これは少し感覚的なことですが、タイでサッカーをしていて、最も感じるのは、1つ1つのプレーが途切れてしまうことです。例えるなら、少し呼吸をおきながら何度も集中を高める野球やゴルフのように感じるんです。(例えがイマイチなのは承知してます、はい。)

僕は鹿島でプレーしていたときから、90分間ずっと集中を高めた状態でプレーしています。ピッチに入るときには覚悟を決めて、試合中は常に張りつめた状態で注意を払っています。

アクチュアルプレーイングタイム(実際にプレーした時間)は50分から60分と言われますが、この時間は関係ありません。フリーキックやスローインになったときも、マークの確認や細かい駆け引きは常に行われています。例えば、僕はセットプレーに向かう間、マーカーの表情や仕草からマークを剥がす方法をいつも探っていました。レベルの拮抗した試合ではディテールで勝負が決まります。小さなことは集中していなければ、見つけることはできません。

攻めているときは守るための陣形作りを行い、守っているときはボールを取ったときの攻めをイメージしています。
ボールを受ける前から味方や相手のポジションを確認し、ボールが来たときには早い判断でチームのリズムを作らなければいけません。

だから、僕は得点シーンや失点シーンだけでその試合を語られるのが好きではありませんでした。僕たちはあくまで90分の勝負をしています。

タイでは、ボールが来てから集中のスイッチを入れて選択肢を探すプレーが多く、セットプレーは早いリスタートなど考えてもいないようにいつもゆっくり行われます。攻めと守りも分離してしまって、連続していません。足を痛めて倒れてる回数もかなり多いので、常に一息つく展開になります。

一年中暑いタイの気候も影響しているかもしれません。しかし、現代サッカーでは攻撃と守備の切り替えの重要性が語られるようになって久しく、今では攻撃と守備の境はない、とまで言われることもあります。

僕はこうしたリズムの違いを感じるたびに、指導者の重要性、特に育成年代の指導の重要性を感じています。Jリーグができて20年と少しの時間。僕はジーコやドゥンガたち先駆者の存在とともに、日本全体で取り組んできた育成組織の形成や指導者養成をはじめとする、長期ビジョンの果たした役割の大きさを感じています。


ちなみに皆さん心配していただいている暑さですが、僕は日本の夏の試合ほど苦しさを感じません。今はタイもかなりの湿度がありますが、スタジアムがスタンドで覆われてないので風が通るからだと思います。それにずっと気温が高いので体が慣れているということもあると思います。