少し前に興味深い質問がありましたので、それにお答えしながら話してみたいと思います。「岩政さんがミスしたあと周りに大きなジェスチャーで怒っていたのは、メンタルコントロールの一つですか?」というような質問でした。

そのシーンがどれか分かりませんが、少なくとも僕はメンタルコントロールのために周りに怒るというスタンスは取っていませんでした。以前、大輔(松井大輔=ジュビロ)が確か本で、「海外の選手は人のせいにしてメンタルコントロールしている。」というようなことを書いていたと思いますが、日本人の感覚には僕はこの考えは合わないと思っていました。

僕が一番意識していたのは、監督でもフロントでもサポーターでもなく、チームメイトでした。誰よりもチームメイトに信頼される選手になろうと考えていました。人のせいにする選手が仲間から信頼されるとは思えません。

確かに、そんな僕も人のせいにしてしまったこともありましたが、大きなジェスチャーで怒っている、ということはきっと普段から要求していることをしてもらえていなかったのではないか、と思います。

ピッチの中でプレーしている選手は、責任を分け合ってプレーしています。

例えば、誰かのパスミスから失点して負けた、という試合があったとして、まず僕たちはあくまで90分で負けたのであってパスミスで負けた、とは全く捉えていません。それに、Jリーグのレベルでは、パスミスというのはほとんどが、受け手や周りの動きに問題があるものです。

失点をしたり、相手に崩されたときは、ほとんどの場合、最後の局面一つではなく、守備が始まった段階からいくつかチームとして問題があります。最後に寄せなかった人、最後にマークにつけなかった人にだけ問題があるわけではありません。

今のJリーグはレベルも上がって、ミスの許されないジリジリした雰囲気の中、みんなで集中を高め合って、それぞれの役割を果たし合っています。たった数メートル動かないことで、パスミスが起こったり、守備のほころびが起こったりします。

誰々がパスミスをした、誰々がやられた、では、真実の断片にしか過ぎません!(見てますよーMOZU笑)だからサッカーは複雑で面白いんです。

僕はいろんな試合の失点シーンを見るときは、直接関わった選手以外の選手を見ています。必ず、そこに失点の原因があり、サッカーの本質があると思っています。

僕が試合に負けた後も必ず取材に応じていたのもここに理由がありました。できるだけ感情論ではなく、中で見ている景色を語るようにしていました。時に快く思わない方もいらっしゃったかもしれませんが、記者やサポーターの皆さんに少しでもピッチ内の視点でサッカーを知ってもらいたい、と思っていました。