(NATO) BONS BAISERS DE RUSSIE ロシアより愛をこめて | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。



3年以上前のことで自分でも殆ど忘れていた2011年9月11日の Norvège : la bonne réponse ノルウェーの優れた答え  で話題にしたノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ首相(当時)が、2014年10月1日にNATO、北大西洋条約機構の事務総長に就任したことに関する話題を、全くの気まぐれですが、取り上げます。


週刊誌 Le Nouvel Observateur の2014年10月2-8日(通巻2604) に掲載された BONS BAISERS DE RUSSIE (ロシアより愛をこめて)という記事です。



obs20141002-1




MONDE

OTAN

BONS BAISERS DE RUSSIE



Le nouveau secrétaire général de lAlliance atlantique, Jens Stoltenberg, a-t-il été un agent du KGB ? Les Russes le suggèrent. Leur but ? Discréditer leur principal adversaire


(大西洋同盟の新事務総長、イェンス・ストルテンベルグは、KGBのエージェントだったのか? ロシア側はそう示唆する。その目的は? 自分たちの主要な敵の信用を失わせること。)

PAR JEAN-BAPTISTE NAUDET


 クレムリンは大喜びだ。ウクライナ紛争以来熾烈を極める新たな東西の戦争で、モスクワは一つの見事な点に注目したところだ。それを信用すれば、10月1日に就任したNATOの新事務総長、55歳のノルウェー人イェンス・ストルテンベルグは、偉大な「「ロシアの味方」だというのだ。もっと言えば、彼はKGBのエージェントだった! ソビエト次いでロシアの拡張主義を抑え込む役割を担った、北大西洋の強大な軍事同盟が弱体化し、不安定になり、笑いものになるようなものだ。確かに、ノルウェーでは「情報」は否定され、「情報操作」とさえ言われている。しかし都合の悪いことが行われ、疑いが広められる。労働党で左翼の、ノルウェーで二期首相を務めたイェンス・ストルテンベルグの長文の紹介記事で9月中旬に事件を「暴露」したのは、非常にまじめなロシアのビジネス系日刊紙、『ヴェドモスティ』だった。「1990年代、ストルテンベルグはステクロフ(ガラス職人)のコードネームで、KGBのエージェントと定期的に接触しながら、ソビエトの情報機関のために働いていた」と、『ヴェドモスティ』は記すが、情報源は全く示していない。オスロでは、ロシア専門のスター記者、アスネ・サイエルシュタッドが憤慨する。「ここでは、2003年から、マスコミから出てきた古い話だ。KGBはストルテンベルグに“ステクロフ”と名付けて標的に選んだ。1990年代、当時国会議員だったストルテンベルグは、確かに、在オスロ・ソビエト大使館の二番目か三番目の書記官と正統に会見していた。しかし、ノルウェー秘密警察が彼に、その外交官がKGBであることを警告してからは、あらゆる接触を絶った。ストルテンベルグがモスクワのスパイだったことは決してない。」 ノルウェー情報機関によって確認された解釈である。

 多くの進歩派の欧州の同様に、ストルテンベルグはソビエト側と良好な関係を維持していた。策略はロシア情報局の極めて古典的な手法だった。左派政治家のソビエト連邦の「外交官」とのありふれた接触を、彼らがKGBのエージェントとして通用させるために利用することだった。この策略は1990年代に社会党のシャルル・エルニュに対して利用された。確かに、これら「革命家」の進化は面白い。例えば、若い頃、ワシントンが主導する軍事同盟の新事務総長、イェンス・ストルテンベルグは、急進左翼と一緒に、ベトナムにおけるアメリカの戦争に反対し、ノルウェーのNATOへの加盟に反対してデモに参加していた… しかし、こうした細部が際どいからといって、彼らがKGBの元エージェントから転向した左翼活動家ということにはならない。

 抱擁しながら窒息させるかのように、ストルテンベルグがロシアの「大切な友人」のままでいたことにモスクワが固執するのはそのためだ。そして誰もが彼の宣言に従う。NATO駐在のロシア大使、アレクサンドル・グルフコは言う、「ロシアは首相だった時のイェンス・ストルテンベルグとともに、生産的に働いてきた。我々の彼との共同作業の経験は以上にプラスだった。彼の内閣の下で、両国関係の強化のために多くのことが行われた。」 ストルテンベルグとの素晴らしい関係を強調し、漁業分野、とりわけバレンツ海でのタラの保護に関して結ばれた基本的な合意を繰り返すために、ロシア首相、ドミトリ・メドベージェフ、次いでウラジミール・プーチン大統領が矢面に立った… ロシアと国境を接する国の出身としては初めてのNATO事務総長は、とりわけ燃え盛るウクライナ問題に関して、モスクワに対してより柔軟になるだろうか? この問題に対する彼の発言はむしろはっきりしている。モスクワに対する制裁に賛成する発言をした。ウクライナのNATO加盟の可能性にすら言及している。クレムリンにとっては脅しともとれる仮定であり、一部の観測筋によれば、火薬に火を点けることも有り得た。それでも、妥協の名手でありロシアと交渉することに慣れているストルテンベルグは、ウクライナ危機の出口を見出すための策を得ることができよう。「安全保障に関して、イェンス・ストルテンベルグにタカ派の要素は見られない」と、ノルウェーの新聞「ネッタヴィセン」の記者、グンナル・スタヴルムは断言する。「国際紛争の増大の時代の後に、NATOの主要国は妥協の準備ができた事務総長を望んでいることを、イェンス・ストルテンベルグの選出が示している。」 クレムリンは、かくも良き「友」が差しのべた手を、しっかり掴むだろうか?


LE NOUVEL OBSERVATEUR DU 2 AU 8 OCTOBRE 2014, N° 2604