Le pétrole contre la démocratie 民主主義に反する石油 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

10月に投稿しかけて、忘れていた記事がありました。
なぜ忘れていたかは、あえて記しません。

もう遅いですが、内容そのものは古びていないと思います。

読んだ当初は、興味深い視点だと思ったのですが…


週刊誌 Le Nouvel Obsemateur の2013年9月19-25日(通巻2550)に掲載された Le pétrole contre la démocratie (民主主義に反する石油)という記事です。




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ÉNERGIES

LE PÉTROLE
CONTRE LA DÉMOCRATIE



UN ENTRETIEN AVEC TIMOTHY MITCHELL



Le charbon et le pétrole ont façonné les démocraties modernes : si le premier a favorisé la réduction des inégalités, le second les a creusées. Analyse de l’historien américain


(石炭と石油は現代の民主主義に影響を及ぼしてきた。前者が不平等の縮小を促進したとすれば、後者は不平等を拡大した。アメリカ人歴史学者の分析)


Le Nouvel Observateur 周知のように、2世紀前から化石エネルギーは我々の工業化社会の燃料となっています。著書『カーボン・デモクラシー』であなたは、それらのエネルギーがさらに、我々の政治体制の構造に深い影響を及ぼしてきたことを示しています。この影響はどのように発揮されているのでしょうか?

Timothy Mitchell 石油は民主主義には好ましくありません。産油国は他の国々に比べて民主主義的でない傾向があり、石油の多国籍企業は政治の腐敗を助長する利益で肥太り、石油は受益者である政府に、自国民から切り離す巨大な力をもたらします。しかし、ひとたび生産されると石油がもたらす効果がそこにあります。「上流」の効果です。本の中で私は下流に行き、化石エネルギーの構造を分析しようと試みています。それらはどのようにして大地からでてくるのか? 誰が生産し、輸送し、分配するのか? 地下に埋没した炭素がどのようにして機械的エネルギー、電力、暖房、さらには食料品に変わるのか? なぜなら、これらの過程は弱点や多様な当事者間の紛争が現れる機会でもあるからです。したがって、化石エネルギーが西洋の民主主義に影響を与えた点を把握できるのが、そのレベルにあるのです。


あなたは石油から始めています。それが労働者運動の出現を促進したとして。

19世紀の終わり、工業国はかつてない依存の状況にありました。それまで、川、森、動物などが、暖を取り機械を動かし移動する手段を供給していました… それからは、先進国が必要とする莫大な量のエネルギーはたった一つのエネルギー源、石炭から得られるようになったのです。ところが石炭はある特殊な立地でしか得られず、工場、発電所や都市に向けて、鉄道か航行可能な経路で輸送される必要があります。阻止するには一度の労働者のストライキで十分な工程です。炭鉱労働者、鉄道員、港湾労働者の同盟が一つの国全体を麻痺させることができます。それが後に、ゼネストと呼ばれるものです。1880年から大戦後まで、ゼネストの脅威のために支配階級は大規模な譲歩を強いられてきました。普通選挙、年金、労災や失業保険、社会住宅、教育と医療の無償化などです。数十年の間に、工業国の国民は前例のない目覚ましい生活水準の改善の恩恵に浴してきました。


そのことが、ストライキに対して脆くない石油に支配階級が全力で移行しようとしたことの理由なのですね。結果として、石油は反民主的だと言うことができるのですか?

とりわけ交通に必要な燃料を供給するために、別のエネルギー源を手に入れることは、是念ストのリスクに対する有効な武器でした。確かに、メキシコ、イラン、サウジアラビアやイラクで、石油労働者のストライキはありました。しかし石油の採掘は、その輸送と同じく、石炭に比べてはるかに少ない人数の労働者しか必要としません。石油は大洋を横断して、容易に輸送されるし、一つの港が封鎖されても、他の港に移動すれば十分です。さらに、消費地に対して生産が極端に遠くで行われることにより、異なる職業集団の間で同盟を構成することが困難になっています。石炭から石油に移行することで、工業化社会は「外部化」、さらには「国外移転」という非常に効率的な戦略を実行してきました。1980年代から企業が商品生産を国外移転してきたことと全く同様に、です。したがって石油は産油国だけに影響を与えたわけではありません。労働運動の作用を弱めて、消費国における社会の進歩を破壊し不平等を拡大するという作用ももたらしました。


非常に明快な一節の中であなたは、経済学が通貨問題だけに集中するために天然資源から背を向けることを石油が可能にしたことを示しています。結局、石油は我々に自然を忘れさせた、ということです。

ほぼ一世紀の間、石油は豊富で安価なエネルギーを供給してきました。経済学者らにとって、資源の枯渇にも環境への損害にも気を遣う必要はもはやありませんでした。経済学が天然資源でもエネルギーの流通でもなく、価格とキャッシュフローの研究をめぐって構成されたのは、1930から1940年代の、その時期です。この新しい方向性に引っかかって、一国の経済は天然資源と全く関係なく、無限に巨大化すると見なされる、抽象的な対象になりました。ところが、天然資源の中でも主要なもの、化石エネルギーは、どこでもない場所から来るわけではありません。一つだけ数字を挙げましょう。我々がたったの一年間で消費する化石燃料を生産するために、400年の間に地球全体で植物と動物によって生産された有機物が必要だったのです。


アラブ革命には石油という側面があるのですか?

それらは2008年の金融危機の結果に含まれています。金融危機そのものが、世界の石油生産が新たな時代に突入した時期に起こりました。1バレルの価格が4倍になり、機械、肥料、交通機関に強く依存していた食料品の費用は2倍になりました。アラブ世界の中には、石油から有意な所得を得てきたものの、湾岸諸国やアルジェリアよりも明らかに生産水準が低く、その生産が減少している国々の集団が存在します。チュニジア、エジプト、シリア、イエメンやバーレーンがそれに当たり、まさしく革命運動が発展した国々です。


今度はシェールガスが2000年代の民主主義に一定の影響を及ぼすことになるのでしょうか?

シェールガスの急増は、通常の石油が達した生産の頂点の帰結です。開発するのに費用が掛かり過ぎていた埋蔵炭化水素(頁岩層、アスファルト混合砂、深海底)は魅力あるものになります。アメリカ合衆国では、銀行や個人投資家にとってシュールガスが金融冬季の場に変わりました。不動産担保ローンの崩壊(サブプライム危機)後、金融資本家は新たな狩場を探し求めていました。彼らは広大な土地を買収し、多くの国々では、シェールガスの開発が、大企業の穀物プランテーションを抜いて、大多数の国土を占拠しています。そして、期待された利益が予定通りにならない可能性があるために、一連の破産、合併と買収…を覚悟しなければなりません。それらは銀行にとって同様に手数料を生じることになります。


「カーボン・デモクラシー」の未来を、あなたはどのように考えますか?

今日、資本の流れは産業よりも金融投機に向かっています。システムの脆弱性、したがってそれをひっくり返す可能性は、追放された住人による家屋の占拠(「home repossession」)あるいは学生の借金に反対する運動の付近で探すべきです。それに加えて、価格の上昇は石油産業を脆弱化します。ますます多額になり、ますます危険性の高い投資が必要になり、そこで我々は、地球を救うためには、この炭素を地下に埋もれたままにしておく方が良いことを理解しようとしています。来る十年間に、民主政体は二つの領域の交点に移動するでしょう。金融とエネルギーの。


PROPOS RECUEILLIS PAR ERIC AESCHIMANN


Le Nouvel Obsemateur du 19 au 25 septembre 2013, N° 2550


Professeur à l’université Columbia, TIMOTHY MITCHELL est l’une des grandes figures des études post-coloniales américaines. Il vient de publier « Carbon Democracy. Le pouvoir politique à l’ère du pétrole » (La Découverte), un essai original qui confronte des champs d'analyse souvent isolés : la politique, l’écologie, l’industrie.




『Carbon Democracy 』の原著そのものは、2011年に発売されていたようです。
以下は、今年発売されたペーパバック版です。(英語版)
参考までに。




Carbon Democracy: Political Power in the Age of Oil