Japon : à droite toute ! 日本:完全に右へ! | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

どこかの国の某首相が、これまでさんざん放置してきた某団体の(犯罪の域にすら達している)暴力的な差別的言動を批判するようなことを言ったとか言わないとか。自分の熱心な支持層の言動を批判するとはいい度胸だと思う今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?

実に久し振りに更新します。しかも、日本の話題です。


週刊誌 Le Nouvel Observateur  の2013年4月4-10日(通巻2526)に掲載された、 Japon : à droite toute !  (日本:完全に右へ!)という記事です。

副題は、『「家族、伝統、祖国」三部作に基づいた憲法?』というようなことです。
画像は記事のイメージ、その下に訳を載せておきます。


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Monde

UNE CONSTITUTION FONDÉE SUR LA TRILOGIE “FAMILLE, TRADITION, PATRIE” ?

Japon : à droite toute ! 


 


Dépassé par la Chine, talonné par les dragons de la nouvelle Asie, le Japon souffre d’un sentiment de déclassement qui profite comme toujours à l’extrême-droite et aux populistes. Avec un Premier ministre qui flirte avec certains démons du passé... 


(中国に追い越され、アジアのドラゴンに追いつかれた日本は、いつものように極右と大衆迎合主義者を利する落伍感に苦しむ。ある種の過去の悪魔と戯れる首相とともに…)


DE NOTRE ENVOYÉE SPÉCIALE


二倍の人数の警官に護衛された彼らは、ジーンズとバスケットシューズを履いた、せいぜい十人程度の若者たちだ。東京の静かな小路、北朝鮮代表部が入る人気のないビルの前で立ち止まる。「朝鮮人は出て行け!」若い女が拡声器で喚き立てる。「お前たちは日本の金をすすっている! お前たちはキム・ジョンウンの腹を肥やすために我々の金を吸い上げている! とっとと失せろ! お前たちはここにはいらない!」 ひょろ長い男が彼女に続ける、「お前ら愚か者、卑怯者、お前らは爆弾で韓国を脅迫してばかりいるが、失せろ! 我々を喜ばせろ、半島全部を吹き飛ばせ! 南も北も、お前ら朝鮮人全員片づけてやる!」 こうした幼児的な攻撃性を持った熱弁が繰り広げられる間、地面に置かれたパソコンがその場面全体を撮影する。示威行動が解散するとすぐに、ビデオはインターネットに投稿され、そこでは匿名の加入者の集団が見ることになる。

 2007年に創設された、在特会、「在日特権を許さない市民の会」と名付けられた、この極右の集団はソーシャルネットワーク上でその人気が跳ね上がり、現在では12000人の共鳴者を数える。3月のこの日曜日のように、200から300の会員が、大半が軍国主義時代の強制連行された労働者の子孫である、韓国人の強固な共同体が住むことで有名な地区、新大久保の広場などに集まる週末にしばしば彼らを目にする。いかなる挑発にも屈せず、極右主義者らは、日出る日本の正統な国旗ではなく軍国主義帝国の、太陽が血の色の光の筋の冠を広げる大量の旗を振りかざす。「“Go Home ! ” AIDSを撒き散らす朝鮮人の売春婦を追い出そう! 立ち去れ!我々はお前たちにも、お前たちの妻にも子供たちにも、一切容赦しない!」と、はっきりと叫ぶ。反対する少数の集団が彼らを黙らせようとすると、口調は一気に強くなる。「裏切り者! 恥知らず! 朝鮮人をガス室で殺せ! 不法入国者を全員首つりにしろ ! ゴキブリに死を!」 敵対する双方の間に入るにとどまる警察官の落ち着いた視線の下で、在特会は喚く。

 その伝説的な礼儀正しさと、慎みという素晴らしい知恵を持つ日本文化が、どうしてこのようなおびただしい怒号を生み出すことができたのだろうか? アメリカ法の影響を受けた体系の中で、ヘイトスピーチを抑圧する法律のないことが、まず原因に挙げられる。しかしとりわけ、否定論すれすれの正当化のせいでもある。「我が国にはユダヤ人も黒人奴隷もいないし、アパルトヘイトもなかったという理由で、我々は差別主義と無縁だと信じている」と、哲学者の鵜飼哲は嘆息する。彼は1980年代のフランス留学中に差別主義の問題を発見したことを告白する。「この韓国と中国に対する排外主義は純粋な人種差別主義であり、表現の自由を口実にそれと闘わないようにしている、というのが真実だ!」

 ジャーナリストで、在特会に関する本の著者である安田浩一もまた、憂慮している。「“在特会”員には、目的が一つしかない。彼らの想像の中で不当な特権を享受する韓国人に対する憎悪を喚き立てること… イデオローグもトップもいない。頭が空っぽの欲求不満になった集団がいるだけだ」と、彼は判断する。しかし彼らのアジテーションが本当の恐怖の雰囲気を醸し出しつつある。」 実際、これらの狂信者たちは、日本に対してほんの少しでも批判を表明した人物を攻撃し、Eメール、ファックスで爆撃し、自宅の門の前で百人連なって示威行動する… こうして彼らは、第二次世界大戦の間ニッポン軍に性的どれとして仕えることを強いられた、韓国、中国、マレーシアの女性たち、「慰安婦」という常にタブーとされてきた問題のための写真展を中止させることに成功した。同じく、ある韓国の女優が広告のために選ばれたことを知って、嫌がらせによって力ずくで辞めさせた… 安田に関しては、脅迫のEメールも脅迫電話も数えきれない。あるデモ行進に彼がいることがわかったとき、極右集団は叫び始めた。「安田、死ね! 安田、死刑台に行け!」

 この喧嘩腰は、彼によると、40%が不安定雇用と派遣というアルバイトしか経験したことのない20から35歳の世代の絶望によって部分的に説明できるという。かなり前から日本に影響を及ぼしている経済停滞とともに、彼らの憎しみは歴史的地位の低下に痛めつけられた社会の右傾化に寄与している。「明治時代から、日本は自らアジアの全ての国々よりも優れていると感じてきた」、東京外国語大学教授、西谷修は説明する。まず、ヨーロッパのどの植民地帝国とも同じように、近隣諸国を蹂躙してきた植民地支配者として。次に、第二次世界大戦後、日本を第三世界の大海の中の唯一の現代国家にした、目覚ましい経済成長のおかげで。そして今、中国が日本を追い越し、韓国がすぐ後ろを負い、台湾が近くで追ってくる… 日本は実際に、深い脱落感に苦しんでいる。」

 こうした痛々しい感情を、一部の血の気の多い議員が和らげようとする。最も輝かしいのは、疑いなく、石原慎太郎である。80歳の前都知事、昨年秋に、尖閣諸島の買収の企ての結果として、たった一人で中国との重大極まりない危機の火付け役となった。作家で、成功した脚本家で、三島由紀夫の友人だった石原は、同胞の誇りを回復して自国が“has been”ではないことを証明することを夢見て、際限なく甲高い国粋主義を吹聴する。「日本は中国に嘲弄され、愛人のようにアメリカに誘惑されている… 我が国の政界の終わりのない漂流と決別するために、官僚と利益団体の支配を砕くことのできる、強い指導者が我々には必要だ」、いつものようにそう断言する。ちょっと誇大妄想のようだが、救い主の役割には実によく合っているようだ。

 自らの野望を実現するために、石原はもう一人の大衆迎合主義の大物、43歳のカリスマ的な大阪市長、橋下徹とくっついた。一緒になって、彼らは新党、日本維新の会を結成したところだ。同党は昨年の国政選挙で54議席を獲得し第三党となった。橋下は橋下で、地方と中央の依存関係を断ち切って、ドイツ流の抜本的な地方分権のために闘う。その究極の目的は同じだ。強い権力、さらには「独裁的な」権力を、重荷とコンプレックスを断ち切った日本に打ち立てることである。

 極右の前の世代が皇室への信仰に集中していたのに対して、「たくましい」新世代の極右は、中国、韓国、ロシアといった近隣諸国に対してあえて態度を明確にし、領土の主張に抵抗する。次第に多くの声が今や、1946年の平和憲法、特に軍を単なる「自衛力」に貶めている第9条の見直しを呼びかけている。

 それが、もう一人の象徴的な人物、新首相、安倍晋三が強く固執する点の一つである。政界の「保守」派に属するとされる安倍はしかしながら、有効な戦闘を開始するために現地でアメリカの同盟に追随することのできる、軍隊を日本のために望んでいる。彼が「国防軍」と改名することを望んでいるものだ。彼はまた、減少する一方だった軍事予算を増額したいとも思っている。多くの点で、日本の新たな指導者は、自らが党首を務める、尊敬すべきはずの「自由民主党」よりもポピュリストに近いように見える。

 首相の立場には同調しないが、元外務副大臣のジミントー衆院議員、伊藤信太郎は「他のどのような独立国」と同じように、憲法の再検討の可能性を擁護する。「結局それは、ハムラビ法典でも聖書でもない!」と彼は強調する。「この条文はアメリカ人によって英語で書かれ、日本人の精神に適応していない。日本は多宗教国家であるのに、キリスト教の概念に基づいている。我々を防衛することに“自然”権を援用するのに何の問題もない…」

 非常に尊敬されている憲法学者の樋口陽一はずっと批判的だ。改憲案を子細に検討すると、それが「真の国粋主義革命」であることが明らかになると、彼は評価する。「政治のマス目を右に押しやり、政府を過激な国粋主義に押しやる、安倍の個人的な素因が存在する」と、樋口は分析する。「処刑を免れて1957年に首相になった、祖父の岸信介への、真の信仰に身をささげているように見える。」

 祖父が支配的な人物だった軍国日本の栄光を安上がりに洗い流すという誘惑にどう考えても強くかられた、安倍の歴史修正主義的な宣言を捕えるのに、他の評論家は苦労しない。「慰安婦」? その存在を否定しないが、安倍は帝国の軍隊が演じた役割についての疑いを表明する。皇族、現地のマフィア、さらには利益誘導に関する責任を拒絶する否定論者のように。その選挙運動で、安倍はそもそも、内閣官房長官だった河野洋平がこれらの犯罪における日本の責任を認めた、1993年の「河野談話」を見直すと約束していた。もう一つの不一致点は、1937年に日本の占領軍によって20万から30万人が殺害されたとされる南京大虐殺である。安倍の党のおよそ百人の議員は、この犯罪を、日本を汚すために創られた「神話」として、激しく否定している。

 哲学者の鵜飼哲は、アジア地域の全ての国々における国粋主義の高まりを、不安を抱きながら観察する。「あらゆる方面のこうした怒号を見て、何も思い出しませんか? 百年遅れで、我々は第一次世界大戦前夜のヨーロッパと同じ状況にいるのです。何もしなければ、破局の可能性も否定できません…」


URSULA GAUTHIER

Le Nouvel Observateur 4-10 AVRIL 2013, N° 2526



文句 コメント がある人は、元記事の執筆者か版元に直接言ってくださいね。
私は、あくまでも参考文献として引用しただけです。