂を乾燥させてタバコ状にしたもの。
- ヘンプ: 麻の英語名Hemp。主に産業用に利用されるアサのこと。マリファナと区別するために使われる。
(築地書館「カンナビノイドの科学」より抜粋)
( ゚Д゚)えって感じですよね。初めて知ったときは。80年代頃までは、麻といえばちょっと高級な夏服素材として出回っていました。あれって大麻草だったのね、と。
柳田国男の「木綿以前の事」では、日本では冬でも麻を重ね着していたことが出てきますが、それくらいどこにでもある植物で、実は世界中で、衣食住さまざまな場面で活用されてきた植物でした。
大麻が素晴らしいのは、亜熱帯から寒冷地まで、地球上ほぼどこでも育つことなんです。大麻とヒトは本当に長年共存してきたのです。それをよくもまぁ、20世紀になって突然、コカインやヘロインと同列の廃人製造機のように仕立て上げられたものです。
大麻に含まれる薬効成分、CBDとTHC
大麻に含まれている成分の総称をカンナビノイド(Cannabinoid)といい、カンナビノイドには80種類から104種類の生理活性物質が存在します。
その中で薬効成分として注目されているのが
- CBD(カンナビジオール)と
- THC(テトラヒドロカンナビノール)。
THCが陶酔成分であるため大麻まるごと麻薬扱いされてきましたが、日本で育つ大麻にはもともとTHCはほとんど含まれておらず、また世界的にも多い場合で20%程度の含有量だったとか。
現在は、嗜好用大麻解禁に向けてTHCが100%近い品種も作られているそうです。合法化されている国では、医療大麻のTHCは0.2~0.3%未満に規制される場合が多いようですが、嗜好大麻はTHC含有量で課税することが望ましいと思われます。
一般的な大麻の危険性はコーヒーやアルコールより低いということが明らかになってきていますが、コーヒーやアルコールを所持していたら逮捕されたり、子どものいる家で保管が禁止されたり、作付けしたら違法になったりするでしょうか。(おまけに、大麻は薬物の中毒症状を和らげる効果があることもわかってきているとか。)合法化は自然な潮流といえます。
脳も人体もカンナビノイドを補ってほしがってるかも
NHKスペシャルの人体シリーズなどで、神経伝達物質がどんな役割を果たしているか可視化されてきた昨今、ドーパミンやアドレナリンやセロトニンなどが幸福感や興奮をもたらして、精神状態を正常化してくれるメカニズムが認知されるようになってきました。不足すれば食事やサプリで補えば効果があることも知られるところ。
実は1960年代にイスラエルのラファエル・メコーラム博士が発見したことなのですが、人体にはカンナビノイドを受け入れる受容体があり、それはエンドカンナビノイドと名付けられました。
どんな働きをするのか、こちらの動画でNスペのようにわかりやすく解説してあります。16分ちょっとなのでご覧ください。
解説されているのは、高城さんも参考資料を使われている「日本臨床カンナビノイド学会」の代表理事である正高佑志先生です。
ガンだけでなく、てんかんや認知症など本当にさまざまな人体の不調や神経の疾患を改善するメカニズムが少し見えてきます。
日本の大麻規制はどうなってるの?
日本では、1948年にGHQの命令によって大麻取締法が制定されました。そのままずっと放置です。
このイラストを見ると、ヘンプシードやヘンプシードオイル、七味唐辛子に入っている麻の実、衣類などが合法的に流通している理由はわかります。
大麻ビジネス最前線より画像拝借
しかしながら、この法律が施行されている限り、日本では大麻草を医療に使うための研究を行うことができないので、科学的検証や議論もできない状態が永遠に続くことになります。
さらに第4条の規制により、大麻から作られた医薬品は、医師も患者も使うことができないという禁止条項が入っているのです。(法の詳細は割愛します。リンク先かKindleで読んでくださいねw。)
アメリカでは医療用大麻の合法化を求める運動で、違法とされる大麻草を自己治療に使い、何回も逮捕投獄されながらも、その効果を実体験によって確認し、世間の支持を集めるという研究家や医師らもいましたが、日本ではほぼ皆無。
(高城氏は冒頭では現代医療に見放され、自家栽培の大麻で病状改善が見られていたガン患者、山本正光さんが大麻取締法違反で逮捕され、その後2016年7月に論告求刑と最終弁論を控えたまま亡くなった例を紹介しています。)
もし日本で医療用大麻が合法化されたら?
日本臨床カンナビノイド学会の調査によると、医療用大麻の対象疾患として、欧米の法律で定められた条件を日本の患者数に当てはめると、約4500万人が医療用大麻の対象患者となるそうです。
つまり日本人の3分の1。効果の薄い慢性疾患の医療で苦しむ患者を救うだけでなく、一般的疾病での医療費無駄遣いを減らし、税収増を伴う医療財政の健全化や、大麻栽培を導入する農家の収入増や流通まで含めた経済効果まで入れると無視できない規模といえます。
日本で薬効のあるCBD成分は買える?
日本では医療として大麻を使うことはできないとわかりましたが、なぜ最近、CBDオイルをネット購入している人たちがいるのでしょうか。
日本では2013年にCBDオイルの輸入が始まったそうですが、なんとこの国は世界の潮流に逆行して、徐々に規制が厳しくなり、CBDオイルの事業から撤退を余儀なくされた企業が増えているといいますw
そしてそこには陶酔成分のTHCが絡んでいて、しかもTHC含有量が何パーセント以上だからダメ、というものではなく、THCは天然か合成か見分けがつかず、天然であれば禁止対象の茎や葉、樹脂の可能性があるから、THC濃度0.1%以下でも大麻所持と見なされ違法とされるリスクがあるというのです。なんと非科学的な…。見分けがつかないのは同一の分子構造だからであって、部位ではなく成分含有量を元に良し悪しを決めるべきでしょう。
ちなみに欧米では規制対象は天然・合成にかかわらず、THC濃度0.2~0.3%以上。
コロラド州のエリクシノール社(Elixinol)のように、完全に日本の法律に適合するように製造・販売している会社から購入することはできますが、少し割高になります。
これはCBDオイル300mgが入ったベーシックな量(30ml)のElixinol™ナチュラルドロップス。日本のサイトで税込みで送料710円を加えると11,294円になりますが、米国Elixinolで同じ製品を購入すると、$29.99+世界一律送料$50.00で約80ドル。現在の円ドルレートは約1ドル110円なので8,800円ですね。
一番安いのはCBDオイル100ml含有の同量のナチュラルドロップスですが、数滴ずつ飲むとはいえ、ちょっと高いですよねぇ。
他にも
という"CBDオイルの正規輸入通販サイト"などもあり、もう少し安い商品もありますが、日本で適法になる製品かどうかは購入者自身も確認しなければいけません。なんせ安倍政権になってから見せしめや弱い者イジメが趣味みたいになってきている警察や検察相手ですから。
1万年もそこらじゅうに育っていた植物。だから麻田さん、麻生さんなど麻のつく名字の人もそこらじゅうに…。陶酔成分のTHCさえ課税で社会がコントロールすれば、本来自分でハーブや野菜のように自由に栽培できていいはず。嗜好用であれ、産業用であれ、医療用であれ、お上にとやかく言われる筋合いのものでもないだろうと思いますが、そのうち価格はどんどん下落するでしょう。(個人的には不眠症対策として10分の1の価格まで下がることを期待するか、既に一部の国でやってるように自家栽培が合法になってほしいところ。)
実際、コロラド州の嗜好用大麻の卸値は2016年上半期だけで1ポンド(約450g)あたり2100ドルから1400ドルまで下落してたりします。
ちなみにコロラド州はいろんな意味で最先進州で、嗜好用大麻の合法化はワシントン州とともに2012年でアメリカで最初でした。牽引しているのはデンバーの近くにあるボゥルダーという10万人程度の全米一の頭脳シティ。太陽光などの再生エネルギーを共有しあうスマートグリッドでも知られる都市ですね。
合法化の前に非犯罪化への移行が進んでいた欧州
大麻に限らず、麻薬にしろアルコールにしろ依存症状が出て本人や周囲に問題が起きている場合に非常に重要なことは、社会がその依存者に対応するにはどうすればみんなにとって一番いいのか、という議論をするということ。違法だから厳罰を与えれば解決するのか。取り締まりが厳しい国ほど犯罪は減っているのか。
私が見た1990年代前半の英国は、大麻はまだ完全に違法でしたが、売人と買い手は同罪ではなく、買い手は被害者と見なされていました。
大麻所持が見つかってもわずかな量なら注意されるだけで済むと常習者の英国人学生から聞いてびっくりしたのですが、その後、別の友人と大麻常用者を追うドキュメンタリー番組を見ていたときのこと。私が「逮捕を覚悟で出演するわけないのに、こんなヤラセ番組作るなんて」と呆れていると、逆に呆れられて「何言ってるの?購入者は被害者であって、犯罪者は売人のほうだよ」と言われたのでした。…たしか大麻だったと思いますが、麻薬であっても同じ議論だったかもしれません。警察がしょっぴく発想しかない日本や当時のアメリカでは考えられないことですが。
高城さんが取り上げた国でユニークだったのがポルトガルで、かつてこの国はヨーロッパでもっとも麻薬問題が深刻で、国民の1%がヘロイン中毒だったといいます。(日本の人口でいうとざっと100万人が中毒ってことですね。)
当時は世界各国と同じように薬物を厳しく取り締まり、依存症患者を犯罪者として扱っていました。
ポルトガル政府は、これ以上、薬物依存症の患者が増加することはなんとしてでも回避したいと考えて、有識者委員会を組織。学者や医師らでより良い対策を検討し、2001年にこれまでの政策を真っ向から覆す対策をとりました。
ヘロイン、コカイン、大麻などすべての薬物を「非犯罪化」するとともに、薬物対策に費やしていた全額を、依存症患者を社会復帰させるための財源としたのです。
薬物依存症は薬物そのものというより、依存しなければならなくなった環境要因に原因があると考えました。
さらに政府は大規模な就業プログラムを組んで、依存症患者がビジネスを始めることができるように貸付制度などさまざまな政策を実行。
結果として、薬物使用者は50%減少。過剰摂取による死亡も激減し、ヨーロッパで最も薬物死亡率の低い国の一つとなったのです。法改正から20年近く経過した今日では、薬物政策の成功例として知られるようになっているとのこと。
他にも欧州には合法化の前に非犯罪化に取り組む国がいくつもあり、厳罰化よりいい結果をもたらしているのは、ポルトガルの例に倣ったのもあるでしょうが、欧州にはすでにエイズ対策において、ハームリダクション(害の削減)という社会的選択と実践の積み重ねがあったのです。薬物使用を厳罰化する代わりに、注射器で回し打ち感染しないよう、清潔な注射器を提供するなどして、感染予防したことが発端とか。
たまたま昔つくった法律があるから意地でも守らせるというのではなく、社会にとって何が必要かをみんなで真剣に議論し、試行錯誤する世界の国々。数々の例を見るにつけ、ワイドショー病で一億総思考停止とも言える状態が年々ひどくなっている我が国の現状を思うと、読んでいてつらくなってくるときもありました。
が、だからこそ、自分の足で世界を飛び回って得た情報を日本語で運んできてくれる人たちというのはとても貴重な存在です。
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「大麻」や「CBD」、「ヘンプ」でググるとここ数年、日本にいると見えなかった外の世界が垣間見えてきます。それでも、自分の足で直接取材してきた高城氏の著書は、そうした切れ切れのネット情報では見えないところがコンパクトにぎゅっとまとめてあります。
大麻ビジネス最前線は、大麻にすでに関心がある人はもちろん、大麻など自分に関係ないと思っている人にも、ぜひ一度目を通して頂きたい良書です。きっと大麻以外のことがたくさん見えてきます。